第456話 ハズレVSアビリティーアクセサリー使いのアニエス
Bブロックの試合が行われていた。
「ノモケバ選手、試合放棄とみなし勝者ミハニーツ選手!」
観客たちがざわめく。
「なりきりマスクの弱点を突いた戦いでしたねキートさん」
「ミハニーツ選手は先日もマスクの選手と戦っていますから、実力が未知数ですね」
そして、次の試合が見ものだった。
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「マグマン選手強い! そのマグマの身体の熱で近づくことすら許されないのか!?」
「マエストロ選手のリボルバーの銃弾がことごとく溶かされてダメージになりませんね」
「ヘイ、ギブアップ」
「おっと、マエストロ選手ここでギブアップを宣言!」
「弾切れでも起こしたんでしょうね。相当な数の弾撃ってましたし……」
「勝者マグマン選手!」
この試合を見ていたロード、グラス、ブケンはそれぞれ感想を述べる。
「溶岩人か……厄介そうだな」
グラスが言う。
「相手の選手一点も取れなかったところからすると、流石優勝候補と言うだけのことはある」
ブケンが言う。
「ハズレと同じBブロックか……炎使いのハズレからするとやりづらい相手だろうな」
ロードが言う。
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「さて、次の選手の入場です。東門からモードレット界出身のハズレ選手! 西門からベディヴィア界出身のアニエス選手! 両者とも騎士王界出身です! これは見ものですね」
「ハズレ選手は炎や火薬を使っていましたが、対するアニエス選手はアビリティアクセサリーを使っていましたね」
「これは目が離せない試合になることでしょう」
(モードレット界というところがハズレの故郷か……)
ロードが密かに心にとめる。
「礼!」
ハズレとアニエスがお辞儀をする。
「あなた、モードレット界出身なのにアビリティアクセサリーを付けていないの?」
様々のところにアクセサリーを付けたどこぞの貴族様のような女性が訊く。
「ちょいと訳ありでね……安心しな、これでも腕には自信ある」
ハズレが鞘から剣を引き抜く。
「そう、なら手加減はしないわ」
「始め!」
審判が赤旗を振り下ろす。
早速ハズレは剣でオイル瓶を斬りつけて、ぶちまける。その際剣に付着したオイルが空気摩擦で燃え上がる。
「炎の剣」
アニエスが呟く。そしてハズレが走り出すが――
「ライトアイ!」
アニエスが右手薬指の指輪から光を放った。
「くっ――――」
ハズレは目を両手で覆った。その隙を突かれハズレはアニエスに蹴り飛ばされた。しかも受け身が取れず、炎の剣も落としてしまった。
「アニエス一点!」
「出ましたーーアビリティアクセサリーまずは炎の剣でハズレ選手の一点かと思いましたが、目くらましで相手の動きを封じて、蹴り飛ばす!」
「昨日も思いましたが、ハズレ選手はどうにも勝負を急ぎたい傾向にありますね」
目をゴシゴシしていると視界がぼやけて見えて来たハズレ。
「この剣、頂戴しますわ」
アニエスが炎の剣を拾う。そしてそのまま女性とは思えない速度で移動する。
(速い――)
ロードが驚いた。
「おっと! あちちちちちち!」
ハズレは振り下ろされた炎の剣を真剣白刃取りした。
「お見事!」
アニエスは褒めて剣を手放す。
「ん? 今のは点数にならないのか?」
グラスが訊く。
「有効なダメージと審判が認めなかったからだ。今の攻撃ならオレでもそうするけどな」
ブケンが言う。
「ハズレ選手、自ら落とした剣に点数を取られるかと思ったが、何とか取り返しました!」
「と言うか、ハズレ選手の目の復帰が早い気がします。これがモードレット界の騎士王政の育ち方がモノを言っているのでしょう」
アニエスとハズレは距離を取る。
この時、
(目くらましのアビリティーアクセサリー耐性の身体にしておいてよかった)
と、故郷のことを思い出す。
一方アニエスの方は両腕のアクセサリーを光らせムチの形に変えた。
「出ました! 第一回戦でも見せたアビリティーアクセサリースネイクウィップです!」
「行きますわ!」
蛇のようにしなる鉄のムチがハズレに向かって行く。
一方は炎の剣に絡み取られ、もう一方のムチでハズレにムチ打たんと迫るが、ハズレが剣から手を離しムチの射程距離から間合いを取った。しかし
「逃がしません」
その素早い足の動きが、ハズレを逃さず、鉄のムチを放った。
しかしハズレは鉄のムチを掴んだ。そして引っ張ってアニエスを引き寄せようとしたが、
「無駄です」
アニエスの移動速度にハズレの方が引きづられる。
「くうーーーーその足のアビリティーアクセサリーか!」
「ハズレ選手アニエス選手に一撃与えようとしましたが、アビリティーアクセサリークイックリングによって引きづられていきます」
その足首のリングはアニエスの両足についていて、移動速度を上げる効果を持っていた。
ハズレは仕方なくムチから手を離し態勢を整える。再び炎の剣はアニエスのものとなる。
ハズレは手を背中に回した。今からやることをアニエスに見せない為である。
背後でマッチ棒を擦り、箱の方を左手でしまい、そして火薬玉を取り出す。
「まだ何か策が?」
アニエスが訊くと、ハズレは火薬玉を投げつける。その投げつけた方向は炎の剣シラユリヒメ。
大きな爆発が巻き起こった。
「けほ、けほ、いったい何が――!?」
アニエスの目の前にはハズレがいた。なんとハズレは爆発の中を突っ切っていた。
「お嬢さん、戦い慣れしてないだろ――皆、爆風から逃げる時大体後ろへ下がるんだ」
アニエスの目の前で火薬玉とマッチ棒が接触した。
また大爆発が起きた。
「ハズレ一点!」
爆風から出てくるハズレ、吹き飛ばされ転がされるアニエス。
そして落ちていた炎の剣を拾い宣言する。
「まだまだあるんだろ? アビリティーアクセサリー全部跳ね除けて勝ちを貰う」




