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第397話 世にも珍しい魔物ピラメイルーネ

 ロードとドノミとトンガリは一旦、ドルフィーナに乗ってクラゲ型の魔物から離れた。


 村の外れまで来て、岩場に座るロード。ドノミが目の調子を見ていた。


「一時的に視力を失ったみたいですね……」


 ドノミが言う。


「今何とか治せないか?」


 ロードがダメもとで訊いてみる。


「いえ、私には難しいです。あなたの生命力の力はどうなんですか?」


 逆にドノミが問い返す。


「あの魔物の放つ光は特殊なんだ。出来ても時間が掛かると思う。多分あの光は毒に近いと思う。効果が薄れるまではこのままだ。例え回復させても毒は消えない。見えないままだ、一日はこのままのはず」


 ロードは流暢に説明する。


「あの魔物の事ご存じなんですか?」


 ドノミがロードの頬に手を当てて、様々な角度から視力を失った目を見ている。


「確か……クラゲのようなトゲがついた触手がたくさんあった奴だよな……?」


「はい」


「あわわわ……怖かったな~~」


 トンガリが言う。


「確かアレは……ピラメイルーネ見かけるのが珍しいとても希少な魔物だ。昔、育ち故郷の絵本で読んだことがある」


「ピラメイルーネ? 私は聞いていません……そんな魔物がこの異世界にいるなんて……」


「違うアレはここにいた魔物じゃない」


「どういう意味です?」


「ピラメイルーネは主に異空間を彷徨う魔物なんだ……そして別の世界へ入り込む力を持っている」


「――――!!」


 ドノミが驚く。


「それは1年おきぐらいで食料を探すからだ……侵入した異世界の生命体を体内にため込んで1年の食事を確保する。たぶんフィッシュ系も小魚もスワンたちも今は、アレの食料として確保されているんだ」


「まだ食べられていないと――!」


「ああ、そのはずだ」


「1日ですか……ではその目が戻るまで取りあえず安心できますね」


「それではダメだ」


「どうしてです。食料を確保しに来ただけなら、まだ時間はあるでしょう?」


「いや、ない。言っただろ、異空間から来たって、食料を確保し終えると、また戻るんだ。この異世界から皆、異空間へ連れ去られることになるんだ。だから時間がない。奴が異空間に帰る前に……何としてでも倒さないと……ハズレたちと会えなくなるんだ」


 意識せず俯くロード。


「――――!! そ、そんなのやだーー!!」


 トンガリがぐずる。


「オレだって同じだ。だからぐずぐずはしてられない。目が見えなくても戦わないと……」


「でも、ロードも食べられるぞ……」


「それでも助けに行くしかない。まだあそこにいるうちに何としても……」


 見えない目に闘志が宿る。


「事態の深刻さは理解しました。無害ではないんですよね?」


「オレの読んでいた絵本では適役として登場していた」


「どうしてあんな魔物が……この異世界には防壁が――そうか、密猟団の開けた穴が……なら私が何とかしてみます」


「ドノミさんが?」


「これでも戦闘訓練は受けてます」


「自信はあるのか? アレは強いぞ……」


「実践は初めてですが、これも私の仕事です。皆さんを助けて見せます」


「……………………」


「ロ、ロード」


 トンガリが不安げに呼ぶ。


「分かった、ドノミさん。ピラメイルーネのことを教える。なんとかみんなを助けて欲しい」


「はい」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 メバチ村。

 バシャバシャと水音をたてて走り去る女性がいた。

 ドノミだ。向かう先はクラゲ型の魔物、ピラメイルーネの居た場所だった。まだそこに同じ魔物が居た。

 ドノミは自分の背丈の倍くらいの鉄棒を構えて、戦闘態勢に入る。


「やっと、私の本職が試される……必ず倒して助けます」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 メバチ村の外れ。


「ロ、ロード……どうしたんだ?」


 トンガリが立ち上がったロードの後姿を見ていた。


「やっぱり心配だ。行ってくる」


「ロードダメだってば! 目が見えないんだろ!」


「だがもしドノミさんまで食べられたら……くっ、せめて裏切りの瞳がまともに使えていれば魔物の存在に気づけたのに……こんな不覚を取ることも……」


「な、なに、ソレ」


 トンガリがロードの首に提げられた宝石を見る。


「魔物が近くにいると知らせてくれるんだ……」


「じゃあ、なんでさっきの魔物は気づけなかったんだ?」


「あっ、それは――」


 ロードは自分がまずいことを言っていると知った。


「…………もしかして、オレのせいか?」


「違うトンガリのせいじゃない! 助けの声に釣られてまんまと奴のやり口にはめられたオレのミスだ!」


「…………」


 ロードはドノミの走って行った方向へと進んで行く。ドノミの出発時、音で大体の位置は把握できていた。


「待ってよ! ロード!」


「来るな危ないぞ! トンガリまで食べられる! (確かこっちに行ったよなドノミさん)」


「――――ロード待って!」


「――――!!」


「オレも戦うよ!! 仲間を助けたいんだ!!」


 トンガリがそう申し出た。


(トンガリがこんなことを言うなんて……)


 ロードがその勇敢さに驚いていた。


「だったら、頼みがある」


「お、おう!」


 ロードとトンガリの作戦会議が始まる。


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