第403話 疲れる管理局のお仕事
温泉地。
足湯につけるスワン。バシャバシャと足を動かし遊んでいた。
「スワンさん、失礼しますね……」
裸体にバスタオルを巻いてきたドノミが言う。長い髪も結っている。
「あっ、別に私に気を遣わなくても……」
髪を結い、バスタオル姿のスワンが言う。
「いえ、これでも仕事中ですから……」
温泉に足からゆっくり入り、ザブッと肩までつかるドノミ。
この時、
(真面目だなーーやっぱり私たちの事、見逃してくれないなーー)
スワンは思った。
その時、
「あーーーーーー、ちぃぃーーーー」
ドノミさんの表情が、あまりの温泉の気持ちよさに溶けていた。
「えっ……」
スワンがドノミの癒される声を聞いていた。
「――――!!!!」
ドノミは我に返る。
「ドノミさん、お風呂好きなんだーー」
スワンが話しかける。
「コホン、ま、まぁ……失礼しました。すみません今のは忘れてください」
「いいよいいよ、ゆっくりしてて」
「そ、そうですか? では少しだけ……(あ~~~~、溶ける~~~~)」
ドノミはゆったりと温泉に浸かることにした。
この時、
(……よし、私もドノミさんに付き合って、少しでも信用を得よう)
スワンも温泉に浸かることにした。
「ふーーーー、ん?」
スワンが隣のドノミを見る。
スーースーーと吐息が聞こえて来た。
「って、ドノミさん寝ちゃったんだ」
スワンは静かに空を見上げる。
◆ ◆ ◆ ◆
深夜の森。
ハズレもスワンもグラスもトンガリも眠った頃。
ロードは目を覚まし散歩をしていた。
そして、丸太の上に腰掛けるドノミの姿を見つけた。
「眠れないのかドノミさん」
「……!! ええ、温泉に入っていたら眠ってしまったらしくて、目が覚めてしまいました」
ドノミはマニュアルを読んでいたようだった。
ロードはドノミの隣に腰掛ける。
「ロードさんは?」
「んーーオレもだ元々、寝付きにくい体質なんだ」
「いけませんよ……しっかり眠らないと、突然倒れたりするんですよ……」
「そうか……でも、眠れないんだよなーー何かいい方法はないか?」
「スライムの数を数えてみては?」
「あーー子供の頃やっていた。効果はなかったが……」
「では、そうですねーー、退屈な話でも聞くと眠れるかもしれませんが……」
「退屈な話?」
「例えば私たちの仕事の話とか……退屈に感じるんじゃないですか?」
「話して見てくれ……」
ロードの興味にドノミはぱたんとマニュアルを閉じる。
「管理局……それは無限大にある世界の中でひときわ輝かしい、我々人間にとって失ってはいけない世界をそのまま維持し守る仕事です」
「この無限にある世界の中いくつもの世界が今もその形を変えていきます」
「その原因は様々です。他世界の人間が関わってその世界の文明が飛躍的に進化してしまったり」
「魔物たちが世界を蹂躙して、その異世界の文明が滅んだり」
「何かしらの災害で異世界が大変な危機にあって、その異世界の生き物たちが絶滅してしまったり」
「そういう異常を起こさない。あるいは避けたり、防いだりして」
「その異世界の元形を守るという仕事です」
「現在登録されている異世界は十数万を超えていて……」
「観光異世界としての案内や映像も記録なども私たちの役割」
「…………眠れません?」
突然話を切ってドノミが訊いてきた。
「退屈じゃない素晴らしい仕事の話だ。とても眠れそうにない」
ロードは興味津々に聞いていた。
「は、はーー」
ドノミが面食らう。
「世界を守る。そうするとオレたちの存在はやっぱり迷惑か……?」
ロードが呟く。
「ロードさんたちがいなければスライムの世界に大きな被害はありました。魔物とか密猟団とか……」
「そうか、じゃあ、お互いスライムを守るために頑張ろう」
「はい、頑張りましょう」
ロードとドノミの心の距離が縮まった瞬間だった。
「さて、どうやって眠ろうか……」
「ロードさん、退屈な話がてら私の話を聞いてくれませんか?」
「――!!」
「迷っているんです。私はこのままでいいのか、どうか。ぜひロードさんに相談に乗っていただきたいんです」
「オレが? わかった話して見てくれ……頑張って考えてみるから……」
「はい」
ドノミは話始めようとする。自分の過去を、今の自分がどうやってできたのかを……




