第427話 トンガリとバグバニッシャーの考えの違い
トンガリが魔王バグバニッシャーを睨む。
会場と観客席のスライム達が本能の赴くままケンカしていた。
「貴様、何故魔物の本能が働かない……秘宝玉の力をどうやって退けている」
魔王バグバニッシャーが訊く。
「うるさい! そんなことよりみんなを戻せ! さもないと体当たりするぞ!」
魔物の本能を駆り立てるはずのこの状況で、トンガリは平静さを取っていた。
この時、
(ト、トンガリ、どうして――本能の秘宝玉の力が効いてないの?)
スワンは疑問に思った。
「フフフ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!! 体当たり!? そんな攻撃でこの魔王バグバニッシャー様を本気で倒せるつもりでいるのか? デフォルメスライムごときが!」
「戻さないつもりだなぁ! 行くぞ! たぁーーーーーー!!」
トンガリが階段を登って壇上にいる魔王に体当たりをしに行くが、卵の殻の中から腕を出してそれを止めるバグバニッシャー。
「所詮はデフォルメ……最下級のスライム族だ!」
トンガリを腕を使って投げ飛ばす。
「うわああああああ!!」
ゴロゴロと会場を転がって傷だらけになるトンガリ。
「水霊の腕!」
スワンが会場の周りにあった水を使い、魔王に向かって水の腕を振るう。
「おっと、人間が精霊の術を使うのか? それもまた一興」
水霊の腕と卵の殻から出ている腕が、何度か拳を交える。
「トンガリ、大丈夫?」
スワンが傍に駆け寄る。
「う、うん、って誰?」
「スワン、騙してごめんね本当は私人間なんだ……」
「うそ、ヒューマンなの?」
トンガリが驚いたとき、スワンの出した水の腕がはじけ飛んだ。バグバニッシャーの腕の方が強かったらしい。
「水霊の祝福!」
水しぶきがそのまま魔王にめがけて弾丸のように連射される。その水をバグバニッシャーは卵の殻で防いだ。
「甘い! 水霊の抱擁!!」
水しぶきはバグバニッシャーの周りで漂い、頃合いを見て水全体がバグバニッシャーを包み込む。
「これで終わ――――」
水圧で圧殺しようとしたその時――
魔王バグバニッシャーは手で階段を掴み、腕を振るって身体を水の外に出した。
バグバニッシャーがスワンたちと同じ会場の方に立つ。
「おい、そこのシンプル系、お前は何故この魔王祭に参加したんだ?」
「な、何でって、皆を幸せにする。世界を平和にする。そんな魔王に憧れたからだ」
「幸せ? 平和? それでも魔物か? ここの連中は――世界を壊し、皆を不幸にするのが魔物の仕事なんだよ」
「そ、そんなわけがない」
「だったら回りをよく見てみろ! スライム同士で争ってるだろう。ケンカしているだろう?」
「それはお前が何かしたからだ」
「ああ、確かにそうだが、考えても見ろ! この光景を見て気が付かないか? これが俺様たち魔物の正体だ。常に争い、皆を不幸にするんだ!」
「違う! 皆お前に何かされただけだ! 本当はこんなことしたくないんだ。家族と友達とケンカして何になる! そんな世界楽しいわけがないだろ!」
トンガリは自分の意見をしっかり伝えた。
「フハハハハハ、ハハハハ、ハハハ、ハハ、ハ、はぁ~~、お前さぁうざいよ」
魔王バグバニッシャーはその本性を現した。ウーパールーパーとクモを足したような丸い目玉に大きな口、背中からはなん十本もの触手が生えている。全長8メートルぐらいある。
「ひぃーーーー! そ、そんなに大きくなったって怖くなんかないぞ!」
トンガリはバグバニッシャーに向かって体当たりしていった。
「トンガリ帽子ぃ~~~~食われろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「う、うわ――――――」
トンガリがバクンと魔王バグバニッシャーに食われてしまった。
「ト、トンガリーーーー!!」
スワンが水の腕を二本出現させるも、バグバニッシャーの触手に簡単に振り払われた。そして――――
「精霊ぃ~~~~ゲッーーーートオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
バグバニッシャーがスワンを丸のみにしようとした時――
背中に赤い竜の爪撃が当たった。
「ウゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!」
魔王バグバニッシャーが、元の卵の殻を被るスライムに戻っていった。
そして、スワンの目の前に一人の男が到着した。
「スワン状況はどうなってる?」
ロードが魔王バグバニッシャーを警戒しながら訊く。




