第491話 夜のパーティー
ハオストラスタジアム・闘技場。
それは子供たちの眠る深夜のことだった。
ロードは武闘大会の優勝者……その優勝者は何でも望みが叶うというもの。
そしてロードの願いは叶った。それは本戦敗退、予選敗退のハオストラ武闘大会参加者たちの宴。
それから、スポンサーたちが集まりワイングラスやジュースグラスを持っていた。
「それでは、優勝したロード選手の主催するハオストラパーティーの音頭をロードさんに取っていただきましょう」
実況者のモスが言う。
「いやーーロード選手緊張してますねーー」
解説者のキートが言う。
「何を言えばいい」
ロードがアカに聞いた。
「まぁ大概は――――」
アカが答えようとした時、
「カンパーイ」
本戦初戦でミハニーツに試合放棄した見出し帽の男トニーが言う。
「「「カンパーイ」」」
皆がその声に釣られる。
「か、カンパーイ(セリフを取られてしまった)」
ロードも渋々ジュースを片手に乾杯した。
パーティーには豪華な食事と豪勢な飾り付け、一流の音楽家たちによる曲が流れていた。
ロードはパーティー会場をめぐっていると、ブケンを見つけた。色々な料理をガツガツと食べていた。
そして、自分も料理に手を伸ばす。その時、
「ご機嫌麗しゅうユキメです」
「あっはい、どうも」
「試合拝見しました。優勝おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「それと、このようなパーティーに参加させてくれて感謝します」
雪女のユキメはその場をあとにした。
「青年、いい試合を見せてくれてありがとう」
ワイングラスを片手に武士ムサロウが声を掛けた。
「おい、来年もトーナメントに出ろ! 次はオレがお前を倒す」
鬼人デガラが宣言した。
「フハハハハハ、わたしと当たらなくて良かったな! もし当たっていたら貴様は私に負けていただろう」
悪魔デモンが言う。
「あ、あのーロードさんサインください」
照れながら色紙を渡してきた武闘家のソンはロードにサインを書いて貰って喜んでいた。
「優勝おめでとう」
優勝候補だったマグマンが挨拶する。
「自分はイロヨです! この度はこのような場にお招きいただきありがとうございます」
鎧のマスクを被る鎧男が言って来た。
「ノモケバだ。優勝おめでとう」
化物マスクの男が言う。
いろいろな選手の声を掛けられるロード。食事を楽しみながら会話をしていた。
「別に凄かねーよ」
グラスの声がした。
「いや凄い……地面の下の音を聞き五点、日光剣の目つぶしでも一点取ったアンタは凄い」
地底人のモンカミが言う。
「あの地面をひっくり返す攻撃は驚いたぞ」
ドワーフのグロックが言う。
「そうかよ……」
ご馳走を食べながら語る珍しいグラス。
ロードが飲み物を取りに行くと、聞き覚えのある声がした。
「いや~~正直、ギリギリだった」
ハズレだ。
「あの服を脱ぐ作戦は完全にしてやられた」
ダークエルフのメイダーが言う。
「炎のトラップも読めませんでした。あなた頭が切れるのですね」
アビリティーアクセサリーを使うアニエスが言う。
「お前、凄かった」
宇宙人のグレイが言う。
「キミたちもオレを驚かせた。優勝は出来なかったけど楽しかったよ」
ハズレが言う。
「えっ! そうなんですか?」
今度はドノミを見かけるロード。
「なるほどそこでこの攻撃ですね」
色んな人と話して戦闘の仕方を学んでいる。
「おっと、優勝者くんじゃないか、次はキミとも戦ってみたいのう」
気功の達人フンカーが言う。
「キミとブケンさんの戦いは非情に燃えた。心から尊敬しよう」
翼人のネバーロングに話しかけられた。
「あんた、なかなかのガッツだったぜ」
ガツガツと食事をする獣人のヤドリックが言う。
「オレを倒したブケンの相手優勝おめでとう」
昆虫人のビートルが言う。
「この様な場に招待してくれてありがとう君に神の御加護がありますように」
聖職者のセイジが言う。
ロードがパーティに参加した人たちに次々と話しかけられる。
スワンが水ばかり飲んでいた。
「何をしているんだ?」
「ロード! 聞いてここの水、全部味が違うの! 辛いのとか、うまいのとか、苦いのとか、酸っぱいのとかとにかくいっぱい種類がある!」
「飲むのはいいが飲みすぎると水中毒になるぞ……」
「私は精霊使い。いくら飲んでもへっちゃらでーす」
武闘大会に参加していないスワンはロードの頼みでパーティーに招待されていた。
ロードも水を飲む。
今まで感じたことない混沌とした味がした。
(正直不味い)
「ああ、断るよ」
その時声がした。声の発生源の方を見るとベストフォーのライズが大人たちに取り囲まれていた。
「一番の投資をしてくれる人について行く。スポンサーの諸君こぞって僕を雇いたまえ」
ライズが難しそうな話をしていた。
ロードは人ごみをかき分ける。そして、
「フィルスさん」
半魚人の男に声を掛ける。
「ああ、お前か……優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
「一回戦で負けたけど、決勝戦見ていてよかった」
少し会話をしてその場を立ち去るフィルス。
「やぁ青年、吾輩だアーティモリだ!」
怪人の紳士な格好をした男性が声を掛けて来た。
「ああ、マントの人のアーティモリさん」
「ささやかなプレゼントだ」
そう言ってロードに一本のバラを渡す。
「ありがとうございます」
「では、さらば」
アーティモリが去って行く。
「やぁロードくん」
今度は巨人族のオオヅチに話しかけられた。
「キミとの試合は一瞬だったが晴れ晴れした。圧倒的強さで手加減もしてくれなかった。全力を出してくれてありがとう」
「オオヅチさん、こちらこそ貴重な体験だった」
互いに挨拶してその場を離れた。
「うん? ようやく見つけた」
今度であったのは岩石人のゴンガだった。
「ゴンガさん」
「優勝おめでとう。このような式典にも参加できた異世界から来てよかった」
「まぁ、その楽しんでください」
ロードが言う。
「うむ、ではな」
ゴンガとすれ違う。
ロードが歩いているとある男にぶつかった。
「すみません!」
「いや、いいんだ」
その男はサイボーグのターカウスだった。
「あっ、ターカウスさん」
「…………招待感謝」
「何を飲んでいるんですか」
ロードはワイングラスに入った。茶色い液体が気になった。
「ああ、これか石油だ」
「どんな飲み物ですか? オレでも飲めますか?」
「いかん、これは普通の人が飲めるものではない」
「そうですか」
肩を落とすロード。そこに手を乗せるターカウス。
「優勝おめでとう」
ターカウスはその場から立ち去った。
ロードも音楽を聴きに行こうとすると、ある男性と遭遇した。
「おっとっと、ロード!」
「ヴァーエン!」
特殊シール使いのヴァーエンが食べ物の乗った皿を持って移動していた。
「今回は負けたよ。だが次勝負する時は勝つからな!」
「ああ、機会があればだけど、楽しみにしているよ」
「それじゃあな、招待してくれてありがとよ」
ヴァーエンとすれ違う。
それからロードは音楽の演奏を聞いて過ごしていた。
そのうち眠くなってきたので、闘技場の壁に寄り添う。そして眠ろうとした時、
「ロード! ロード! ロード!」
ロードはうたた寝から目を覚ました。目の前にはブケンがいた。
「ん? ブケンか? どうだパーティーは楽しいか?」
「ああ、だがロード、大事な話がある。聞いてくれるか?」
ブケンは真剣な顔持ちで言う。




