第399話 ロードとトンガリの挑戦
ロードとトンガリはピラメイルーネに挑もうとしていた。
「ロードロード! ドノミが食べられた!」
トンガリが目の見えないロードに報告する。
「……トンガリ頼む、オレの目になってくれ」
「ど、どうすればいいのか分からないよ!」
狼狽えるトンガリだったがその時、ロードの足元に触手が近づいて来ていた。
「――!! うわあ!! 来たーー!!」
トンガリが叫ぶと、ロードが足元まで近づいて来た触手を両手の剣でズババッと斬った。
「え!?」
トンガリが目の見えないロードの行動に驚く。
(ドノミさん、光球は破壊したと言っていたな。なら、弱点は露出されているはず……ミチルに任せて一気に刺すか? いや、どう動いてくれるか分からない。万が一中にいる皆を刺してしまうこともある。ここは確実にオレがやるしかない。その為にはトンガリの協力は必要不可欠だ)
「うわああああああああああ!!」
トンガリが叫ぶことで、ロードは迫っている触手に気づいて足元を斬りつける。そうすると斬られた触手は霧散化していった。
「トンガリ奴はまだ目の前に居るな?」
「うん!」
「よし動いたら教えてくれ」
獲物の存在に気づいたピラメイルーネが、ロードたちに向かった触手を差し向ける。
「うわあーーーー!!」
出来る限り高速で二本の剣を振りまわし、触手を切り裂いていくロード。
バシャバシャッと水溜りを踏みしだき、少しづつ魔物との距離を縮めていく。
「わあーーーーーー!!」
迫る触手にビビるトンガリ。ロードの方はただ剣を振り回し斬り落とし、霧散化させていく。
「見えてるのかロード!?」
「見えてない。だが、正面にいるのなら来る方向は正面だ。そこで剣を振りまわす」
「でもいつ来るか分からないのに……」
「聞こえたからだよ。トンガリの声が……」
「わ!!」
その時またも足元に触手の束が迫っていた。ロードはその驚く声に反応して剣を振るっている。
「トンガリ、オレはもう引き返せない。あの魔物の中には皆がいる、このまま放っておくと、別の異世界に行かれて二度と会えなくなる。だから戦う。皆を助けようトンガリ」
「や、やれる、かなぁーー!!」
飛び出して来た触手に驚くトンガリ、ロードは目が見えないのに剣筋の速さだけで斬り落とした。
「そうだ! そんなふうに叫べばいい! 後はオレが何とかする。ドノミさんのおかげでもう目はやられない! 怖がらず安心して魔物を見るんだ!」
ロードは走り出した。
「目を離すな! 怖くなったら助けを、オレの名を叫べ!」
バシャバシャとロードが水溜りの上を走る。
「し、下下ーー!!」
トンガリが叫ぶと、ロードが反応して触手を斬る。
その時ピラメイルーネは身体全体を動かしてスーーーーッと移動していた。
「――あっ! 逃げてる」
「どっちだ!?」
「えっと、もうちょっと右! もうちょっと、あ、戻って――そこ前!」
トンガリがロードに指示を出す。
「まだ浮いているか!?」
「うん!!」
「落とすか――トンガリしっかりしがみつくんだぞ!!」
「うん!!」
「ミチル!!」
ロードは青い剣に宿る精霊の名を呼び、飛ぶ斬撃を発生させた。その斬撃はピラメイルーネの垂れ流しにされていた触手の束を根こそぎズバンと斬り落とした。そしてピラメイルーネがバシャ―ンと地面に落ちる。
(これで触手は全部切れたはず……)
「わあーーーー!!」
トンガリが叫んだ。そのおかげでロードは対処できた。
ガキキキン!! ロードの剣と接触した何かが甲高い音を発する。
ロードは後ろに下がって距離を取る。
「何だ! 今のは!?」
「トゲトゲが――!!」
(トゲ? 出会ったときに見たな……アレが伸びるか、発射されたのか? そんなの聞いたことが無いぞ――――いや待て、珍しい魔物だから全てはまだ判明してないんだ……厄介だ)
「怪我無いよな? トンガリ」
「うん!! でもロード――」
「いいんだ」
ロードは剣を構える。
「わぁ!!」
「またトゲトゲか!!」
「――違う、魔物があ!!」
トンガリは伝えられなかった。魔物が突撃してきたのを、
ドッとブヨブヨした体表に体当たりされ、吹っ飛ばされるロード。大きな貝殻の家に激突した。
「うわあーーロードォーー!!」
「大丈夫だトンガリ、すぐ立て直す」
ロードが起き上がろうとした時、
「う、上!!」
トンガリが魔物の位置を報せる。
「――――!! な、何!?」
ズドンと今まで居た位置に飛び落ちるピラメイルーネ。
「こんな、大暴れする奴だったなんて――」
「来る!!」
トンガリの声は聞こえていた。しかしロードは動かない。
「――ロード!! 来るよ!!」
動かないのではない、動けなかったのだ。ピラメイルーネの触手に足を絡めとられていた。
(――な、もう触手が再生――)
ロードは赤い剣を捨てて、頭にいるトンガリを投げ飛ばした。
「うわあぁーーーー!!」
トンガリが投げ飛ばされる中、ガッと地面に突き刺さる赤い剣。
「があ!!」
魔物に体当たりされたロードの悲鳴が聞こえた。
「ロード!!」
しかしロードは青い剣ミチルの効果で空を飛んでいた。だが、今の体当たりが効いたのか、スルッと手元を滑らして水溜りの上にバシャッと落ちていく。
「ロード!!」
トンガリが叫んだが、そこには触手が張り巡らされていた。
「うわあ!! ――むぐぐぐう!!」
トンガリが触手に絡まれていく。
ロードの方はすぐに態勢を立て直し、手元に青い剣も戻ってきていた。
「くっ――ト、トンガリ――どこだぁーー!!」
ロードの呼びかけにトンガリは答えられなかった。
その口元を触手に絡まれていたからだ。




