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第440話 ラフな服装

 夕暮れの頃。

 ロードたちは飲料店の閉店作業を行っていた。

 テーブルや椅子をしまい、片していく。


「ドノミさん、売り上げはどれくらいだった?」


 スワンが椅子を運びながら訊く。


「えっと、1、10……43枚銀貨です」


 ドノミがレジからお金を引き出して言う。


「売れてんのか? そいつは……?」


 グラスが荷船の船上から訊いてくる。片付けはサボっていた。


「まぁまぁ、じゃないか? とにかく夕ご飯は食べられそうだ」


 ハズレがテーブルを荷船にしまい込む。


 そして片付けが終了したところで、


「よし、夕食の時間だ」


 ロードがそう締めくくった。



 ▼ ▼ ▼



 町の繁華街。

 ロードは黄色いラフな服装をし、ハズレは羽根帽子を取って薔薇がらの服を着ている。

 スワンは水色の涼しそうな服装をし、グラスは緑色のシャツ1枚だった。

 ドノミは律儀に管理局の制服を着ていた。

 ロードたちは街を進んで行く。ドルフィーナの引く荷船と共。


「ドノミさん、いつまでその制服を着ているんだ?」


 ハズレが訊く。


「確かに、もう管理局とは縁を切ったんでしょう?」


 スワンも言う。


「この制服は高価なものなんです。両親に買ってもらった大切な服なんです。この服は管理局員としての誇りです」


 ドノミが発言する。


「けど、ドノミさん。確か……管理局から逃げたことで解雇されたって言ってただろう?」


 ロードが言う。


「かいこってなんだ……?」


 グラスがハズレに訊く。


「この前訊いただろう? 管理局の組織が強制的にドノミさんを会社から追放するって……」


 ハズレが答える。


「確かに解雇はされましたと思います。けど、私はまだ、混乱しているんです。責任を全て追うつもりが、逃亡と言う道を進んでいる。これはまだ管理局に未練があることの現われなんです」


 ドノミが自分の気持ちをさらけ出す。


「まぁ、好きにさせてあげたら? お気に入りの服ってことでしょ? 似合ってるし、着ててもいいんじゃない」


 スワンが言う。


「ロードさんはどう思います?」


 ドノミが訊いてみる。


「自分の好きな格好でいるといいんじゃないか?」


 ロードが言う。


「しかしだな、管理局の人間はドノミさんを追ってくるはずだ。こんな目立つ格好をさせておくわけにもいかないだろう? どこで誰が見てるかもわからないし……」


 ハズレが可能性を提示する。


「そうそう見つからないって、この無限大世界がいくつあると思ってるの?」


 スワンが言う。


「逃亡するっていう心の準備が出来てなかっただけだろ? だったらいつかその心構えができるまで待つべきだ」


 ロードが言う。


「はい、わかりました。ところでロード。トンガリのいたスライムの世界で秘宝玉の秘密を知ったんだろう? それは何だったんだ?」


 ハズレは訊く。


「魔王バグバニッシャーとの戦いで、トンガリは暴走しなかった。それはオレがずっとトンガリの心の中で声を掛けていたらしいとスワンが推測した。そこから導くとトンガリは本能的にならず、理性的な状態だったといえる。そしてトンガリが手にした秘宝玉は、理性の秘宝玉だった。それを考慮すると、トンガリの理性に、理性の秘宝玉が反応して所有者になったのではないかと思ったんだ」


 ロードが言う。


「なるほど、それが秘宝玉に選ばれる方法か……だったらこの俺の秘宝玉でも出来なくもないなぁ」


 ハズレが自分の秘宝玉を見て言う。


「こんな町中で取り出さないでください! 悪い人に目を付けられますよ!」


 ドノミが注意する。


「おい、かかし、そいつは秘宝玉の正体を知らないと選ばれないってことじゃないか? どうやって秘宝玉の大事なソレを知ることが出来るんだ?」


 グラスが訊く。


「それは分からない。また情報集めだ」


 ロードが道を歩いていく。


 まだまだ、ハズレやグラスが秘宝玉を使うには遠そうだった。


 その時、木の杖にしがみ付きながら歩いてくる男性がいた。


 そしてロードの前に辿り着くと、バタンと倒れる。


「どうした? しっかりしろ」


 ロードが傍に駆け寄ると、


「そこの善良そうな人、オレに食べ物をくれないか?」


 倒れた男性がロードに向かって食べ物を要求してきた。

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