第411話 デフォルメスライムの異常
「グアアアアアアアアアア!!」
籠に入れたスライムが雄叫びを上げる。
「どいてくれ」
ベラッタは机に置いてあった注射器を取り、襲ってきたスライムの入った籠に向かう。
「何のつもりだ?」
ロードが立ちふさがりる。
「睡眠剤が入ってる。眠らせるだけだ」
ベラッタがそう言うとロードはどいた。
そしてシンプル系スライムに注射器を撃ち込むと、スライムは眠ってしまった。
「その怪我は一体……?」
ドノミが恐る恐る訊いてみる。
「こいつに噛まれてできたものだ」
「そんな、デフォルメスライムにそんな強力な攻撃が出来るなんて――」
「スワンも言っていた。噛まれても大したことなかったと……」
テントに入って来たハズレが言う。続いてグラスも入る。
「こいつは第四段階まで異常が進行してる。普通のデフォルメスライムとは違う」
ベラッタが言う。
「第四段階?」
「とにかくその傷を治療しよう。椅子に座ってくれ、オレが治す」
ロードが言う。
「応急処置なら自分で出来る」
ベラッタが言う。
「違う。道の秘宝玉の力で治す」
ロードが包み隠さず言う。
「「――――!?」」
秘宝玉と訊いてドノミとベラッタが驚いた。
▼ ▼ ▼
ロードがベラッタの肩の傷口に手をかざすこと数分。
「これで完治だ」
ロードが力の発動を停止させる。
「驚きました。秘宝玉所持者を見るのは初めてです」
ドノミが言う。
「肩の調子を確かめてくれ……」
ロードが言う。
「ん? ううん……何とも、ないな」
肩を回すベラッタが異常なしという。
「それで、調査員さん何が起きたんだ?」
ハズレが訊く。
「……はぁ~~一人で調べたかったが、秘宝玉所有者がいるならその力を貸して欲しいところだ」
ベラッタがぼやく。
「分かった力を貸そう」
ロードは了承する。
「……ドノミさんの報告書を読んだ。スライム達のケンカが起きたと、温厚なスライムがケンカをするなんてって最初は読んだとき何かの間違いかと思った。だが、オレはここに来てある異変を感じた」
「異変?」
ドノミが訊く。
「どうも、ここのスライムは行動が活発すぎる」
「それは監察の結果ですか?」
「ああ、資料を読まなくても分かる。ここ近辺のスライム達は――」
「待った――それって魔王祭が近づいてるからじゃないのか?」
ハズレが異議を唱える。しかし、
「この異世界に来る前に、資料は読んでいる。もちろん魔王祭のことも知っている。それを踏まえても行動は活発だ」
「活発……(トンガリと最初出会った頃、体当たりしてきたのはもしかしてその影響か?)」
ロードが心の中で考えていると、
「その活発状態をオレは異常の第一段階と呼んでいる」
「第一段階、何かの病気ですか?」
ドノミが答えを訊いてみる。
「違う。そこのスライムから成分を少しばかり採取してわかったのは異常なしだった。病気の類じゃない」
「病気じゃないか……そうだ。段階があるのなら、第二段階はどういうものなんだ?」
ハズレが訊く。
「第二段階はそこのお嬢さんの書いた報告通り、ケンカだ……温厚なスライムがケンカをするなんてオレも聞いたことが無かった。初めは出世の為の嘘か何かだと思ったが、観察してそれが本当だった」
「……………………」
出世と訊いて黙り込むドノミ、下心があったことはロードだけが知っていた。
「じゃあ第三段階は暴走化か?」
ハズレが訊く。
「その通りだ……ただこの暴走化は気絶したときや、時間が経てば元に戻るみたいだ。ここまでの症状なら安心できる。だが第四段階は違う。ここへ運んできた時は、ただの暴走と思って運んでたが、目を覚ますと暴れ出した。これは気絶しても治らないことを意味している。末期症状とオレは睨んでいる」
「末期症状……」
ロードがスライムの方を見る。スーースーーと眠りについてる。
「しかもこの末期症状ある異変が起きている。見えるだろこの血の量、シンプル系に本来は得ることのない牙と咀嚼力があるんだ。もしこのまま症状が進めば最終段階だ」
「最終段階?」
「デフォルメスライムが有害な魔物化する」
ベラッタは事の重大さを伝えた。




