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第407話 子守歌を歌いましょう

 ドノミはスライム達のケンカを見ていた。種類はシンプル系だった。


(スライムがケンカしてる。そんなことはないって、報告書にはあったのに……報告書が間違っているわけないし、だとしたら何かのはずみかな、なら、放っておいてもいいか)


 その時ドノミは思った。


(待って――これがいけないんじゃないの……この正しいと思うことが間違ってるの? そうだ! 報告書だって、あのやる気のない人たちが書いたものだ。きっと間違ってる。だとしたら私が報告しないと、これはきっと異常なんだ。すぐに本部に――)


 ドノミは手持ちのメモ帳にメモを取る。


(きっとこれが正しい。だって私は一番なんだから、今考えてることが正しい)


 メモを取ったドノミは拠点に向けて走りだす。


(そうだ、この正しさが証明されれば、きっと私はもっと世界を守れるような場所を管理させてもらえる)


 ドノミの心に火がついた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 深夜の森。

 丸太の上でドノミの話を聞くロード。


「情けない話でしょう? ロードさん、世界を守ることを目標にして来たのに……そのスライム達の異常が出来たことに、私は喜んでいるんです。そして、あなた達が密猟団を捕まえれば、私の評価も上がるって醜いことを考えて……」


 ドノミが白状する。


「……………………」


 ロードは表情を変えない。


「でもロードさんたちを見ていると……これも間違ってるのかなって、だったら私はここにいるしかないのかなって……なら私の今までしてきたことは――――」


 涙を含んだ震える声をドノミは発していた。


「――まだ、ドノミさんの道は続いてるよ」


 ロードが言う。


「――――!」


「頑張って……その努力は無駄なんかじゃない、いつかあなたを助ける為の力になるから」


 ロードはささやいた。


「……………………」


 ドノミはロードの穏やかな表情を見た。


「ごめん! ドノミさんの言葉しか出てこなかった……でも、これを届けたかった。ドノミさんが正しいか、間違っているのか、オレにはわからないけど、どんな思惑があってもスライム達を守ることに繋がっているのなら、オレたちと一緒のものを目指しているはずだ。だから今は一緒に密猟団を捕まえて、スライム達の異常を治める方法を探そう……その……そうだ! 今までのその努力はこれから試されるんだ。今がそのいつかかも……」


 ドノミを元気づける為ではない、勇気づけるための言葉を探したロードだった。


「……………………お上手ですね、相談に乗るの」


 ドノミは緩やかな表情で口角を少し釣り上げた。


「オレも同じような事を昔されたような気がする。でも相談に乗るだけじゃないぞ、ちゃんと密猟団も捕まえる協力もする」


「ええ、そうですね。今はただ、この仕事を頑張りましょう」


「……ところで眠れないんだけど」


「ですよね! 熱くなるようなこと言ってごめんなさい!」


「いや、それはいいけど……」


「そうですね~~、私のお母さんが歌ってくれた、子守歌くらいなら私でも……効果のほどは分かりませんが……」


「試してみてくれ……」


「えっ、歌ですか? うまく歌えるかな……」


「今こそ努力を試す時さ」


「では歌います」


「うん」


「う、歌いますね」


「うん」


 ドノミが歌うために深呼吸する。そして――


 まんまるお月様が顔出して~~

 にゃん子もぴょん子も眠りつく~~

 あなたも眠るのいい子だね~~

 ふわふわベッドはあったまるよ~~

 ふわふわマクラは気持ちいよ~~

 ママのお手ては魔法をかける~~

 撫でて撫でていい夢見てね~~

 スーーヤーースーーヤーー

 スーーヤーースーーヤーー

 さぁ~~安心して~~ママはここにいるから~~

 一緒に眠ろう、眠りましょう~~

 スーーヤーースーーヤーー

 スーーヤーースーーヤーー


「スーーヤ――」


 トンとドノミの肩にロードの頭が置かれる。


「おやすみなさーい」


 ドノミが歌い終える。


 この時、

(私はまだ道の途中か……そうだと……いいな、それならまだ頑張れる)

(さぁ明日も仕事だドノミ・モズローネスト)

(またスライムの異世界を守り、密猟団を捕まえて、異常を解決し、その後は――)

(その後はロードさんたちを連行する。それが私の仕事……)

(子供の頃から夢見た管理の仕事)


 左手でガッツポーズを作るドノミはまんまるお月様を見て硬く決意する。


 ロードはドノミの肩を借り、スーースーーと寝息を立てて眠っていた。

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