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第49話 真っ黒い剣を引き抜きたい

 

 竜にほとんど動きがなくなったのでよじ登りやすくなった。

 尻尾から背中にまで到達すればさらに登りやすくなる。


(あと少し)

 

 腹部の剣までもう少しで届く位置に来た。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 その時、竜が力強いの咆哮を始め身体を揺らし縄の拘束から抜け出そうとする。

 しかし、縄を引くレオリカン兵団も負けていない全員の力を合わせて踏みとどまっている。

 

(凄いな、こんな竜を皆で止めている)

 

 そうして、真っ黒い剣までたどり着いた。

 間近で見るその剣は確かに竜に突き刺さり、そこから揺らめく黒い靄を広げているように見える。

 

(引き抜いたら終わってくれ)

(それだけの悪い竜であってくれ)

 

 手を伸ばす直前で竜に動きがあった。

 

「!!」

 

 体中の熱を口へ集中させ炎を吐く準備をしている。

 

(これを引き抜けば終わりなんだ)

 

 そう思って手を伸ばそうとするが……。

 

 ふと、大きな炎の球体を思い出す。

 

(――いや、先にこっちだ)

 

 口に咥えた剣に手を掛ける。

 予想通り竜は炎の球体を作り出したので竜殺しの剣を投げ飛ばした。

 

 突き刺すように飛ぶ竜殺しの剣が大きな灼熱の炎の球体を内側から消し払った。

 

(危なかった~~)

 

 安堵の息を吐いて真っ黒い剣に手を伸ばした。

 

 禍々しく揺らめく黒い靄が気になる。

 

(でも、触れなければいけない)

(正体不明でもここで抜く)

 

 指先が柄に触れ、勢いに任せて手のひらで掴む。

 

「よしっ! ――ぐっ!?」

 

 柄を握る手に焼けるような痛みが染み込んでいく。

 

「ああぁっっ!! (手が焼ける!!)」

 

 だからって離すわけにもいかず、必死で手に剣を抜く力を込める。

 

「ぐううううあああ!」

 

「オオオオオオオオオオ!!」

 

 すると竜も悲痛な叫びをあげ暴れだした。

 

(これは痛い!!)

(いや、突き刺さっている、方が、もっと痛いか)

 

「ぐううっ!!」

 

 血が出るほど唇を嚙んで痛みをこらえる。

 

(こんなに痛いか)

(お前は頑張ったよ!)

(ありがとう)

(皆を、オレたちを守ってくれて)

 

 優しい笑顔を向けてやり、引き抜く力を強める。

 

「うっああああああああああああああああ!!」

 

 手から光が放たれたような気がした。

 その光は真っ黒い剣から出る黒い靄を払らったように見えた。

 すると、真っ黒い竜の身体からも黒い靄のような揺らめきが払われた。

 そして、真っ黒い剣を竜の身体から抜くことが出来た。

 

「や、った」

 

「グッッオオオオオォォォオオウゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 剣を引き抜かれた竜が力を失ったかのように地面に落ちていく。

 

「うわっっっ!! いたた……」

 

 一緒に落ちたけど、あまり高くない位置から落ちたので大したことはなかった。

 

(終わったか?)

 

 竜は動かない気を失ってしまったようだ。

 


「ロード!!」

 

「無事チュウ!?」「どうなったチー」「け、剣は!?」

 

 ルロウ、ハチュ、チッカ、ツアが走りながら聞いてきた。

 

「ここにある…………」

 

 右手の真っ黒い剣を見せる。

 

『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

 

 レオリカン兵団の大歓声が響き渡った。

 

「ハァ、ハァ、確かめないと……」

 

「ほれ……」

 

 差し出されたのは竜殺しの剣。

 投げ飛ばした剣をわざわざ拾って届けに来てくれた。

 

「ありがとうルロウ」

 

 竜殺しの剣を持って竜の方に行く。

 すると、竜の以前のような黒ではなく赤い身体になっていた。

 

(これを引き抜いたからかな?)

 

 右手に持った真っ黒い剣を見て思う。

 

「……起きてるかー? 話せるかー?」

 

「ぐうううう…………」

 

 目を開いた。

 

「何故、我を、倒さなかった……?」

 

「倒す必要がないかと思ってさ」

 

「……竜殺しの剣を持っていたのにか?」

 

「これを使って解決するだけじゃダメだと思ったんだ」

 

「?」

 

「意味わからないよな……」

 

(どうやら、言葉は通じるみたいだ)

(この剣のせいで暴れてたのは本当みたいだ)

(これでひとまず終わった)

 

 竜殺しの剣を腰にある鞘に納めておく。

 

「教えてくれ、どうしてこんなことになったのか」

「それとお前がどこから来たのか――」

 

「囲め!!」

 

 ダッダッダッダッ

 

 カリフ王の命令の元、竜もろとも周りをレオリカンの衛兵たちに囲まれた。

 

「――カリフ王! 何故!?」

 

 衛兵たちを取り仕切ったその方に聞いた。

 

「――悪しき竜はまだ倒されていない!! 竜殺しの剣で、とどめを刺すのだ! ロード!」

 

(と、とどめっ!?)

 

「ま、待ってください。まだ竜との話が――」

 

「竜の言葉に耳を傾けるな! 竜殺しの剣で全て取り戻すのだ!」

 

 やらないのなら周りの衛兵たちがとどめを刺す。

 そういう準備を皆がしていた。

 

(まだ、ダメだ。ちゃんと話を聞かないといけない)

 

 ロードは竜殺しの剣に手を掛けない。

 

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