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第395話 モンスターエンカウント

 ドノミの違和感を拭うため、トンガリ隊はメバチ村を横断する。

 一行がバシャバシャと足で水音を鳴らし進んで行く。


「居ないみたいだなーー」


 ロードが辺りの大きな貝の家を覗き込みながら言う。


「ケンカに……暴走に……失踪ですか……」


 ドノミが書類の束を取り出す。


「まさか密猟団!」


「いえ、彼らの目的は秘宝玉のはず……」


「なにを書いてるんだ?」


 ロードが横目にドノミを見て訊く。


「報告書です。新たな異常なので連絡しないと……」


「どうする探しに行く?」


 スワンがこれからの話をする。


「いえ、今は一刻も早く密猟団です。この異常は放っておいてもすぐに収まって戻って来るでしょう」


「スライムがいないなら少し休憩にしないか? 15分ぐらい」


 ロードが提案する。


「そうだな……後で休めなくなるかもしれないしな」


 ハズレも賛成する。


「あれ? 小魚さんいないよ~~全然」


 トンガリが水溜りの中を見る。


「ホントだ」


 スワンもしゃがんで小魚を探す。


「ですね……おかしいな」


 ドノミが不審がる。


「オイオイ、まさか魚も失踪か?」


 グラスがうんざりして言う。


「魚まで……まさか、オレたちにも影響したりしないよな」


 ハズレが恐ろしいことを口にする。


「ま、まさか、そんな……」


 控えめに言うドノミ。


「えっ!? ひょっとして私の病気って――」


「それは本物だろ、薬飲んで処置してるし、寝ても治らないだろ? 失踪したくなったりとか、ケンカしたくなったのか?」


 ハズレが否定する。


「全然ない」


「だろ……マキショク病だ」


「――――!!」


 その時ロードが過敏な反応を示した。


「どうしたロード」


「いや、今――――」


 ダッと突然走り出すロード。


「えっ!!!? 何!?」


 スワンが驚く。


「あれ? ロードどうしたんだ!」


 トンガリも驚く。


「アイツが走り出す理由なんか一つしかないだろ」


 グラスが理解する。


「声が聞こえたんだろうな……行こう」


 ハズレが言う。



 ▼ ▼ ▼



 バシャバシャと水溜まりの上を走りゆくロード。


「助けてーー!!」


「――――!!」


 ロードは助けの声を聞いて飛び出して行ったのだった。


「そこのスライムさん、た、助けてーー!!」


 フィッシュ系と思われるスライムが助けを請うて来た。


「なんだ! どうしたんだ!」


 ロードはそばに駆け寄ろうとするが、


「う、うわーー!!」


 フィッシュ系の尾ひれに絡まっていた触手のようなものが、スライムを引きずっていく。ロードはその事実にまだ気づかない。


「どうした! どこへ行くんだ!」


「わあーーーー!!」


 引きずられるフィッシュ系スライムを追いかけるロード。


(何かに引きずられているのか?)


 そこでロードはようやく気付き、貝殻の家を曲がったところで真相を知る。

 それは表面にトゲトゲのついたクラゲのような魔物だった。浮いているクラゲは触手を何本も地面に垂れ流し、そのうちの一本の触手でフィッシュ系を引きずっていたのだ。


「――――!!(アレは確か!!)」


 その時――ロードは足場のぬめりに気が付いた。その瞬間、クラゲのような魔物が煌びやかな装飾を施した触手の中でも特別な4本の触手をロードに差し向け――カアーーーー!! っと光を照らした。


(ぐう、しまった――!! 目をやられた!)


 その場で膝をつき目を抑えるロード。


「わあーーーー!!」


 引きずられていたフィッシュ系スライムはクラゲの魔物の中に取り込まれた。というより食われたに等しい。


(た、助けないと――)


 その時、ロードの下半身に無数の触手が絡みついた。そのまま引きずっていく。


(まずい――引きずられている。取り込まれる)


 その時、引きずる触手を切り裂いた者がいた。


 バシャッと水溜りを蹴り、ロードを抱えて、魔物から遠ざかる者。それはグラスだった。

 グラスはすぐにロードを落として戦闘態勢に入る。


「おう……」


 ロードが落とされたときのうめき声だった。


「どうした……あんなのに捕まるお前じゃねーだろ」


 グラスが言う。


「魔物の放つ光に目をやられた」


「なにぃ?」


 シュルシュルシュルと魔物の触手がうねる。


「どいてろ!!」


 グラスはロードを思いっきり蹴っ飛ばした。そして、迫りくる触手から距離を取る。


「くっ……」


 ロードは蹴られたショックで倒れ込んだ。


「いた! ロード」


 スワンが走り込んできた。


「うわーーなーーにアレ!!」


 トンガリが魔物を見て言う。


「ドノミさん! あの魔物は!?」


 ハズレが魔物を確認して聞く。


「わ、分かりません! 見たことない、あんな魔物いたっけ?」


 ドノミが頭に記憶した魔物と照合させていく。


「また、暴走してるの?」


 スワンがロードを支えていた。


「違う――アレは!!」


 ロードが言うその時――――


「わあーーーー!!」「助けてーーーー!!」


 二匹のフィッシュ系スライムが触手に引きずられ、魔物に取り込まれていった。


「スライムを食べた……」


 スワンが思わず言葉を口にする。


「もしかして、アレがここのスライム達の失踪の理由じゃないか!?」


 ハズレが推測する。


 ロードは目を抑えていた。視界は全く見えないようだった。


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