第479話 ロードVS武闘家のブケン
ロードは西門の前に立っていた。
「ロード様、ご検討をお祈りします」
後ろからニコニコとした受付さんが言って来た。
「うん、頑張ります」
西門がゴゴゴゴと開いていく。
門が開いたことで観客たちは大いに歓声と拍手を送っていた。
そしてロードは闘技場の地面を一歩踏み出して進んで行く。
「さぁ! 準決勝第二試合の開始です! 皆さんも期待の試合になることでしょう!」
「第一試合は蜜の秘宝玉によるドームの結界だ試合が見えませんでしたからね」
「そして東門から入場して来るのは、準々決勝で熱い試合を見せてリベンジを果たしたブケン選手です!」
「彼の力は衝撃の秘宝玉、準々決勝や第一回戦などで見えない攻撃を食らわせてきた強者です」
ブケンが堂々と入場して来る。
「そして西門からは数多の優勝候補を倒してきた、こちらも熱い試合と圧倒的強さだ勝ち抜いて来たロード選手です!」
「彼の力は道の秘宝玉、この大会で使用できる能力は傷を癒し、軌道を読み、身体向上の能力で、それから珍しいことに精霊の力を使います」
ロードが堂々と入場して来る。
そして二人は審判の元へ向かい、数メートル間合いを開けて並び立つ。
「礼!」
審判が言う。
「「よろしくお願いします」」
二人はお辞儀をした。
「ブケンお前と戦えるのを楽しみにしていた」
「オレもだ、だが、試合は試合真剣勝負の恨みっこなしだ」
「ああ」
ロードは一本しかない剣の柄に手を添える。
「はぁーーーー」
対してブケンは拳を握り、腰を落としてゆっくりと構える。
両者の動きが止まって、審判が確認したとき、
「始め!」
赤旗が上から下へと振り下ろされた。
先に動いたのは、ほぼ同時の両選手だった。
ロードは剣を引き抜こうとして、ブケンの左手に止められていた。
ブケンは右手で正拳付きを放ったが、ロードの軌道を読む目の力によって首を傾げられ躱された。
二人は地面を蹴って間合いを取る。両者は間合いを保ったまま、どちらも相手の懐に回り込もうとするが、北の方へ一定の距離を保って走り出し、南の方へ一定の距離を保って走り出した。両者の足の速度は互角で、一向に間合いを詰められなかった。
「おやおや、両選手近づきませんね? 解説のキートさんどう見ます?」
「最初の一撃目で、互いの実力がわかったのでしょう。どちらも相手の力を警戒してなかなか近づけないんです」
「そう、両者の速さ、力は拮抗している」
観客席にいたハズレが言う。
「えっ! あのロードと互角だっていうの?」
スワンが驚く。
「私には何で近づかないのか分かりません」
ドノミが呟く。
「隙が無いから迂闊に近づけないのさ、近づいたらカウンターを食らう可能性が大きいから」
ハズレが説明する。
「なるほど……」
「けっ、どっちもビビッて動けねーだけだろ」
グラスが吐き捨てる。
その時、ロードが青い剣を引き抜いた。
「ミチル!」
間合いを保ったロードはしびれを切らし中距離攻撃である飛ぶ斬撃でに挑む。
ブケンは飛んできた斬撃を難なく躱す。そして少しだけ距離を詰める。
ロードは後ろへ下がるが、ブケンもそれに合わせて距離を縮めていく。
「ミチル! 連斬!」
ロードが一撃、二撃、三撃、四撃、五撃と斬撃を放って行く。
ブケンは右に、左に、右に、左に、右にと斬撃を避けて行く。
「ロード選手の飛ぶ斬撃を躱していくブケン選手! 果たしてどちらが先に一点を取るのでしょうか!」
「ブケン選手完全にロード選手の飛ぶ斬撃を見切っています。決して遅くはないと思うのですが……」
「不味い、ロードは悪手を撃った……」
ハズレが言う。
「えっ、どういうこと?」
スワンが訊いてくる。
「ブケンはただ近づいている訳じゃない。自分の間合いに入り込もうとしているんだ。対してロードは飛ぶ斬撃の間合いをまだ把握していない」
「つまり、どういうこと」
「簡単に言うと、近づいて攻撃した方が当たりやすいってことだ」
ハズレは説明する。
ロードの飛ぶ斬撃攻撃は続いていた。縦に横にと剣を振り、攻撃していく。
ブケンは飛ぶ斬撃を横にギリギリのところで躱したり、身体を仰け反らせて横一線の攻撃を躱したりしている。
そしてブケンは近づいて行った末、3メートルまで近づいたところで、ロードの剣を振りきった瞬間を見切って正拳突きを行う。そしてそこから生まれる衝撃波がロードに向かう。
ロードは空間が歪むのを見て青い剣を構えてガードに映した。しかし、ハズレの言う悪手が尾ひれを引いた。
ブケンはロードの衝撃波に対応したとき、ブケン本人から目を離した。そしてついにブケンはロードの懐に入り、正拳突きを放った。しかし、その攻撃をロードは剣で受け止めたが、
「こういうやり方もある」
「――――!!」
ブケンの腕は伸びきっていない、正拳突きで青い剣を押し返せる。その時衝撃波が走った。
ロードはゼロ距離でブケンの衝撃波を食らって吹っ飛んだ。
「ブケン一点!」
審判が言うと観客が大いに歓声を上げた。
「がはっ!」
唾を吐き出す倒れたロード。しかし、非情なことに次の衝撃波が飛んできた。
ロードは地面を転がって躱す。躱された衝撃波は地面を抉った。
「ロード……お前は何故この大会に出場した?」
ロードは突然ブケンに声を掛けられた。
「何故か……自分の実力が知りたかったからかな」
ブケンが話している内にロードは体を起こした。
「オレはどうして出場していると思う?」
「ある場所へ帰ると昨日のパーティーで訊いた」
「どこに帰ると思う?」
「………………分からない」
「お前なら帰るとしたらどこだ?」
「(ハチュ、チッカ、ツア)…………故郷か?」
「そうだ、オレの帰りたいところは故郷だ……」
「帰ればいいじゃないか……」
「それは出来ない」
「どうしてだ?」
「強者であるお前に教えてやろう、オレが何故この武闘大会に参加したのかを……」
ブケンが自分の真実を語ろうとしていた。




