第503話 大魔王ボランデスカール
とある街。
その街にはまだ生きている人間たちがいた。
しかし、大魔王率いるスカルソルジャーの軍団に制圧された。
そして、勇猛果敢な男たちは捕らえられ、女や子供も何人も並ばされた。
皆正座している。
「永遠の命に興味はないか?」
冠を被ったガイコツが言う。その背後には大量のスカルソルジャーが並び、とても人間たちは逃げられそうにない。
「え、永遠の命?」
質問された男が興味を引いたらしい。
「そうだ! 我が手によって殺すのは簡単だ。だが、我が配下となって戦うならその命を有効に活用しよう」
ガイコツが悪魔の取引を持ち掛ける。
「妻や子供は?」
「そいつらも望めば永遠に生き長えられる。どうだ? 我が下で働く気はないか?」
「は、はい、ぜひ……」
「フハハハハハハハハハハハハ、歓迎するぞ我が配下よ」
ガイコツが正座していた男の首を掴む。
「がはっ!」
「ただ一つ言い忘れた。我が配下になるということはスカルソルジャーになるということだ」
「――――ぐあああああああああああ!!」
骨の手にはいくつかの指輪がはめられており、その手から男の腐食が始まって皮と肉が滅びて、骨となっていく。
「うわあああああああああああ!!」「きゃああああああああああああ!!」
その悍ましい光景を見ていた男や女が叫んだ。
そして永遠の命を望んだ男はスカルソルジャーの一員として動き出す。
「さて、貴様はどうだ? 永遠の命に興味はあるか?」
「だ、誰がバケモノの手下になるものか!?」
強情にも逆らう男がいた。
「フハハハハハハハハハハハハハハハ、では新入りくん。最初の仕事だ。この男を殺せ!」
ガイコツの王は、たった今スカルソルジャーになった者に命令する。
新人のスカルソルジャーが正座した男に手を伸ばす。
「やめろ! エドワード! 俺たち酒を飲み交わした仲じゃないか!? 正気に戻ってくれ!?」
「ああ~~~~美しき友情か? そんなものが肉も心も失ったものに届くものか! やれ!」
ガイコツの王が命令すると、新人のスカルソルジャーが屈しない男の腹部を突いた。
そして、ガイコツの王と同じように男を腐敗化させていく。
「ぐああああああああああああああああああああ!!」
男は叫んだ。生きながらにして強制的に骨化する。そして脊髄を掴んだスカルソルジャーは無駄な骨を折って行き、一本の剣を作り出す。
「おお、初仕事にしては上々だ」
ガイコツの王が言う。
「さて次だ。永遠の命に興味はないか?」
「主よ。どうか我をお守り下さい。主よどうか我をお救いください」
十字架を手に祈り続ける男がいた。
「フン!」
新人のスカルソルジャーから剣を取り上げたガイコツの王が、神に祈る男を骨の剣で突き刺した。
「ああああああああ!!」
足を刺された男はあまりの痛さに神に祈ることが出来なくなった。
「何を見ている? 神などとくだらない偶像に縋らず我に縋れ! そして命乞いをしろ! 我を誰だと思っている! 骨の秘宝玉所有者、大魔王ボランデスカールであるぞ!」
「あああああああ……はぁ……はぁ……」
「どうする、永遠の命に興味はないか?」
「永遠の命など、神の造りしこの身にあまる冒涜だ」
「おお~~、それでこそ人間だ!」
ボランデスカールは男の顔を骨の手で掴み骨化させていく。
「「「カタカタカタカタ」」」
後ろにいたスカルソルジャーたちがカタカタと音を鳴らし笑っていた。
「さて次だ、永遠の命は――――」
その時、飛行してきたスカルワイバーンがボランデスカールの上空にやって来た。
「おお~~これはこれは我が眷属使魔スカルワイバーンか! 今丁度いいところだ邪魔をするな」
骨で出来たスカルワイバーンはその形を骨を組み替えることで文字の形にしていった。
その文字はこう書かれていた。
「何! 最後の砦ホーウッドに動きがあっただと!?」
ボランデスカールがしばし考えこむ。
「ひぃいいいいい」「うぅぅぅぅぅぅ……」
恐れ成す人間は放っておく。
「スカルワイバーン! 同じく眷属使魔のスカルスパイダーとスカルシャーク、スカルソルジャーたちを連れて、ホーウッドに向かえ! 我は一旦魔城に戻り報告を待つ! わかったら文字化を解き、ワイバーンの姿で今すぐホーウッドの状況を調べて来い! できる事なら落として構わん!」
ボランデスカールが命令する。
スカルワイバーンは命令通りの行動に出て行く。
「忌々しい大英雄め……今度こそ最後の砦を落とし、我の魔界を完成させてやる」
ボランデスカールは次の男に永遠の命がいるかどうかも訊かず、心臓に骨の剣を突き刺した。




