第459話 ロードVS怪人のアーティモリ
ハオストラスタジアム・控室。
Dブロックの試合が始まっていた。
ロードは昼食の海苔弁当を食べ終わり、近くのゴミ捨て場に捨てた。
「今の試合も見どころがたくさんありましたね~~」
実況者が終わった試合について語る。
「最終局面で賭けに出てましたね。それが功を成して勝利したわけですけど……」
解説者が試合の内容を語る。
(そろそろ出番か……)
ロードが映像を見て控室から立ち去った。
映像に映し出されていたのは次の試合の名前、ロードとアーティモリと言う選手の名前だった。
▼ ▼ ▼
西門。
その門名前に立つロードと、お見送りをする受付嬢。
そして7メートルほどもある大きな西門が開く。
観客たちの歓声が聞こえて来た。
「さぁ! Dブロック次の試合です! 東門から出てくるのは怪人アーティモリ選手! べベラ界出身の数々の大会でその名をはせた実力者です!」
「名前なら他世界にも轟いていますね」
その風貌は金髪のオールバック、カイゼル髭を生やし、紳士な服と黒いマントに身を包んだ、いかにも怪人と呼ぶにふさわしかった。
「そして、西門から入場して来るのは昨日、フィルス選手をその圧倒的な剣捌きで打ち負かした経歴なしのロード選手です!」
「いや~~昨日の戦いは見ていて気持ちがいいほどの強さでした。精霊の剣を持った珍しい選手ですね」
ロードとアーティモリが正面から向かい合う。
「礼!」
審判が声を発すると両者はお辞儀をした。
「昨日の戦いは見逃してしまった。あまりに早く終わってしまったのだ」
アーティモリが警戒する。
「オレはあなたの戦いを見ていた。黒いマントを使うということはわかっている」
ロードが青い剣の柄に手をそえる。
「始め!」
審判が赤旗を振り下ろした瞬間――――ロードは青い剣を振り抜いて真横に飛ぶ斬撃を放った。斬撃は聖法のバリアに当り観客たちを守った。
「――――!?」
アーティモリが驚く。
「今の見たか? これでお互い同じ条件で戦える」
ロードの目つきが変わる。
「その紳士的なふるまい気に入った」
アーティモリが言う。
「おっと! ロード選手威嚇のつもりか! わざと斬撃を飛ばしました!」
「肩慣らし、とは思えませんがどういう意図があったのでしょう?」
(これで技は見せた。相手もオレも同じ条件下での戦いになる。まずは――――)
ロードはミチルの力を使い飛ぶ斬撃を一発、アーティモリに向けて放った。
「――早速か!」
アーティモリは黒マントで斬撃を防御した。しかし、その斬撃の起こした土煙の中からロードが現れた。そして正確に青い剣で首元を狙う。
「ロード一点!」
審判が叫ぶ。
「――な!」
「ミチル!」
更に首元に食らわせた青い剣を、そのまま斬撃を放つようにロードはミチルに命じた。アーティモリはその場で斬撃をもろに食らった。
「ロード二点!」
吹き飛ばされたアーティモリは体勢を整える。そしてロードの姿を目に捉えるが、ロードは再びミチルに命じる。今度は地面に斬撃を放ち土煙を巻き上げて姿を消した。そこからミチルの飛ぶ斬撃が放たれた。
「――同じ手は食わない!」
アーティモリは横に躱し、またロードが斬撃の後ろに隠れているのではと思ったが、いなかった。さらに躱したはずの斬撃から剣が飛び出してきて、アーティモリ選手の喉元へ突き刺さる。正確にはプロテクトオイルに守られているため打撃になっているが、
「ロード三点!」
審判の判定通り有効ダメージに変わりはない。
そして飛んでいた青い剣は土煙の中へと戻っていく。所有者ロードの元へ。
それを見たアーティモリは、ついに黒いマントを広げて土煙の中にいたロードに攻撃する。
何かにガキンと硬化したマントに当たる音がした。
審判は反応しない。そこから考えうるにロードに攻撃が当たったのではないとわかった。
「晴らせば――――!!」
アーティモリがマントの起こす風で土煙を払った時、ロードの姿はどこにもなかった。
そしてロードを探すアーティモリは、真上からの飛ぶ斬撃に気づかなくて食らった。
「ロード四点!」
審判が叫ぶ。
「――――上から!?」
アーティモリが上を見るとそこには青い剣にぶら下がるロードの姿があった。
「ロード選手! あっという間に四点先取!」
「初回の斬撃が原因でしょうか……うまくアーティモリ選手の頭の中に能力の異常性を報せて混乱させているのでしょう」
「なんと、初回の飛ぶ斬撃にそのような意味が! 曲者です!」
(そんな意味はないんだが……)
ロードがアーティモリを見下ろしていると、彼もマントを広げて飛び立った。そして同じ目線に飛行する。
「吾輩がここまで手こずるとはかなりの強者だ!」
アーティモリがマントを振るう。ロードは赤い剣を引き抜いてマントを弾き、青い剣で飛ぶ斬撃を放つ。
即座に防御態勢を取るアーティモリ。しかし、斬撃は二つ、三つ、四つと、どんどん重なって聖法のバリアまでアーティモリは吹き飛ばされていった。
「激突しましたが――これは?」
実況者が首を傾げる。
「ノーカウント!」
審判が言う。
ロードは依然空の上、アーティモリは聖法の壁に張り付いていた。そして動こうとした時に気が付いた。
赤い剣が黒マントに突き刺さって身動きが取れないでいた。そしてロードは青い剣を振り下ろす。
飛ぶ斬撃がアーティモリに襲い掛かる。
「ロード五点! 勝者ロード!」
審判が叫ぶ。
「やりましたロード選手! 完全勝利です! 第3回戦進出です!」
「いや~~見事な戦いぶりですね。完全にアーティモリ選手を翻弄してました」
試合の終わった二人は審判の元で向かい合う。
「一方的な試合で済まない」
ロードが謝る。
「いや完敗だ。不思議と悔しくはない」
アーティモリが言う。
「礼!」
両者は礼をしてその場から立ち去った。
▼ ▼ ▼
ハオストラスタジアム廊下。
ロードは歩いていた。前には仮面をかぶった黒髪ロングの人物が立っていた。
(昨日、トーナメント表を見てた人か……)
ロードはその前を通り過ぎようとした時、仮面の女性に立ちふさがれた。
「? 何か用?」
ロードが問うと、
トンと、いつの間にか剣の切っ先がロードの肩についていた。
(剣? いつの間に引き抜いたんだ!?)
ロードは女性の剣を見て驚く。
「今の見えた?」
仮面の女性が訊いてくる。
「何が……?」
ロードは問い返す。
「ごめんなさい。人違いだった……」
仮面の少女は剣を引き下げて、鞘に納めながらその場を立ち去る。
(人違い? それに今の香り……たしかあの人大会の選手だったな……名前は確か、)
(……ミハニーツ――痛――!)
ロードは前と同じく仮面の女性の香りに、どこかに懐かしさを感じていた。
そしてその名を思い出した時、頭に痛みが走った。




