第414話 おはようの時間
ホーン魔王国。
気持ちのいい朝。
とある宿屋。
ベッドで気持ちよさそうに眠るトンガリ。
どこか顔がニヤけていた。
「トンガリ、トンガリ」
女性の声がする。スワンの声だ。
「~~~~ん? ふあ~~~~」
起き上がって大きなあくびをするトンガリ。
「目が覚めた?」
「だ~~れ? ここどこ?」
「トンガリ、あなたは魔王祭に出場するためにホーン魔王国に来たの」
「ここ、ホーン魔王国なのか?」
「そう、そして私は旅仲間のスワン。ここまで一緒に旅をしてレベル50にまで上がったじゃない」
「えっ! お前がオレの仲間?」
「そう……忘れちゃった?」
「うん、そうかもしれない。ごめんなさい」
「…………謝らなくていいよ。それより食堂に行って朝食をしっかりとって、エネルギー補給で魔王祭に挑もう」
「うん! わかった! えっと、誰?」
「名前はスワン」
「うん! わかった! ありがとスワン」
タタタッと扉へ向かい、廊下に出るトンガリだった。
「………………ドノミさん、これでいいんだよね」
この時、
(スワンさん、トンガリさんは長いことロードさんたちと接して来ました。記憶を消し続けてここまでやって来ましたが、そろそろ薬に対する免疫ができるかもしれません。そうすると、私たちのことを忘れられない状態になります。ですからこの注射を最後にロードさんたちとはもう二度と合わせないでください)
スワンはドノミの語る重大な規則を思い出した。
「…………ロード、ハズレ、グラス、いまどうしてるかなぁ」
スワンも部屋を後にして食堂に向かう。
◆ ◆ ◆ ◆
ベラッタのテント近隣・林の中。
「ん……ん?」
ロードは目を覚ました。ハンモックから身を投げ出す。
「おはようございますロードさん」
ドノミが挨拶してきた。
「ああ、おはようドノミさん。それは?」
挨拶早々、ロードはドノミの持っていた巻かれた紙を見る。
「えっと、これはこの辺りの地図です。今日は魔王祭、密猟団が現れるかもしれませんから、景色のいい高い場所を探していたんです」
「あったのか?」
「はい、ここから南南西にいい高台があります。そこからならホーン魔王国も見渡せますし、空飛ぶ密猟団も確認しやすそうです。この地図はベラッタ氏が書かれて借りたものです。それと――」
「それと?」
「ベラッタ氏も高台からスライム達の様子を確認したいそうです」
「確認ってどうやって……遠すぎて見えないんじゃないのか?」
「双眼鏡って知ってます?」
「知らない」
「遠くを見るための道具です。ロードさんたちも借りればどういう代物か分かります」
「……まぁ、ついて来てもいいけど」
「では、ベラッタ氏にはそう報告しておきます。それとそろそろハズレさんとグラスさんを起こしてください。魔王祭が始まるまでには高台に移動したいです。朝食も済ませなくてはいけませんし……」
「分かった今起こすよ――――アオーーーーン!!」
ロードはルロウ直伝の遠吠えをした。
「――オオカミ!!」
即座に起きたのはグラスだった。
「ん? なんだ? 今何か鳴き声がしなかったか?」
ハズレが起きた。
「おはようハズレ、グラス」
ロードが挨拶する。
「ん? ああ、もう朝か……」
ハズレが言う。
「オオカミは――!?」
グラスが問う。
「済まない、今のはオレの声だ……」
「ああん? んな紛らわしい声出すなよな――!!」
朝からうるさい声を放つ。
「お二方おはようございます」
「ん? ああ、おはようドノミさん」
「フン」
二人はドノミを見て、ハンモックから身を投げ出した。
「朝食だとさ……」
「そうか……で、早起きした二人は何か話し込んでいたか?」
「今日のプランを話していました。では私はベラッタ氏に朝食ですと伝えてきますね」
その場を立ち去るドノミ。
「コノヤローー驚かせるな!」
グラスがロードに向かって吠えた。
「ん? そんなに怒ることか?」
「ロード、動物と交流世界で育ったのはいいけど、普通オオカミは人を襲ってくるんだぞ」
「どういうことだ? 何故襲う?」
「オレたちが豚や牛を食べるようにオオカミも人間を食べるんだよ」
「そうなのか!?」
「……オレより田舎世界育ちじゃねーか」
グラスがツッコんだ。
かくして朝食を迎え、南南西の高台に行く準備をするロードたちだった。




