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第412話 異常の可能性はどれ?

 ベラッタが段階を分けてスライム達の異常をロードたちに伝えた。


「最終段階で有害になるなんて!?」


 ロードが驚く。


「……………………こんなものは憶測だ」


 ベラッタは歯切れ悪く言うが、その表情は答えを持っているような顔をしていた。


「有害な魔物ってどうしてそんな事態に? 病気でもなければ、どのような現象で暴走してるんですか!?」


 ドノミが信じられないという口調で話す。


「それを今から調べるんだ。さっきは籠から出して失敗したが、今度は籠に入れたまま調べる。だから――――」


 ベラッタがロードたちにテントから出るように促そうとしたとき、


「ホルンも暴走していた可能性がある」


 ハズレが言った。


「――何だって!? ホルンってあの小さな鹿みたいな魔物のことか!? どこだどこでそれを見た!」


 ベラッタが驚く。


「本当ですかハズレさん!?」


 ドノミも驚いた。


「ああ、ケケケ山ってところで、ほらトンガリがホルンの角笛を持っていたろ? あの時ひと騒動あった。スワンが倒してはいけないって言うから気絶させてきたけど」


 ハズレが説明する。


「バカな、無害認定されている魔物が二種族も暴走するなんて……」


 ベラッタが椅子に座って頭を抱える。


「――まさか魔法!?」


 ドノミさんがロードたちが聞き慣れないことを言う。


「ありえない。無害認定を受けているスライム達には確かに魔力はあるが、それを形にするほど急速な進化をする文明じゃない。そもそもホルンはほとんど考える脳を持たない。詠唱と技術が必要な魔術や魔法は使えない」


「病気でもなければ、魔法でもない。それでは一体……」


「もう一つ可能性を見落としてる」


 ロードが言う。


「「「――――!!」」」


 一同がロードの方を見る。


「秘宝玉の力だ。誰かがスライム達を暴走させている可能性だってあるんじゃないか?」


 ロードが宣言する。


「そうか秘宝玉!?」


 ハズレがピンとくる。


「秘宝玉? まさか魔王祭で使われる秘宝玉のことを言っているのですか?」


 ドノミが訊く。


「そうじゃない。オレたち秘宝玉を持っているんだ」


 ロードが言う。


 この時、

(えーーそっちじゃないだろ)

 と思うハズレ。


「道の秘宝玉だったか?」


 ベラッタの顔つきが疑いに変わる。


「いや、オレの秘宝玉はそうだが……」


 ロードが話し辛そうに言う。


「道、他人の進むこれからの道を捻じ曲げたり、本来進む道から外して、外れた存在になる。十分あり得るな」


 ベラッタが言う。


「待ってください。ロードさんたちが来た時にはもうスライム達のケンカが始まっていました。同じく密猟団も来る前です。ロードさんたちが持っている秘宝玉は関係ないと思います」


 ドノミが疑いを晴らすが、


「ん? 来たってどういうことだ?」


 ベラッタが事情を訊く。


 するとドノミがロードたちと出会った経緯を説明する。



 ▼ ▼ ▼



 テントの中。


「なるほど……正規の方法でこの異世界にやって来たのか……オレは入界パスをちゃんと提示したからいいが、無断で入って来たなら捕まるぞ……」


 ベラッタは自分には関係ないので、忠告だけはしてくれた。


「ああ、今回の件が終わったら、しっかり処罰を受けるつもりだ」


 真面目なロードが言う。


「まぁ、密猟団を捕まえればその功績で処罰はま逃れられると思うけどな」


 ベラッタはまた憶測を言う。


「で、話を戻そう。最初にケンカを見たのは報告書通りの頃でいいんだな?」


「はい、間違いないです」


「となると、魔物狩り御一行様は白だ。そうすると異世界侵入者の方が怪しくなってくるな」


「この異世界において、今まで観測できた侵入者は今回の密猟団フットチームだけです」


「分からないぞ、ロード御一行の様に特殊な手段で異世界を渡り歩いてきたのかもしれないし」


「それは、確かに……」


 ドノミは納得した。どうやら説得力のある言葉は信じ込んでしまう人柄らしい。


 そこでハズレが会話に割り込む。


「オレたちの連れがマキショク病になった。魔気が原因と言われたし、それで暴走化した恐れはないか?」


「それも検査した。だが、何の異常もなかった。考えられるとして最も簡単な暴走方法は秘宝玉だ」


「だったら、まだオレたちの知らない誰かが秘宝玉を持ってこの事態を引き起こしてるのか?」


 ロードが考える。


「ドノミさん、拠点の人たちはどうだ? 一緒に働いてるんだろ。その中に怪しい人物とか居ないのか?」


「半年ほどこの異世界で勤めていますが、一緒に働いてる方々はそういう人たちには見えません」


 ドノミはキッパリ言う。


「同感だ。オレもここに来た時、出会ったがとても事件を起こすような人たちに見えなかったし、ドノミさんの報告する際も引き止めるだろう。犯人は別にいる」


 ベラッタが言う。


「じゃあ、もう一つの秘宝玉。魔王祭で使われる秘宝玉を誰かが手にしたという線は?」


 ハズレがもう一つの可能性を提示する。


「それはありえません」


 ドノミがきっぱり言う。


「何故だ? 一番可能性がありそうじゃないか……スライムの誰かが魔王祭に使われる秘宝玉を手にして、それを行使して、スライム達を暴走させる。祭りの前にもう秘宝玉が所有されている可能性だってあるだろう」


 ハズレがあり得そうなことを言うが、ドノミが首を横に振る。


「理性の秘宝玉。それがこの異世界にあるスライム達の魔王が手にする秘宝玉の名です」


 ドノミが言う。


「そう理性。つまり暴走とは真逆の効果を元ものだ」


 ベラッタが付け加える。


(理性の秘宝玉……か)


 ロードたちは議論の末、事態の真相がわからないまま夕暮れが来た。

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