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第391話 お見舞い

 森の中。

 ロードは水の入ったつぼを持ちながら走って行った。

 月明かりを頼りに元来た道へ戻っていく。

 全ては病気になったスワンを元気づける水を届ける為。


(すっかり遅くなったなー、けど、水があればスワンも元気になってくれるはずだ)

(トンガリがついていてくれてよかった。安心して水を探しに行けた。あとは水を落とさないように――)


「あーーーー」「あーーーー」


 その時、空き家の町の近くまで来たロードが不気味な声を聞く。


(なんだ!? 町の方が騒がしいが、何もいなかったはずだ。いや、それよりもスワンとトンガリ――)


 ロードが町の入り口を見ると、


「アーーーー」「アーーーー」


 大勢の異形なスライムが町中にひしめいていた。


(なんだ、あれもスライムなのか? こんなに集まってまた暴走か? まずい、スワンとトンガリは――急いで戻ろう)


 つぼを持ったロードが町に入る。するとスライム達もロードに気が付いたようだ。


「ああーーーー」「ああーーーー」「アーーーー」


 ロードはスライム達を無視して空き家の屋根の上に飛び移る。


(こんなにたくさんのスライム……どこから、暴走と何か関係が……)


 ロードは屋根伝いに走っていく。


「おっと」


 つぼに入った水を零しそうになるロード。体勢を立て直して再び屋根に移る。


「――!?」


 ロードの目の前に浮遊するスライム達が立ちふさがった。


「アオーーーーン!!」


 ロードがルロウ直伝の遠吠えをする。するとホラー系スライム達が身を引いていく。


(トンガリ! 何とかスワンを守ってくれ!)


 ロードはとうとうスワンの休む空き家の前の屋根まで来た。そこから下を見下ろす。


(なんて数のスライム、スワン、トンガリ無事でいろ! オレは帰って来た!)


 ロードは空き家の屋根から飛び降りてそのまま、ガシャーーンと窓ガラスから中へ入り込んだ。


「――――!!」


 空き家の中には大量の異形なスライム達がいたが、


「あっ、ロードが帰って来た」


 嬉しそうな顔をするトンガリ。


「あ、お帰りロード。でも何で窓から?」


 スワンもベッドに横になってロードの帰りを喜んだ。


「……大丈夫なのか、二人共、こいつらは?」


 ロードが訊く。


「ああ、大丈夫みたい。私のお見舞いに来てくれたんだって……」


「お見舞い?」


「病気の子~~」「ああ、お見舞いぃ~~」「お花持って来た」「果物持って来た」


 ホラー系スライム達が話す。お花も果物もいびつな形をしていた。


「スワンの病気を気遣って皆お見舞いに来てくれたのか」


 ロードが呟く。


「ああーーあ、森で見てた」「それでみんなに話してーー」「いっぱい花と果物集めた」「元気になる物集めた」「そしたらどっか行ってた」「戻って誰かが町から出て来た」「こっちにいるかもと思って皆で探した」「そしたらいた病気の子」


 ホラー系たちが事情を説明する。


「なんだ……ごめん、皆の顔見て、恐ろしい魔物が襲い掛かって来たのかと思ってしまった」


 ロードが頭を下げる。


「「「?」」」


 ホラー系たちは何のことか分からなかった。


「オ、オレも怖くてお化けが出てきたのかと思ったよ」


 トンガリが臆せず言う。


「トンガリありがとう。よくスワンの側にいてくれた」


「うん。心の中で声がしたんだ。じっとしてろって、そしたら勇気が湧いてきたんだ」


 トンガリがにこやかスマイルで言う。


「そうか、凄いな。レベルアップしたおかげだな」


「そっかーー本当に28になってたんだー、レベルアップすると不思議なことが起きるんだなーー」


「今はもう29だろう」


「あっ、そうだ! 次で30だーー! やったぜ! 頑張るぞーー!」


(記憶をなくしてもトンガリはトンガリだな)


 ロードは一安心して水の入ったつぼを床にゆっくりと置いた。

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