第464話 早朝の過ごし方
町はずれの草原。
早朝の景色は、薄く霧が立ち周りが見えずらくなっていた。
ロードたちはここでテントを張って眠っていた。
昨日の試合の疲れが出たのか、ロードもハズレもグラスもブケンもぐっすり眠っていた。
男子用のテントと、女子用のテントがある。
そんな中、スワンが早朝から起きて美味しい水の仕込みをしていた。
「ん……ん~~~~」
ロードが目を覚まし、身体を伸ばす。そして一人達、ぐっすり眠る仲間たちを起こさないように、ゆっくり動いてテントから出る。
最初に見た景色は霧、それから水の仕込みをしているスワンを見た。
「おはようスワン」
「あっ、おはようロード」
白いテーブルの上に大きな樽を乗せて、上の蓋を開けて水面に手をかざすスワン。
「今日も水の仕込みか?」
「そうだけど……そうだ、試飲してみる?」
「ああ、じゃあ貰おうか」
ロードは好意を受け取った。
スワンが荷船からコップを持って来る。そこに樽についていた蛇口を回し、水を注いでいく。
「はい、どうぞ」
スワンが優しく手渡して来る。
「ありがとう」
スーーーーっと口にコップを付け水を喉に流す。
「今日のは何と天然水並みの水にしてみた」
「うん、甘さはないが、喉が渇いてるときには丁度いい」
ロードが飲んだ感想を言う。
「けど、昨日クレームがあったんだぁ、こんな甘い水飲めるか金返せって」
「そんなことがあったのか?」
「うん、まぁお金は返したから大した騒ぎにはならなかった。だから今日の水は甘さを捨ててみた」
「…………スワン、当たり前のことを言うが気にするな。いつもの水の方が美味しいぞ」
「わかってる。けどロードは優勝賞金で私の借金を返すつもりでしょ?」
「ああ、そうだ」
「それを知った時、私は嬉しかった。けど昨日の巨人さんとの試合を見て、わたしも新メニューを考えたくなったの」
「そうか……そういうことなら何も言わない」
「ありがとうロード、ヒントをくれて……」
「えっ、ヒントをくれたのはスワンだろ? オレに新技のことを考えさせたのはスワンだぞ?」
「えっ、新技の考えをしていたんじゃないの?」
「まぁ、どうやって戦い抜いて行こうとは思っていたが……新技を作るという考えはよぎらなかった」
「ふ~~~~ん、じゃあわたしのおかげで勝ったんだ」
「だからありがとうと言ったんだ。それより顔を洗いたいどこに水辺があった?」
「霧が晴れたら案内する。それまで椅子に座って待ってて、昨日だいぶ疲れてたんでしょ」
「ああ、極体……全身の生命力を力に変換し身体向上をする。使った後止め方がよく分からなかった」
「それって結構諸刃の剣なんじゃ……」
スワンと話していると、サッサッと草を踏む音が聞こえて来た。その正体は霧の向こうから現れたドノミだった。
「ドノミさん、起きていたのか……」
「おはようございますロードさん」
「ああ、おはよう」
「ドノミさん。買って来た?」
スワンが訊いていた。
「はい、あまり人がいなくて直ぐ買えました」
「何だそれは?」
ドノミが持っていた物をロードは見たことが無かった。灰色の紙に黒いインクで印刷された用紙を見る。
「新聞紙です。またの名を情報紙とも言います。これには様々なニュースが書かれているんです」
ドノミがテーブルの上に新聞紙を置く。見出しはライズの写真だった。
「この人、昨日グラスを倒した人か……」
「優勝候補のライズ選手! 日光の秘宝玉で圧倒的強さを見せる!」
ドノミが見出しを読み上げた。
「グラスの話だと、ロード並みの力で攻撃してきて、目を潰して来るって聞いたけど……」
「しかしグラスも一点取ってた。決して勝てない相手じゃないだろう……」
「あっ! ハズレさんの記事乗ってますよ! ハズレ選手、優勝候補のメイダー選手をお得意の頭脳戦でくだす。しかし、大会での手札の切り方からして、手の内をさらしすぎたのは問題か!」
「どういう意味だ?」
「ロードさんと同じですよ。昨日オオヅチ選手が手の甲に鎧を装着して、飛ぶ斬撃を弾いたでしょ? 皆対戦相手の技の対策をして言うんですよ。前の試合を見ながら……」
「あ~~試合を見ていたのか……考えることはみんな同じだなぁ」
「ロードさんも対戦相手の対策はした方が――――」
ドノミが新聞を捲ると、
圧倒的強さ、ロード選手に対抗策はないのか!? このまま完全試合のまま決勝へ進むのか!?
そう言う見出しでロードの写真が写されていた。
この時、
((………………新技あるし、ゴリ押しで決勝トーナメント行けそう))
スワンとドノミが思った。
「他の記事は?」
「優勝候補マグマン選手意外な敗退とその訳、フンカ―選手5年ぶりの大会出場の気の代わりは何故か? サイボーグ、ターカウス選手の秘密、ヴァーエン選手、今だ本気になる試合なし、雪女のユキメ選手聖法がなければ観客席まで凍る。ハズレさんの情報通りのことが書かれてますね」
「ハズレ、どんなけ調べたんだ……」
スワンが言う。
「さて、霧も晴れてきたしオレは顔を洗ってくる。スワンどの方角だ?」
ロードはスワンに川の場所を聞き、顔を洗いに向かて行った。




