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第477話 楽しむための試合

 ロードと試合していたヴァーエンが訊いてくる。


「楽しんでるか?」


 ロードが目を見開く。


「そうさ、ロードってばさっきから何かにとりつかれたように怖い顔してるぜ。ホラ」


 そう言いながら。ムチをしまい、手鏡を出現させロードに見せた。


「……………………」


 ロードは自分の顔を望み込む。確かに今まで見たこともない表情だった。


(戦ってるときのオレの顔は、いつもこんなに怖い顔をしていたのか)


 ロードは手で表情を触っていく。


「試合を楽しむための心得教えようか?」


 ヴァーエンが両手に鞭を構え振り回す。


「ヴァーエン選手ムチを振り回して攻防の技を繰り出した!」


「迂闊に飛び込むと点数が取られますね……」


 ロードは動かなかった。


(何だ? ヴァーエンは何が言いたい? 何かの罠か? オレを引き付けるための?)


 ロードは考え込んだ。


「それだよロード! 今心の中で何を考えてる? 何を思ってる? 答えて見てくれ!」


「お前の言葉が罠じゃないかと思っている……」


「よし正直に話したな。そうだまずはそれだ……そうやって相手の行動すべてが罠だと思ったり警戒したりすることはいけないことじゃない基本中の基本さ、けどこういう考え方もできる。あいつの攻撃、不思議で珍しい凄い選手だ! ってさ」


「――――!!」


「オレの攻撃はどうだ? 驚いたか? 凄いか? 不思議か?」


「…………全部だ」


「一つ目は分かったな、あと二つあるから聞いてくれ」


「分かった」


 ロードは純粋に興味を持った。


「身体の動かし方だ。お前は今、今までの試合の様に同じ動きをしてないか? 戦いが始まった瞬間オレに向かって来たのはただ単に点数が欲しかったからじゃないのか? その動きは今までの試合で有効だったからそうやって体を動かしたんじゃないのか? それは正しい相手に勝つためには必要だ。けどそれで点数を取って本当に楽しいか? オレには面白くも何ともない動きだ。だからオレはいつもエンターテイメントをする。炎の玉をお手玉したり、剣で剣を止めて白熱した戦いが始まると思い込ませたりした! そして動かしたかった! 相手は凄い選手だこちらも今までしたこともない動いをしよう! とさ」


「凄い動き……」


「ロード、剣を飛ばすのもいいけど、もっと自分で動くべきだそうしないと楽しめないぞ」


「楽しむ……」


 ロードは今までの動きを思い出す。


(実につまらない動きだ)


「そして最後は技だ」


「技?」


「そうこれが最も重要だ。例えば今お前はオレの技、ムチの攻防を見ている。どう思うこの作戦?」


「隙のないいい技だと思う」


「ダメだ。それじゃあ当たり前のムチの使い方だ。面白みも何もない。だから実際に見せてやろう面白い技を……」


「――――!?」


 その時ロードは見た手袋に張り付けられた電気マークのシールが光るところを、


 そしてムチに電撃が走り、より隙がなくなった。


「見えるか? ムチに青白い電撃が走っているのを……こうすれば相手はムチを見切って掴み取っても、電撃が走り攻撃を食らう。な、よく考えると面白い攻撃だろ? そして凄い攻撃の完成だろ?」


「ああ、今の今まで見切ってたから、掴もうとしてた。おかげでまた考えなくちゃならなくなった」


「じゃあ、技を使うべきだ」


「ミチル!」


 ロードが飛ぶ斬撃を繰り出して、ムチを弾き飛ばす。


「半分正解」


「どうすればよかった?」


「それを必死に考えるのが試合の面白いところだ。いいかもう一度電気のムチを振るうからよく考えて技を出し動け」


(よく考える。手で掴むと電撃が走る。飛ぶ斬撃は同じ技と動き…………そしてオレにある技の数からして――)


 ロードの顔つきが変わる。


「ん? 来るか?」


 ロードは地面の砂を蹴り上げた。そして砂ぼこりを起こした。ヴァーエンの目に砂が入りムチの動きに隙が出来たところ、ロードはムチの攻防の隙間に侵入し殴りに行った。


「ロード四点!」


 審判が叫ぶと観客が歓声を上げる。


 ロードはヴァーエンが態勢を整えるのを待った。


「見えなかったけど、感じ取った動きも技も考えも正解だ」


 ヴァーエンはムチを仕舞う。


「今、わざと攻撃を食らわなかったか?」


「バレてたか……そうさ、オレはいつも四点から逆転するのが楽しいんだ。だから相手にわざと点数をあげることもある」


 ヴァーエンはもう後がないのに笑っていた。


(なるほど……それがお前の試合の楽しみ方か)


「やっと、楽しそうな顔になったな……それじゃあこっちはこいつを使おう! ボムシール!」


 手袋に貼られた爆弾のシールが輝きだし、手のひらに爆弾を出現させる。


(何だあの黒い玉は……)


 ロードは初めて見た。


「その顔、初めてみるんだな。こういう爆弾……よかったなら楽しんでもらそうだな」


 ヴァーエンが爆弾を投げる。そしてロードは考えた末、距離を取る。


 導火線の火が爆弾に入り込み、大きな爆発を生み出した。


「どうだーー! 派手な攻撃だろ!?」


 ヴァーエンが叫ぶがロードは構わず爆発を避け、回り込む。


「――――!!」


 その時足元に爆弾が敷き詰められているのを見た。


(今の爆発は、こいつを配置するための囮か!?)


 ドドドドドドドドドっと爆発していく。


「ヴァーエン三点!」


 審判が言うと歓声が上がる。


「うおおおおおおおおおお!!」


 ロードは爆発に巻き込まれてもミチルの飛ばない方の力を使って爆風の中でも走って来ていた。


「うわっ!? 吹き飛ばされなかったのか?」


 ヴァーエンが驚く。


「今思いついた。飛べる剣なら飛べない剣にもなるんじゃないかと――!!」


「それは面白い」


 ロードは剣を振るったが、ヴァーエンは後ろにバク転して躱す。


「だったら、オレのとっておきで勝負を決めてやろう――ビッグハンド」


 手袋に貼られた手のシールが輝くと、人一人を掴めるくらいの両手が宙に現れた。


 ビッグハンドがロードを掴もうとするが、ロードはスライディングで躱し、次の手はハンマーの様に地面ごと叩き潰していくが、ロードはギリギリのところで止まり、ビッグハンドの上を走っていく。


「おめでとう……」


「ミチル!」


 ロードが正面にいたヴァーエンに必殺の飛ぶ斬撃を食らわせる。


「ロード五点! 勝者ロード!」


「やりました! ロード選手準決勝進出です!」


「単純な動き同士の試合でしたが、見ごたえのあるいい試合でした」


 ロードは倒れたヴァーエンに手を差し伸べた。それを掴むヴァーエン。


「キミの勝ちだな」


「楽しかったよ」


 ロードが言う。


「それは良かった」


 ロードとヴァーエンは審判の元に並び立ち、


「礼!」


 審判が言うとお互いお辞儀をする。


「「ありがとうございました!」」


 二人は踵を返し、それぞれの門へと向かって行く。


 準々決勝が終了した。次は準決勝だ。

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