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第484話 ロードの家族

 ロードは仮面を外した凛々しい女性の素顔を見る。


 そしてミハニーツは久しぶりと言って来た。


 そしてロードの現状は足と腰と片手に蜜で固められ身動きが取れないでいた。


「ロード、ごめんなさい。あなたの力を試しに受けてみたかった。本当なら手加減するべきではないんだろうけど」


(て、手加減アレで?)


 ロードの顔が蒼白になる。


「本当に久しぶり、何年ぶりだろう……私はあなたが死んだと思っていた」


 ミハニーツが甘く優しい声で囁く。


「オレが死んだと思った? 一体何のことを言っているんだキミは何者だ?」


 ロードが問う。


「思い出せないの? 私はあなたの――――」


「「家族」」


 ミハニーツはロードに、スワンは皆に言う。


「家族!?」


 ハズレがびっくりする。


「何だ兄妹なのか?」


 グラスが言う。


「あの人がロードさんの家族……」


 ドノミが呟く。


「どこで知った情報だ?」


 ブケンが訊く。


「武闘大会の試合中に聞いたの……ロードは私の家族だって、それから――」


 スワンが言う。


「オレの家族?」


 ロードが呆然と凛々しい顔、でも優しさを含めた表情のミハニーツを見る。


「そう、あなたには二人の先生と九人の友人たちがいた。私たちはその関係を家族と呼んでいた。覚えてない?」


「何かの作戦か? 試合中だぞ! もうキミの勝ちだ早く五点入れてくれ……」


「違う、違うよロード、罠じゃない、本当のこと忘れちゃったの? それともあの大魔王に何かされた?」


「何だ? 大魔王って?」


「魔王を超える存在、魔王の中でも強大な力を持った大魔王だよ……一緒に授業を受けてたでしょ? 皆のことも覚えてないの?」


「皆? 何を言ってるんだ?」


「ファンタ、クラッカ、ヨルヤ、サシャープ、レール、ダイグラン、カイザル、ムドウ、そして私ミハニーツ」


「知らない名前だ……誰なんだその人たちは?」


「嘘でしょ、覚えてないの? 皆で勇者になって魔王を倒すって誓い合ったじゃない……」


「いつそんな誓いをオレはいつしたんだ?」


「もう十年前になる。ロード本物かどうか確かめたい、あなたの年齢は?」


「19才」


「故郷は?」


「動物たちと人間が共存する世界」


「違う……ガークスボッテン界でしょ……もっと顔をよく見せて……」


 ミハニーツはじっとロードのことを見続ける。


「その凛々しいエメラルド色の瞳間違いないあなたは正真正銘のロード」


 ミハニーツは青い剣を置いてロードを抱きしめた。そして涙を流している。


(な、泣いてる)


