第465話 VS圧倒的な実力者
ハオストラ武闘大会、第4回戦が始まっていた。
「五点! 勝者デガラ!」
審判が叫ぶ
「まさしく鬼人! あっという間に勝利したーー! 5回戦進出です!」
「しかも、まだとっておきは見せてませんからね。次の試合も楽しみです」
実況と解説が次の試合まで雑談していた。
「おい、グラス次の試合だぞ……」
観客席にいたロードが言う。
「ハァ? オレの試合はとっくに終わった」
隣に座るグラスが言う。
「あの電光掲示板を見てみろ……」
ブケンが言うのでグラスは見てみる。
ライズVSソン。
「誰だよ……」
「お前が負けた相手だろ? どこまで勝ち進むか興味ないか?」
「ない。あんな奴次の試合で負けちまえばいい」
グラスがそっぽを向く。
(よっぽど悔しかったんだな~~)
「さてお待ちかねの試合です! 東門から入場するのは、昨日秘宝玉の力を発揮した優勝候補のライズ選手! 対して西門から入場して来るのは経歴なし初出場のソン選手です!」
ライズと言う男は戦う者に相応しい服装をしていた。一方ソンという女は見慣れない服を着ていた。身体のラインがくっきりわかる服装で、足元から太ももに掛けてスリットが切られていた。加えて花柄だった。
「礼!」
審判が言う。
「キミは武闘家かな?」
ライズが訊く。
「あわわ、優勝候補、近くで見れて光栄です。私なんてまぐれで勝ち残っただけの若輩者、鍛錬の一間としてあなたに挑みます」
内心緊張気味のソンだった。
「始め!」
審判が早速赤旗を振り下ろす。
腰に提げた剣を抜くライズ、それよりも早くソンは動いた。そして渾身の拳を振り被る。
ライズは剣を抜くと同時に刀身でガードの構えを取るが、ソンは拳を引き下げて、足蹴りに移行する。
しかし、ライズはジャンプして日光剣の力を出す。視力を奪う光がソンの目に入る。
ライズが着地してソンを斬りつけようとしたその時、
「ギブアーーーーップ!」
ソンが叫ぶとライズが剣を引き下げる。
「ソン選手ギブアップ、勝者ライズ!」
審判が叫ぶ。
「何とソン選手ギブアップです!」
「それはそうでしょ、視界を封じられれば後はやられ放題ですからね。3回戦のグラスさんとの勝負を見て速攻で攻撃しに行きましたが、ライズ選手の身体能力も高かったようで失敗しましたね」
「「「キャーーーーライズーーーー!!」」」
ファンの女の子たちが叫んでいた。
ライズはソンに礼をした後、手を振りながら会場を後にした。
その後、Aブロックは各選手と優勝候補のムサロウ選手の勝利と共に幕を閉じた。
◆ ◆ ◆ ◆
Bブロックの試合が始まる。
まず勝利したのは優勝候補の雪女のユキメ選手。
そして、各選手の試合で一時間経つ。
そしてBブロックも中盤を過ぎた頃、注目の一試合となった。
電光掲示板にミハニーツVSハズレという表示があった。
「いよいよか……」
ロードが固唾を飲む。
「また爆弾魔か」
グラスがうんざりしたように言う。
「相手は女性だが、ここまで勝ち上がってきた人だ。油断はできない」
ブケンが腕を組み発言する。
「さぁ! 東門から入場して来るのは謎の仮面の女性ミハニーツ選手です! そしてそして西門から入場して来るのは今大会の頭脳派! ハズレ選手!」
「勝負を急ぐあまり後半余裕がなくなるハズレ選手ですが、実力は本物だと思います」
両者が前へと歩いていく。
この時、
(ロード、忠告ありがとう)
ハズレは思っていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ハオストラスタジアム・廊下。
「ハズレ、相手のミハニーツさんについての情報はあるか?」
ロードが言う。
「ほとんどない。どんな身体能力とか、攻撃方法とか一切明かされてない」
