第441話 初めての焼肉食べ放題
ロードたちは行き倒れていた男性と共に飲食店に向かった。
今日の夕食はハズレが見つけた焼き肉店で取ることにした。
「いらっしゃいませーー何名様ですか?」
店に入るなり早々、店員に声を掛けられた。
「え、えっと……」
突然の声掛けと店員のハッキリとした声に驚くハズレ。
「6名です」
ドノミがすかさず答える。
「6名様ですねこちらへどうぞ……」
ドノミを先頭にロードたちは女性店員について行く。
「う、うう、腹減った……」
行き倒れていた男が言う。
案内されたのは6名が座れる個室だった。
「90分の食べ放題ですので、時間までお楽しみください。注文があればそこのテーブルに設置されたボタンでお呼び出し下さい」
ロードたちはそれぞれ席に着く。
「これがメニュー表」
スワンが得意げに語る。
「ど、どういうお店なんだ?」
ハズレが訊く。
「ここは食べ放題のお店なんですよ。時間制限が来るまでは、どれだけ食べても値段が変わらないんです」
ドノミが説明する。
「た、頼んでいいか?」
行き倒れの男性が待ちきれんとばかりに発言する。さっきまで行き倒れていた男にも見えなかった。
「値段が同じなら好きなだけ頼んでくれ」
ロードが金貨をチラつかせる。
「よ、よし、じゃあ早速――――」
行き倒れ男がボタンを押す。しばらくして店員が注文を聞きにやって来る。
「ご注文を承ります」
「この焼肉セット6人前とラーメン一丁、ハンバーグ一つ、カレーライス一つ、ナポリタン一つ、餃子セット一つ、うな重一つ、ホットドック一つ、それからお茶のドリンクを――――」
男性がたくさん頼んでいた。
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員が下がる。
「おい、本当にいくら食べても同じ金額なんだろーな……?」
グラスが念のため聞いてくる。
「ええ、食べ放題のお店なので、ただし時間制限内までですけど……制限以降は注文が取れません」
ドノミが説明する。
「お寿司あるなら、お寿司食べようかな~~」
スワンがメニュー表を見ながら言う。
「煌びやかなお店だったからここがいいといってみたんだが、そんなにサービスのいいお店だったのか」
ハズレが驚く。
「一人いくらぐらいだ?」
ロードがドノミに訊く。
「えっと、50銀貨のようですので、金貨3枚で足ります」
「よし今日はオレがおごろう」
ロードが発言する。
「ん? この野菜は何だ? 色々乗っかってるやつ」
グラスがドノミに訊く。
「ああ、それはサラダのことです。食べてみたいのでしたらそこのボタンを押してください」
「何だここは……ピザまであるじゃないか……」
ハズレが驚く。
「先ほど、6人前の焼肉セットを頼みましたよね?」
「ああ、アンタら焼肉を食いに来たんだろ頼んどいたのさ……おっと来たようだ」
男性が言うと個室に店員が入って来た。
「はい、こちら6人前焼肉セットです」
「待ってました!」
男性の前に、ロードの前に、ハズレの前に、スワンの前に、グラスの前に、ドノミの前のにキレイに並べられた切り肉が盛り付けられた皿が置かれる。
「こちらがお茶となります」
店員が大きなお茶の入った水差しを置く。
「ふ~~~~ありがて~~~~喉乾いてたんだ~~」
男性が身を乗り出してコップにお茶を注いでいく。
「すみません。この肉、生なんだけど……どうやって食べればいいんだすか?」
ハズレが訊いていた。
「あっ、そのテーブルの中心にある網の上で焼くんですよ。火加減の方はテーブルの下のスイッチで変えられますのでご自由に調節してください」
説明を終えた店員さんはその場を去った。
そして、男性が6人分のお茶を注ぐと、それぞれ持つように指示した。
「それじゃあ、この縁にありがたみを込めてーーーーかんぱーーい!」
一人盛り上がり、ロードたちと乾杯する男性だった。
『『『か、かんぱーい』』』
訳も分からず乾杯するロードたちそして、
「で、テメーはどこのどいつなんだ?」
グラスが今まで気になっていたことをツッコんだ。
「ぷはーーこれはこれは自己紹介がまだだったな。一飯の恩人たちよ。オレの名はブケン・リーチョン。とある山で山籠もりしていた武闘家だ」
男性は自分をブケン・リーチョンと名乗った。
そして、美味しい、珍しい、楽しい、夕食が始まった。




