第422話 最終試練、障害物競走
魔王祭は盛り上がりを見せていた。
観客は応援したり、励ましたりとても優しい。
会場に残った魔王祭参加者たちは残り37匹。ホラー系1匹、アニマル系20匹、ネイチャー系6匹、シンプル系10匹と1500名の参加者は、あっという間に退場していった。
「それでは、勝ち残った諸君! 集まりたまえ!」
衛兵長が魔王祭参加者を会場の中央に集める。
「何だ何だ?」「今度は何だ?」「おいカーテンが」
スライムたちの周りを囲むようにカーテンが引かれていった。
「では、最終試練を始める前に準備がある。しばらくここにいてもらう。それから説明をしよう。この最終試練の特別ルールを……」
衛兵長が話す。カーテンの向こうではガチャンガチャン、ゴゴゴゴと何かが噛み合ったり、動いたりする音が聞こえて来た。
この時、
(私まったく関係ないけど、ここにいていいのかな)
スワンはちょっといることが恥ずかしかった。
「最終試練は障害物競走! 7つの関門があるレース大会だ! いくつもの障害物を突破して、ゴールまで辿り着けば勝利となる」
「障害物競走?」「レースするのか?」「ゴールまで辿り着けばいいのか」「ちょっと待てレースなんだろ?」「勝者は一匹だけになるじゃないか」「そうだ……そうだよ!」「ていうことは秘宝玉の選定は一匹しか受けられないって言うのか?」
魔王祭参加者たちがざわめく。
「まぁまぁ、話は最後まで聞いて、この時計を見てくれ!」
衛兵長がスライム達を鎮めさせる。
「時計?」「12時5分前だぞ」「それと最終試練に何か関係があるのか?」「でも止まってるぞ」
スライム達は言う。
「どういう意味のある時計なんですか?」
トンガリが初めて衛兵長に話しかけた。
この時、
(トンガリが皆の前で自分の意見を言うなんて……)
スワンはトンガリの成長に驚いた。
「うん! 少年よく訊いてくれた。この最終試練は時間制限せいなのだ。それも5分。12時になったタイミングでゴールしてなければ、失格となる。秘宝玉選定には出られない」
衛兵長が言う。
「ゴールしてなければ?」「それじゃあ一匹だけが選定に参加できるってルールじゃないのか」
スライム達が納得する。
「しかし、この障害物競走には、もう一つのルールがある。先にゴールした者から秘宝玉選定に出られるのだ! つまりこの勝負は魔王選定の本番ともいえる競争なのだ!」
衛兵長が言う。
「ゴールした者から?」「つまり1番が秘宝玉の選定に1番で出られる?」「そういうルールか」
またもスライム達は納得する。
「衛兵長準備が整いました」
1匹の衛兵が言う。
「よし、ではカーテンを開ける!」
バサッとカーテンが開かれる。すると飛び込んだ光景はレース場が会場の周りに張り巡らされた。
レース場には様々な障害物があった。
「さぁ! スタート地点へ並ぶんだ! 秘宝玉の選定は早い者勝ち、秘宝玉に選ばれればその時点で魔王誕生! 魔王になりたくば、1番になるのだ!」
衛兵長がスライム達にスタート地点に並ぶよう言う。
「よっしゃーー行くぞ!」「オレが一位を取って選定に挑む」「挑んで魔王だーー!」
アニマル系スライム達がスタートラインへ進む。
コース上は会場の周りをぐるっと半回りするくらいの距離があった。
「トンガリ、最後の試練だから、頑張って」
「うん!」
トンガリは自信満々な顔でスタートラインに向かった。
この時、
(トンガリ、成長したね)
スワンは感動していた。
卵の殻を被ったスライムも、10メートル級のビッグスライムも位置に着く。
「皆さん揃いましたね」
スタートの合図を準備するスライムが言った。
この時、
(トンガリ、魔王になって……)
祈るスワン。
位置に着く、37名のスライム。制限時間は5分。その間にゴールしなくてはならないだけでなく。一番を狙わねば、秘宝玉の選定に出る機会も奪われる。誰もが真剣になるレース。
その誰にも負けられない障害物競走が今始まる。




