第501話 集まる秘宝玉所有者たち
ホーウッド・教会前。
ロードとブケンとミハニーツは教会に呼び出されていた。
シスター・クレアが秘宝玉所有者同士の会議を行いたいというものだった。
三人は丁度、時間通りに来たところだった。
服装はそれぞれ戦いの装束になっていた。ロードが動きやすい黄色い服装、ブケンが茶色い袖のない武道着、ミハニーツがスカート姿の黒と黄色を模した格好をしていた。
「ロード、応急手当セットは手に入った?」
ミハニーツが甘く言う。
「ああ、凄く簡素なものだが……」
小さな布袋に入った応急セットを見せつける。
「おい、時間じゃないのか? 早く行くぞ」
ブケンが教会の扉を開く。
「ああ、行こう」
ロードが教会の中へ入りこむ。
▼ ▼ ▼
教会・内部。
ロードたちは教会に参拝しに来たわけでもミサをしに来たわけでもない。
教会内にはロードたちの他に、ハオストラ武闘大会の選手の一人だったライズ、兜をかぶった男性と、顔の細いメガネ男と、丸々太った大男と、さらりとした短い髪に悲しげな眼をする青年と、純真無垢な戦いも知らないような女性がいた。
「おお、オメーらも秘宝玉所有者か?」
教会の石像の上に座る礼儀知らずの褐色の肌に赤髪の男が話しかけて来た。
「誰だ?」
「オレはザイス、よろしくな」
「ザイスか、オレは――――」
ロードが名乗ろうとした時――
「はいはい、自己紹介を勝手にしない。まったくザイスはいうこと聞かないんだから」
シルベがパンパンと手を叩き会話を止めてた。
「ハハハ、わりーわりー好奇心が旺盛なんだよ」
ザイスが石像から飛び降りて、適当な長椅子に非常識な座り方をする。
「さぁ、ロードたちも椅子に腰掛けて……」
シルベに言われてロードたちは座ることにした。ロードの隣にはミハニーツが座る。
「まだ……集まっていませんね」
壇上にいたシスタークレアが呟く。
「おいおい、召喚された秘宝玉所有者は全部で10人だろ? アンタたちを抜けば数はあってるぞ?」
ザイスが発言する。
「始めに言ったはずです。この地を今も結界で守っているランラ・ロベーロ様がまだ……」
「おっ、お爺さんおいでなさったぞ」
シルベが気配を感じ取って言う。
ギィーーーーッと教会の扉が開き、猫背の白髪で長髪のご老人が入ってくる。
「フォッフォッフォ、どうやら最後に到着してもうたわい」
「爺さん。私が転移させれば足腰に苦労することもないのに」
シルベが言う。
「自らの足で地の感触を確かめ、ひしひしと歩くことは健康に繋がるぞよ」
ご老人は長椅子に近づくと腰を下ろす。
「あの人が結界の秘宝玉、かの有名な十大英雄の一人ランラ・ロベーロ」
ミハニーツがロードに聞こえるようささやく。
「さて皆さん集まりましたね。まずは自己紹介から参りましょう。私がお手本になりますのでそれぞれ言いたいことを考えておいてください」
一呼吸置くシスター・クレア。
「私はこのホーウッド出身のシスター・クレア。事実の秘宝玉の所有者でその能力は対象者の10年前までの記憶を呼び起こすことです」
シスター・クレアは軽く自己紹介をする。
「僕はライズ。出身世界はソーラーシステムにより電気を使うソーラー界。日光の秘宝玉を持っている」
ライズが自己紹介のついでに剣をチラつかせる。
(ソーラーしすてむってなんだろう?)
「オレはザイス。生まれの世界に名前はねーが鎌の秘宝玉を持っている。その能力は鎌で斬りつけたものの魂を両断し殺して身体から魂を抜く能力だ」
ザイスが自分の鎌を具現化して見せる。禍々しい形をしていた。
(恐ろしいな……斬りつけただけで相手が死ぬってことか)
「オデの名前はマーマル。出身世界は食べ物の豊富なフードワークス界。そして秘宝玉が鉄球の秘宝玉、五つの鉄球を操り敵に打撃を与える能力だ」
マーマルは顔程もある鉄球を五つ具現化させた。
(メタルバウンドと違って普通の鉄みたいだ)
「私はギネ、出身世界は何の変哲もない村だ。発信機の秘宝玉を持っている。この目で直視した者に発信機の刻印を付けて追跡する能力だ。戦いの場合は発信機を爆発させることが出来る」
ギネは目を赤くする。
(爆発か……強そうだ)
「それがしはアマジャー、出身世界はセンゴク界、秘宝玉は戦士の秘宝玉、その能力はそれがしと同じくらいの力を持つ1000人規模の戦士を召喚する能力だ」
アマジャーは一体だけ戦士を召喚した。顔がない兵士を具現化する。
(1000人か、これで戦力が増えるな)
「私はメイビス。出身世界に関しては口を閉じておくわ。水晶の秘宝玉所有者、その力は少し先の未来を予知したり相手の視界が見えたりする水晶を具現化する。攻撃方法は水晶を破片にしてつなげたり、飛ばして砲弾の様に投げ飛ばすことよ」
丸くきれいな青い水晶を具現化する。
(キレイな人だ)
「…………僕の名前はカナミ、出身世界はシンデレラ界、灰の秘宝玉を持っている。その能力は敵に灰を被せて焼き尽くすというものだよ」
(なんか病気の人のようなか細い声だけど大丈夫だろうか)
「オレの名前はブケン。出身世界では武闘大会が開かれる多くの異世界人が集まるラントウ界。秘宝玉は単純な技、衝撃の秘宝玉だ」
(ブケンは言わずと知れず強者だ)
「私の名前はミハニーツ。出身世界は分け合って知らない。秘宝玉は蜜の秘宝玉、五つの色の蜜を使い分ける。例えば黄色い蜜ならトロトロに相手にまとわりつかせたり、硬化させて針を作り出すことが出来る」
(オレの時には殆ど能力を使わなかったな……さて、オレの番か)
「オレはロード・ストンヒュー。出身界に名前はないが動物たちと共存する異世界だった。道の秘宝玉を使う。この力は自身の生命力を武器の具現化や傷の治癒に使えたりする」
ロードの自己紹介が終わる。
「あ~~~~私はもう説明したからいいよね~~」
寝そべる自由人シルベが言う。
「フォッフォッフォではわしの番じゃな? 名はランラ・ロベーロ。秘宝玉は結界の秘宝玉、その能力の一部は皆も感づいているようにこのホーウッドの空間を作っておる。つまり、水も日の光も作り出し内部で自給自足の生活を可能にするものじゃ」
「皆さま自己紹介ありがとうございます。そこで皆さまにお願いがあります。早速、結界の外へ赴いて秘宝玉の力を使って魔物を討ち果たして欲しいのです」
シスター・クレアから依頼がやって来た。




