第487話 デスマッチへの入場
ハオストラ闘技場。
時刻は午後13時。
ハオストラ武闘大会はチャンピオン同士の対決となった。
すなわち勇者ロードvs魔王シドウオガである。
観客たちや大会の敗者たち、それからハズレ、グラス、ドノミ、ブケン、スワン、ミハニーツが待ちわびていた。
「さぁ! ついにやってまいりました! 前回優勝者の魔王シドウオガ選手vs奇跡の棄権試合で勝ち残った剣士ロード選手のデスマッチです!」
「シドウオガさんの優勝賞品の願いごととはいえ、後味悪い試合になりそうですね」
観客たちはざわめいた。
「皆さん! ざわめく気持ちも分かりますが! ここは二人のデスマッチを見届けましょう!」
「まぁ、秘宝玉の力を全開に発揮できるこの試合は見ものでしょうけど、悪いけど僕はロードさんの死体を見たくないです」
そして審判すら入ってこない闘技場は、本当に殺し合いをするだけの場となった。
「さて、東門と西門を開いてもらいましょう! 東門から登場するのはシドウオガ選手!」
しーーーーーーん とシドウオガは門の奥から現れなかった。
「――――おや、シドウオガ選手、準備中でしょうかでは先に西門からやって来るロード選手にスポットっを当てましょう!」
「いや~~ミハニーツ選手との戦いで心が折れてもおかしくないくらい叩きのめされていましたから、この試合も棄権するとばかり思っていましたが、よほど叶えたい願いがあるのでしょう」
ロードは闘技場の中心へ向かってスタスタ歩いていく。
「ロード選手位置に着きました! さてシドウオガ選手は現れないのでしょうか――――」
「ヌハハハハハハハハハハ――――」
その時、男性の声が響き渡った。
その声の主はVIP席の窓越しにいた。そして窓ガラスをぶち破って飛び出して来る。
その男は魔王シドウオガだった。聖法の天井に降り立った。
「おっと、魔王シドウオガ選手! 聖法の天井に降りて一体何がしたいんだ! 入場できるのか!?」
実況の後 シドウオガの手に一本の刀が出現した。それを使って聖法のバリアを切り裂いた。
スタンとロードの正面に着地した。シドウオガの盛大な登場の仕方に会場はざわめく。
「あそこから出て来るのか……」
ハズレが言う。
「早速秘宝玉の力を使ったな」
グラスが言う。
「刀……ということは……」
ドノミが呟く。
「刀の秘宝玉ということか」
ブケンが言う。
「ロード負けないよね」
スワンが不安そうに言う。
「あなた、ロードを信じてないの? 大丈夫負けない」
ミハニーツが言う。
「それではデスマッチを始めてもらいましょうと、その前に、聖法のバリアが引き裂かれてしまったので修復まで試合の始まりは少々お待ちを……」
ロードとシドウオガがにらみ合う。
「いい目だ。その目は私を確実に殺しに来ている目だ」
「魔王シドウオガ、本当の姿を見せたらどうだ?」
「そうだな、キミの技は全て見させてもらった。ならば、こちらも全力でお相手するのが礼儀だろう。うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
魔王シドウオガは男性の姿から本性を現すように変貌していく。
「――――!? (似ている――アグローニにしかし――)」
魔王シドウオガは五つの角に胴着と甲冑の姿で、さらに腕が四本に増えていた。その四つの手に刀が握りこまれている。
「拙者の名は魔王シドウオガ、強者を殺す。殺戮の魔王」
(性格が変わった。それと刀が四本、全部麻鬼刀に似ている。だとしたら刺した者の行動を操作するか、力を奪い去るかだ)
「弟のアグロ―ニと戦ったおぬしならわかるだろう。これが麻鬼刀に似ていると、しかしこれは麻鬼刀であって麻鬼刀にあらず」
「どういうことだ? それは刺したものを思いのままに操作し、力を吸収する剣じゃないのか?」
「否、断じて否、強者よ。この刀は我が秘宝具、真麻鬼刀……弟の持って行った刀は試作品にすぎん」
「だったら、その刀の能力も違うのか?」
「いかにもこの刀は斬りつけた瞬間に相手から力や物質を吸収する」
「?」
「試合が始まればすぐにその意味が分かる。さぁ、拙者は構える。おぬしも構えよ」
魔王シドウオガは四本の腕を、手に持った刀を構える。
ロードも両手に赤い剣と青い剣を鞘から引き抜いて構える。
「さて、聖法のバリアの修復も終わったようです! そして二人の選手も武器を構えて待っていますね」
「お互い凄い殺気を放っていますね」
「ヌハハハハハハハ!! 拙者が勝ったらここに居るものを皆殺しにする」
「お前も弟と同じだな……はぁ、勝負する前に一つ聞いておく」
「なんだ?」
「最魔の元凶を知ってるか?」
「欲しい物は勝って取れ――人間の強者よ!」
「分かった、絶対勝つ!」
ロードとシドウオガは今にも攻撃しそうになっていた。
「それではハオストラ武闘大会特別デスマッチ、試合開始です!」
実況の発言と共にデスマッチは始まった。




