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第481話 限界を超えた戦い

 ロードは身体を向上させる技、極体を発動させた。

 ブケンはそれに対して息を吐きながら攻撃態勢に構える。


「おっと! ここでロード選手もブケン選手も話をやめて攻撃態勢に入った!」


「両者の目つきが変わりましたね。ここからが本番なのでしょう」


「ロードの奴、ブケンに対して接近戦で挑む気か?」


 ハズレが緊迫した声で言う。


「ありゃ……巨大な男の戦いで見せた技か……」


 グラスが言う。


「私はブケンさんと戦ったからわかります。あの人に中距離の攻撃や武器は関係ありません」


 ドノミが言う。


 この時、

(「ロードは必ず決勝に出てわたしと戦う(勝てるのかな、本当に……)」)

 スワンがミハニーツの言葉を思い出す


 ロードとブケンは全く動かない。目も合わせたままだった。まるでお互いに隙が出来ないかを目で追うようにずっと見たままだった。どちらかの目が先に動けばやられる。そう言う緊張感があった。


 そして、しびれを切らした両者がそのまま激突する。


 衝撃流の右の拳を振るうブケン。ロードはその手首を掴み右へ反らす。聖法のバリアに衝撃が入る。


 極体の左の拳を振るうロード。ブケンは正面から拳を当てて勢いを殺す。ジリッと後ろへ下がるブケン。


 衝撃流の膝蹴りをブケンはロードに食らわせる。


「――ごはっ!」


 息を零すロード。


「ブケン二点!」


 極体の腹で気絶せず何とか持ちこたえたロードは頭を上げる勢いで、ブケンの顎に頭を思いっきりぶつけて食らわす。


「うっ!」


 ブケンが仰け反る。


「ロード一点!」


 ブケンはすぐさま顔を戻し、掴まれた手首に衝撃流の拳を振るう。ロードはすぐさま手首を掴んだ手を引き戻す。ブケンは衝撃流を止める。


 ロードは頭を使って頭突きを思いっきり放つ。ブケンはバク転して後ろへ下がる。


 ブケンは空中で拳を構え着地と同時に衝撃流の拳を突く。ロードはスライディングして前に進み衝撃波を下にすり抜けて躱す。


 ロードはブケンの懐に入り込みアッパーを勢いよく放つ。ブケンはこの攻撃を食らう。


「ロード二点!」


 ブケンは勢いよく宙に浮きはしたが、気絶はせずロードの頭に蹴りを放つ。ロードは極体の腕で受け止める。


「ノーダメージ!」


 ロードは手刀を作ってブケンの顔にスピードを乗せて連続で突きに行く。ブケンはそれを全て避けた。


 二人共地面に着地する。ブケンが一瞬でロードの懐に入り込む。そして渾身の衝撃流を放つ。


 しかしロードはその衝撃流を完全に左手で抑えた。衝撃波の余波が走ったがロードにダメージはない。


「ノーダメージ!」


 ロードは逆に近づいてきたブケンに渾身の拳を腹に食らわせた。


「――ごはっ!」


 ブケンは口から空気を吐き出した。


「ロード三点!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ブケンは大声を放ちロードを威嚇する。しかしロードはその程度ではひるまない。だが、ブケンの狙いはそこではなかった。声を出すことで気合を入れた。


 ブケンの拳がさらに早くなる。連続で放たれるブケンの攻撃を躱していくロードだが、一発拳を食らった。


「ブケン三点!」


 ロードは殴られても直ぐに態勢を立て直し、蹴り飛ばす。しかしブケンはロードの足首を掴み衝撃流の拳を放つ。


 ロードは地面に指を食い込ませ、もう一方の足の裏で受け止める。そして地面に突き刺した指ごと腕を回転させ身体を捻り足の拘束を解いた。


 ブケンはそんなロードの顔に衝撃流の蹴りを放つ。ロードはすかさず片手でブケンの足首を掴む。そして引きずり下ろす。二人共地面に倒れた。そしてすぐに立ち上がり、極体の拳と衝撃流の拳がぶつかり合う。


 両者の拳の威力は互角だった。拳と拳がぶつかり、躱し、いなし、反らせ、流し、払い、拳と拳のやり取りが連続で続いた。


 ロードは一発、拳を食らった。


「ブケン四点!」


 ブケンは一発、拳を食らった。


「ロード四点!」


 両者意識が朦朧とする中、それでも拳を振るい続けていた。それはここで決着をつけるくらいに、早さ、力、耐久、のこもった拳だった。


 そして、両者の拳がクロスカウンターの様に顔に直撃する。


「ブケン五点! ロード五点!」


「これは凄い、同時に五点です! 延長戦です!」


「こんな試合、今まで解説して来ましたが見たことありません。前例がありませんが延長戦です!」


 実況者と解説者が興奮していた。


 ブケンとロードは倒れた。


「カウントノックダウン! 5、4――――」


「これはどちらかが先に立った方が決勝進出になるカウントです! どちらが起き上がるのか!」


「僕、長年解説してますけど初めて見ました」


「――――2、1――」


 ブケンとロードは同時に立った。お互いフラフラの状態で言葉も交わせない程のダメージだった。


 しかしブケンは構えた。


「ブケン選手もロード選手も同時に立った!」


「ブケン選手のあの構え、フンカー選手を気絶させた技です」


「まさか――!?」


 ハズレが焦る。


「ここで負けるなよ!」


 グラスが言う。


「凄い二人共……」


 ドノミが呟く。


「頑張ってロード!」


 スワンが叫ぶ。


「お前は強かった。もう楽になれ――――衝撃流――二石波紋!」


 両拳を放つその圧倒的衝撃波はロードに向かう。地面を抉り、空気を吹き飛ばす必殺の一撃だ。


 しかし、ロードの目には精気が戻っていた。


「――――極体拳!!」


 ロードも両拳を前に突き出して、圧倒的衝撃波を相殺した。


「――――なっ!」


「立ちながら、ダメージを回復していた」


 ロードが走り出す。ブケンの元へ走り出す。


「ハハハ、もう力、使い切った」


 ブケンは膝を崩し腰を落とす。そしてロードの拳が、ブケンの目の前で止まる。


「オレの勝ちだ!」


「ハハハ、審判、立てないギブアップだ!」


「ブケンギブアップ! 試合終了! 勝者ロード!」


 審判の叫びに大歓声がわーーーーーーーー!! っと巻き起こった。


 ロードがブケンに手を差し出す。


「参ったな。オレ立てないけど……」


 ブケンが言う。


「いいから取れ」


 ロードが催促するとブケンは手を取る。そして数秒後、ブケンの体力が回復していく。


「こ、これは? 力が戻って――」


「オレの生命力を分けた。さぁ並ぼう」


「ああ」


「決着がつきましたーー!」


「いや~~いい試合でした」


「あ、危ない」


 ハズレが言う。


「まぁ、アイツが負けるわけねぇか」


 グラスが言う。


「……うっ、うっ」


 感動の涙を流すドノミ。


「か、勝った!」


 立ち上がるスワン。


 ロードとブケンは審判の前に並ぶ。


「礼!」


「「ありがとうございました!」」


 ブケンとロードは笑っていた。そして踵を返し門へと向かって行く。


(ブケン。また来年優勝するチャンスがあるんだ、だから泣くなよ)


 ブケンの表情は震えていたが、直ぐにさっぱりした顔で空を見上げた。

 まるで何か悩みが吹き飛んだほど清々しく笑っていた。

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