 ロードはどういうことか分からず混乱していた。


「おっと、ミハニーツ選手、何やら剣を置いてロード選手に抱き着いています」


「いや~~青春してるんでしょうか。若いっていいですね」


「ロードが元から勇者になるために育てられてた!?」


 ハズレが言う。


「そうらしい。ミハニーツさんが言うには十人の子供たちが勇者になるために育てられてたって」


 スワンが語る。


「誰に育てられてた?」


 グラスが訊く。


「二人の先生としか聞いてない」


「ちょっと待ってください!? ガークスボッテンで育てられていたって本当ですか!?」


 ドノミが話に入ってくる。


「ミハニーツさんが言ってた間違いない」


「あの世界はあらゆる異世界が混合していて、人がとても住める環境じゃない世界ですよ!」


「でも暮らしていたって、そう言っていた」


「勇者ってのは何なんだ?」


「ロードの絵本に書かれていたスライムの勇者ってことしか分からない」


 スワンが答える。


「勇者として育てられた……聞いたことない異名だといつも思っていたが、ドノミさんは訊いたことがあるか?」


 ハズレが訊く。


「勇者なんて聞いたこともありません。あの絵本は私も拝見しましたが何かの造語じゃないんですか?」


「違うって言ってた」


 スワンが答える。


「ロードの身体を抱いているとわかる。そうか、あなたも魔王を倒して来たんだね」


 泣きながらロードのぬくもりを感じ取るミハニーツ。


「勇者ってなんなんだキミは? どうしてオレが魔王を倒して来たってわかるんだ?」


「分かるよ……私は魔王を倒すために先生の元から家出したんだから、そんな生半可な人生経験はしていない。人を見る目も鍛えて来た。辛いこともあったけど、ロードの仇を取る為に魔王58体、大魔王22体、極大魔王1体、それからそれから1万以上の魔物を倒して来たんだから……」


 ミハニーツが涙をぬぐう。


「オレの敵討ち? 何の話だ?」


「それも覚えていないの? 九年前、ガークスボッテンに現れた極大魔王と大魔王の襲撃を……」


「九年前……オレが十歳の頃か?」


「そう……」


「それじゃあ覚えていないのも無理はない」


「どうして?」


 ミハニーツは訊いてみる。


「それが本当なら、どうしてロードは話してくれなかったんだ?」


 ハズレが言う。


「離す必要がねーんじゃねーーか」


 グラスが適当に言う。


「それにしてもロードさんにそんな過去が……」


 ドノミが呟く。


「覚えていないんじゃないか?」


 ブケンが口を挟む。


「うん私もそう思う。多分ロードは――――」


 スワンが言う。


「「記憶喪失なんだ」」


 スワンが皆に、ロードがミハニーツに告げる。


「――――!!!? 記憶喪失!? いつから!?」


「キミの言う九年前からだ。オレはある異世界で倒れていた。ストンヒュー宮殿というところにどこからともなく現れて、頭から血を流した状態で見つかったと……後で聞かされた」


「じゃあ、ガリョウ先生は、ガリョウ先生はどうなったの!? 隻腕の身体中に傷だらけの片目の大男の人は?」


「その人は知らない」


「うそ……」


 ミハニーツはだらりと腕を落とした。


「キミはオレのことを知っているのか? 何があったんだ極大魔王ってなんなんだ!?」


 ミハニーツは立ち上がる。


「だからか、だからロードはこんなに弱くなったのね……」


「確かにオレはキミより弱いかもしれないけど……」


「違う……昔のロードはもっと強かった。あんな剣に頼らずとも、わたしより強かった」


「オレがキミより?」


 その時、ロードを固めていた蜜の拘束が解けた。


 青い剣が主であるロードの元に戻ってくる。


 ミハニーツがロードを解放して立ち上がる。そして間合いを取って剣を構える。


「構えてロード。今のあなたじゃ、魔王シドウオガには勝てない」


 ミハニーツが言う。


 ロードは立ち上がる。


「どうして、オレが記憶をなくしたか知らないか!?」


 ロードは立ち上がる。


「きっと全部あの大魔王のせい、そんなことより構えて――――」


 ロードは青い剣を構える。


「あんな仲間たちと旅をしているから弱くなったの? それとも記憶をなくしたから弱くなったの? それをこの戦いで確かめる」


 ミハニーツもロードも構える。


「ロードは勝てない」


 ハズレが言う。


「大魔王を、あのフリフライ以上の魔物を一人で倒すか」


 グラスが言う。


「ロードさんはどうして記憶喪失に……」


 ドノミが呟く。


「試合が再開されるみたいだぞ」


 ブケンが言う。


 この時、

(お願い、ロード勝って)

 スワンは純粋な気持ちで祈った。


(オレはこのミハニーツのことを知らない、そしてこの試合オレが勝てる見込みはない)

(けど、それでも、ここで負けたら魔王の力に何て届かない)

(オレは勝つ。そして最強になって最魔の元凶を目指す)


 ロードは心に決め、ミハニーツに向かって走り出す。

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