ハズレが頭を抱える。
「オレ、あの人に剣を向けられた。何かを試すように……」
「何だ? 口説き落とそうとでもして怒られたか?」
ハズレが茶化す。
「真面目に聞いてくれ、その剣の動きをオレは目で捕らえることが出来なかった」
「どういうことだ?」
「つまり、剣を鞘から抜いて、肩に当てられたんだが、見えた? って聞かれるまで剣の切っ先が肩に乗っているのに気が付かなかった」
「ロードが気が付かない?」
「ハズレ、試合をするなら気を付けろ彼女相当な実力者だぞ」
◆ ◆ ◆ ◆
ハオストラスタジアム・闘技場。
「礼!」
審判の発言で、ハズレとミハニーツが礼をする。
「キミ、女の人だって? オレが勝ったらその仮面取って素顔を見せてくれないか?」
ハズレが軽口を言う。
「無理、あなたじゃ私に勝てない。絶対に……」
突き刺すような声だった。
「自信家なんだ……? それじゃあ是が非でも顔を拝みたいな(この人、ただ立ってるだけなのに隙が無い)」
ハズレが純銀の剣シラユリヒメを構える。
「始め!」
審判が赤旗を振り下ろす。
ハズレは早速――接近戦に挑む。しかし――――
ガキン――と甲高い音が鳴った。
――――それはハズレの剣が弾かれて、手元から吹っ飛んだ音だった。
宙を舞うシラユリヒメ、そしてザクッと地面に突き刺さる。
「――――ハハハ、何だそりゃ」
ハズレは乾いた笑いを出し、シラユリヒメを掴もうとするが、異変に気付く。
「――――!? (手がしびれて剣が持てない)」
ハズレはミハニーツの仮面の向こう側にある目を見た。
「――――!!!?」
ハズレは一気に距離を取った。その目の威圧感に恐怖を覚えたからだ。
「何だ何だ! 一瞬のことで目が追いきれませんでした!」
「状況から察するに、ハズレ選手の剣がミハニーツ選手の剣に弾かれて、落ちた剣を取りに言ったはいいが力が入らず取れなかったでしょうか」
ハズレはマッチ棒を取り出して背中に回す。
「……」
ミハニーツは一歩前に進む。
ハズレはマッチ棒と火薬玉をミハニーツに向かって投げる。
しかし、何故かマッチの火が消えた。ハズレも気が付かないことだが、ミハニーツの剣圧が火を消し飛ばしたのだ。不発する火薬玉。そして落ちて行った。
「これだけ?」
ミハニーツが訊いてくる。
「まだだ」
ハズレはオイル瓶をミハニーツに向かって投げた。さすがに避けられはしたが、オイルは地面にぶち撒かれた。
火の灯ったマッチ棒をオイルの地面に投げる。
すると、導火線の様に火がオイルを伝って、さっき落ちた火薬玉へと接触し爆発した。
近くにいたミハニーツは爆発に巻き込まれ――――
「ノーダメージ!」
審判が言う。
ミハニーツは剣圧だけで爆発を切り裂き、安全地帯を作っていた。
この時、
(いや~~~~ここまでだな)
刹那の瞬間ハズレは思った。
そしてハズレの身体は剣圧で吹っ飛ばされた。
「ミハニーツ一点!」
審判が叫ぶが――ミハニーツの攻撃は終わらない。二撃、三撃、四撃、五撃と剣圧による攻撃を続けた。それはまるでロードのミチル戦法と同じだった。
ミハニーツは入場門へと立ち去る。
土煙の中ハズレの姿は見えない。しかしそれでも、
「審判の人、もうあの人気絶してる」
ミハニーツの言葉に審判は急いで確認しに行く。
土煙が晴れ倒れているハズレが発見された。
「ノックダウン! しょ、勝者ミハニーツ!」
「――――――!?」
「………………!?」
実況も解説も観客たちも言葉を失う勝負だった。
(…………ハズレ、出し切れたな)
ロードが心の中で賞賛する。そして視線に気づく。一瞬仮面の女性ミハニーツの目がこちらに向けられた。
(…………キミは誰だ)
ロードは心の中でその正体を知りたくなっていた。




