第408話 とうとう到着、ホーン魔王国
数日後。
森の抜け道。
タタタッと道を進むロード一行。
とうとう長い森を抜けた。
「――!!」
ロードが遠目に建物があることに気づいた。
「よ、よーし見えてみたぞ! アレがホーン魔王国だ!」
トンガリにも見えたようで国の名を高らかに呼んでいた。
円筒の大きな建物がいくつも建ち並び、入り口となっている柵の門はスライム達の大行列だった。
「アレがホーン魔王国」
ロードが呟く。
「皆さんお疲れ様です」
ドノミが言う。
「やっと着いたか」
グラスが吐き捨てる。
「スワンも身体は大丈夫みたいだな」
ハズレが言う。
「うん」
マキショク病の症状も良くなり、目も見えるようになったスワンが頷く。
「いよいよ、着いた。オレもレベル50になった! できるぞーー! オレはできるぞーー! 魔王になれるぞ!」
トンガリが気合いを入れていた。
「気合入ってるなトンガリ」
ハズレが言う。
「レベル1だったトンガリが50になるなんて、何か泣けてきちゃう」
スワンが目元を抑える。
「……? 皆ーーどうしたんだ? 行こうぜーー」
先頭を行き、立ち止まるロードたちに気づいて言うトンガリ。
「……………………」
ロードたちは黙る。
「もしかして、オレが皆のこと忘れたこと怒ってる?」
「いや違うんだ……」
ロードが否定する。
「トンガリ、オレたちには別の用があるんだ。だからここから先へはいけない」
ハズレが説明する。
「スワン」
ロードが名前を呼ぶと、
「うん」
スワンは水の鳥へと姿を変貌させた。スライムサイズでこれなら人間だということはスライム達にバレない。
「でも大丈夫、私がついてるから」
水雲鳥になったスワンがトンガリの傍らに飛ぶ。
「おお~~~~、スワンはどこ行ったーーどこ行ったーー」
「私、実は鳥になれるの……」
「じゃあトンガリ行けるか?」
ロードがしゃがみ込んで訊く。そしてトンガリの頭を撫でる。
「うん、多分、もう50だからだいぶ強くなったんだよね」
「ああ、強くなった」
「おう! 行ってくる皆ーー!」
トンガリはホーン魔王国へと向かう。スワンもスゥーーーーッとついて行く。
「トンガリーー他の奴らに負けるなよーー」
ハズレが声援を送った。
トンガリの前には川と橋があった。しかし、最初の頃の様に止まらず、ロードたちのように普通に渡れた。
「ごめんなさい。ついて行ってあげたかったですよね?」
ドノミが謝る。
「仕方ない、この世界に迷惑はかけられない。スライム達に人間の姿を見られるのは不味いんだろう?」
ロードは不服に思っていなかった。
「こっちはどこか高い所から見守るさ」
ハズレが言う。
「そうですか……――――!!!?」
その時、ドノミは空を見た。そして一羽の鳥を見つけた。その足に手紙が括りつけてあった。
ドノミは走り出した。その鳥を追いかけるのではなく。鳥が飛んできた方向へ向かうように、
「どうしたドノミさん!」
ロードが訊く。
「ついて来てください! やっと見つけました!」
走るドノミにロード一行も追いかけに行く。
◆ ◆ ◆ ◆
ホーン魔王国。
魔王祭が明日に控えてるせいか、国中はお祭り騒ぎだった。
スライムの様々な種族がそこにいて、祭りを楽しんでいる。
魔物はスライム達だけではなかった、しかしそれらの魔物も無害な魔物だった。
「わーーーー」
トンガリは始めてみる巨大な建物や、お祭りに感激していた。
「誰か夫を知りませんかーー?」
ある帽子を被ったスライムが訊いていた。
「どうしたんだ?」
「いなくなってしまったんです知りませんか?」
「それは一大事だ皆で探そう」
「探そう」
「誰か分からないけど探そう」
スライム達が相談していた。
「まさか密猟団が、もう来たんじゃ……どうしよう秘宝玉の近くにいた方がいいのかな……」
スワンが考える。
「どうしたんだスワン?」
トンガリが訊いてくる。
「トンガリ、魔王祭は明日だよね?」
「うん」
「けど、一応会場にだけは視察に行こう」
「いいよ」
トンガリとスワンは魔王祭本会場を目指す。
▼ ▼ ▼
ホーン魔王国・大通り。
「ようこそ、ようこそ」「魔王祭選抜戦に参加の方はどうぞ」
旗を持ってチラシ配りをしているスライム達の道を抜ける。その際チラシを貰うスワンとトンガリ。
「おいしいね」「うんそうだね」
ストローで飲み物を飲むスライム達を見かける。スワンはとても美味しそうなもので立ち寄りたかったが、急いでいたのでやめた。
ポフーーポフーーっとホルンの角笛を吹き、チャラチャラッとタンバリンを鳴らすスライム達がいた。
「今流行の最新帽子だよーーさぁこれを被って明日の魔王祭の応援だーー」
シンプル系のスライムが帽子屋を経営していた。
「つくった」「つくったつくった」「つくった」
クモのような魔物がそう言っていた。社員なのだ。
「通るよーーオオーレムさんが通るよーー」
ドスンドスンと人間大もある魔物が道を横切る。
「はーい、皆はぐれないようにねーー」
子供たちを引率する旗を持った先生が言う。
「ハッ!」「ヘイ!」
五匹のスライムが積み重なる芸がやっていた。周囲のスライム達は歓声を上げた。その芸の名はスライムタワー。
「うわっ――!」
スワンが卵の殻に身を包んだスライムとぶつかった。
「ご、ごめんなさい!」
スワンが謝る。
「…………」
何かブツブツ言いながらその場から去って行くスライムだった。
「わーーーー着いたよ! 見てスワン!」
トンガリがスワンを呼ぶ。
「――――!!」
「おっきな城だーー魔王になったらあそこに住むんだーー!!」
魔王となったものが住む城、そして魔王祭が行われる城。
(このスライム達のお祭り騒ぎなら、密猟団はまだ来てないかな)
スワンはとりあえず一安心した。




