第426話 魔王バグバニッシャーの秘宝玉
秘宝玉を奪おうとした密猟団フットチームは新魔王バグバニッシャーに食べられてしまった。
「さぁ、新魔王の前にひざまずくんだ! スライムの大衆たちよ!」
「「「は、ははーーーー」」」
ノッポ大臣並びに衛兵たちはその場にひざまずく。
「ははは、大衆よどうした? 俺様の力見たであろう? アレこそ秘宝玉の力、ひざまずかないのであれば、先ほどの狼藉者の様に食らうだけだ」
『『『は、ははーーーー』』』
観客たちはひざまずいた。
しかし、ただ二人ひざまずかないものがいた。スワンとトンガリである。
「――――!? そこの水色スライム、貴様もひざまずけ……」
「は、はい」
トンガリは新魔王に従った。
「フハハハハハハハ、絶景絶景、これで俺様はこの異世界で魔王になったのだ!」
魔王バグバニッシャーは笑う。
「あなた何者、ただのスライムじゃない、さっきの化物は何!?」
ただ一人、宙を飛ぶスワンが魔王相手に意見していた。
「ん? 何奴だ? まぁいいが、まずは名を名乗れ」
「私はスワン」
「スワンか……見たところ魔力を感じないが貴様こそ何者だ?」
「私は精霊、魔物じゃない」
「ほう……精霊か……面白い、衛兵たちその鳥を捕えよ!」
魔王バグバニッシャーが早速スライム達に命令する。
「えっ、捕える?」「そんなことしてどうするつもりです?」
「魔王の言うことが聞けんのか?」
魔王バグバニッシャーは命令を遂行しなかった衛兵たちを、腕を出して取り込んだ。
「はわっ!」
ティアーラ姫が絶叫を上げそうになった。
「新魔王様何たることを――」
ノッポ大臣が困惑する。
「フン、何をしようが魔王である俺様にお前たちは逆らってはならない。そういう掟の魔王祭だろ?」
「は、ははーーーーいかにも」
「あなた何者? 本当にスライム?」
「スライムだとも、ただオレはこいつらとは違うスライム魔王だがな……」
この時、
(どういうことさっきの化物は何? アレがドノミさんの言っていた理性の秘宝玉の力なの)
スワンはそう考えた。
「あなた、どこで秘宝玉の使い方を習ったの?」
スワンが訊いてみる。
「フハハハハハハハ、秘宝玉か……これのことか? これはオレが生まれたときから使える代物だ」
バグバニッシャーは黒く輝く秘宝玉を見せる。
「生まれながらって、あなたまさかその秘宝玉――――」
「おっと、おしゃべりの前にこいつを発動させねばな、他人の耳に入ったら魔王でいられなくなる。――本能のままに動け魔物たちよ!」
バグバニッシャーがそう言うと会場にいた者たちや観客席の者たちの様子が変になる。
「があああああ!」「うおおおおおおお!」「ぎゃあああああああ!」
スライム達は突然雄叫びを上げた。
「――――!? この感じ、暴走!」
「暴走ではない。本能の赴くまま行動させているだけだ」
「一連のスライムや魔物の暴走はあなたの仕業だったわけ!?」
「ん? 貴様、本能のままに動き回るスライムを見たのか? ならば教えてやろう。この秘宝玉は本能の秘宝玉。あらゆる生命体を生まれ持った本能のまま動かす効果がある」
「本能の秘宝玉!? 理性の秘宝玉はどうしたの!?」
「ん? ああ、もしかして選定で使われた秘宝玉のことか? アレなら俺様が身体の内側に取り込んだ。本来秘宝玉とは一生命体に一つまでしか扱えない。だが、いずれ俺様にも眷属使魔が出来る。その時までこの理性の秘宝玉とやらは大事にしまっておこう」
「何が目的、こんなにスライムを暴走させて、あなたの言うことなんて聞かないんじゃない?」
スワンが鋭いところを突く。
「フハハハハハハハ、まさか俺様が何の意味もなく暴走させていると思っているのか?」
このバグバニッシャーの発言でスワンはあることを思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇
高台の上。
「スワンさん。ベラッタさんたちとの会話の結果、スライム達の暴走は秘宝玉による可能性が高いです。しかもこの暴走は重症化すると最終的に有害な魔物化になり、他の魔物たちに致命傷を与える傷を作るほど恐ろしくなるらしいんです。見かけたら、近づかないようにしてください」
ドノミが言った。
◆ ◆ ◆ ◆
「お前の狙いは有害な魔物化か」
スワンの表情がキリッとする。
「そうだ! こんな異世界だが魔物は魔物、隠れた本能の中に魔物としての殺害本能や支配本能や捕食本能を持つ奴らがいる。それらを覚醒させ魔界を作るのが俺様の目的だ」
「だったら、お前は私たちの敵だ!」
スワンが人間の姿に戻る。そして精霊の術を発動させようとした時、
「ウィング系……」
「ちょっ! 何!」
複数のウィング系がスワンにまとわりつき術の発動を止められる。
「ほう、正体は人間だったか? 面白い衛兵たちに捕らえさせて俺様のペットにしてやろう」
魔王バグバニッシャーが衛兵たちを差し向けるが、
「必殺! 体当たりーーーー!」
トンガリがスワンにまとわりつくスライム達をぶっ飛ばした。
「ト、トンガリ?」
スワンは驚いた。
「ん? 貴様、何故魔物のくせに本能のままに動かない」
「皆を元に戻せ!」
トンガリは魔王バグバニッシャーを敵と認識し立ちふさがった。




