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第425話 フットチーム全滅

 ロードたちは高台で見張りをしていた。いつ密猟団が来てもいいよう空を見張っていた。彼らは特殊な機械で飛んで来るからだ。


「――――!! オイ、ロード双眼鏡貸してくれ!」


 ハズレがロードに言う。双眼鏡を覗き込みある座標を見る。


「見つけたか?」


 ロードが訊く。


「ああ、見つけた」


「何人います?」


 ドノミが訊く。


「メンバーは4人――――おっ、一人動いた! ホーン魔王国に向かってる!?」


「秘宝玉が狙いか――――」


 ロードがたちどころに走り出すが、


「待てロード――! 今は動くな秘宝玉を奪わせた後に動かないと逃げられるだけだ。ここにいれば奴らがどの方向に向かうかもわかる。追うならそれからでも遅くはない」


 ハズレが言うが、


「ドノミさんにあんな暴力をふるう連中だぞ! スライム達に何をするか分からない、オレはいく。屋根伝いなら空も見やすいし、見失うことはないだろう!?」


「それはそうか……」


 ハズレが納得する。そしてロードは走り出す。


「ロードさんくれぐれもトンガリさんの前には顔を出さないでくださいねーー!!」


 ドノミが叫ぶがロードはもう100メートル先を走っていた。


「たぶん、無駄だな……」


「わ、私も行きます」


 ドノミが走り出す。


「お、おい、いいのかスライム達に顔を見られて――――」


 追いかけるハズレ。


「フン」


 走り出すグラス。


 この時、

(アイツら、管理局のルールを破るのか? どうなっても知らないぞ)

 残されたベラッタはそう思った。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 ホーン魔王国・魔王城・会場。


 秘宝玉の選定式が行われていた。壇上に上がり、魔王宣言をした卵の殻を被ったスライムが自分こそが魔王と言って、黒色に輝く秘宝玉を掲げていた。

 そこに密猟団キャプテンメットが、掲げられた秘宝玉を手にして持ち去った。

 数秒間その場の時が止まったが、ホラー系スライムはついに本性を現し、自分を魔王バグバニッシャーと名乗った。


「俺様の秘宝玉を返せええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 バグバニッシャーが悲鳴混じりに叫んだ。


「――――!?」


 あまりの大声に観客席にいたスライム達はその場でうずくまった。ただトンガリはその異形な姿をした魔王を見ていた。


 この時、

(何あれ! 魔王バグバニッシャー? あんなスライム聞いたことない。アレは無害な魔物なの!? 状況的に悪いのはあの密猟団だけど……)

 スワンは知識ではなく知力を頼って考えた。


「――――!?」


 あまりの大声に振り返るリーダーメット。そしたら、大きな口が見えた。


「キャプテンパス!!」


 仲間のグロウが秘宝玉のパスを求めた。そしてキャプテンメットは致し方なく放り投げるが、魔王バグバニッシャーの狙いは変わらずキャプテンメットは食われてしまった。


「――――キャプテン!!」


 グロウが叫ぶが、魔王バグバニッシャーはグロウの持つ秘宝玉を見た。


「返せえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


「グロウ!!」


 マーアが秘宝玉をパスするよう、名前を呼んだ。グロウは仕方なく秘宝玉をパスして、大きな口を開けるバグバニッシャーの攻撃を避けたが、背中から伸びる触手に絡めとられそのまま体内に取り込まれた。


「あら、まったくなんなのこいつ!!」


 マーアが右手で空飛ぶボール状の機械、フットスターの取っ手を掴み、パドを確認すると秘宝玉をパスした。


「うい、秘宝玉! 秘宝玉!」


「さっさとずらかるわよ!」


 その時、マーアは背後の魔王バグバニッシャーに食べられた。この時パドは見た、口の中からもう一体の魔物が現れたように見えたが、それは同じ魔王バグバニッシャーだった。


「何こいつ、化け物!」


 パドは急いで逃げるが、口の中から次から次へと飛び出してくる新たなバグバニッシャーの速度に追いつかれなすすべもなく食われた。


 あっという間にフットチームは全滅した。


 そしてバグバニッシャーは口の中から飛び出した幾体ものバグバニッシャーを食べて戻していく。


 つまり、最初のバグバニッシャーは分身のようなものを口から吐き出して、その分身から新たな分身を口から現し続けてあたかも飛んでいるようにつなげていったのだ。そして、元のタマゴの殻を被ったスライムに戻ると、黒く輝く秘宝玉を掲げて、


「俺様が魔王バグバニッシャーだ!!」


 会場と観客席にいたスライム達が唖然として見ていた中、新たな魔王は高らかと宣言した。

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