第493話 出発、ロードの育ち故郷
イタンシックの街。
ハオストラ武闘大会から数日が経つ。
ロード、スワン、ハズレ、グラス、ドノミ、ブケン、ミハニーツは集まっていた。
街中ではない。荷船が通れるギリギリの幅の路地裏だ。
そこでミハニーツがある物を見せる。
「これが、普段行きたい場所に行けるワープリング、そしてこっちがランダムに異世界転移できるワープリング」
左手と右手に持ったそれぞれの指輪を見せてくる。
「どこへ行くんだ? まだオレたち何も聞いてないが……」
ハズレが訊いてみる。
「これから私たちが行くのはガークスボッテン界っていう場所」
ミハニーツが答える。
「なんだそりゃ」
グラスがわけわからず言う。
「ガークスボッテン界といいましたか!?」
ドノミが驚く。
「そう、そこが私たちの育ち故郷」
ミハニーツが簡単に言う。
「知っているのか? その異世界とやらを」
ブケンが言う。
「ええ、あらゆる異世界がぶつかって出来る世界の狭間にある災害みたいな世界です。自然発生した世界の為、もって100年くらいしか滞在できないんです」
「100年経つとどうなるの?」
スワンが訊く。
「自然消滅して、その世界にあったあらゆるものが無に帰します」
ドノミが言う。
「それだけじゃない、あらゆる異世界の環境が束ねられていて区分けされてる不思議な場所」
「ごめん、意味が分からない」
スワンが言う。
「とにかく行けば分かる。覚悟はいい?」
ミハニーツが皆に言う。
「覚悟も何も危険すぎます! あそこの環境は普通の異世界と違って険しいと聞きます。いきなり火山に落ちたり、毒の池に落ちたり、燃える川に落ちたり……」
「ある程度の位置は調整できる。大丈夫辿り着くのは森の方だから……」
「ですけど……」
ドノミは納得いかない感じだった。
「行こう、オレは準備出来てるから、怖いなら皆は待っていてくれ」
ロードが決断する。
「またロードは一人で抱え込もうとする~~」
スワンがむくれる。
「それがロードらしい」
ハズレが言う。
「ちっ!」
グラスが舌打ちする。
「どのみちオレたちは仲間、火の中でも、水の中でも一蓮托生だ」
ブケンがサングラスをかけ直しながら言う。
「わかりました。しかし危険と感じたら真っ先に帰って来ましょう」
ドノミが妥協した。
「それでいい」
ミハニーツも納得した。
「それじゃあ行こう」
ロードが言うと、
「ワープリングこの7人と精霊と荷船を私の故郷ガークスボッテン界へ」
ミハニーツが宣言する。そして――――
◆ ◆ ◆ ◆
ガークスボッテン。
ロードたちはミハニーツを先頭に歩いて行った。
辺りは木々で覆われていた。彼らが歩いていたのは森。
正面の道らしき道を進み、一行は廃墟となった城を目指す。
「ここが! オレが育った育ち故郷なのか!?」
ロードはミハニーツに訊いてみた。
「そう……ロードと私たちがガリョウ先生とヴィントセント先生が親代わりになって育ててくれた」
ミハニーツは説明する。
「ミハニーツさん、あなたはいつからこの異世界で育ったんだ?」
ハズレが訊く。
「生まれてからすぐここに連れてこられた。他の八人も一緒」
「ここは出来て何年ぐらいですか?」
ドノミが慎重に訊く。
「さぁ……それは聞いたことが無いような、忘れてるだけかも」
「うまそうな木々だな。このはっぱ後で食うか……」
グラスが言う。
「食べない方がいい。毒がある木だってある」
「そもそも葉っぱは食べものじゃないだろ」
ブケンが言う。
「ミハニーツさん、ここで何があったの大魔王の襲撃があったって聞いたけど……」
スワンが訊く。
「もうすぐわかる」
ミハニーツが言う。
そして森を抜けると、黄金の湖が見えて来た。
そして湖の中央には廃墟のような大きな城があった。
「ロード、アレが勇卵の城、私たちが授業を受け、特訓した。私たちの家」
ミハニーツが指を差す。
「アレがオレが育った城……」
その時、ロードの首に掛かていた裏切りの瞳が輝きだした。それは魔物が近くにいる合図。
「「「――――!!!?」」」
全員が廃墟の城の上空を見た。誰かが浮いていた。
ロードはその魔物の姿を見た。
少女の姿をした魔物。そしてその少女がロードにとって重要なカギを握っていることはまだ誰も知らない




