第387話 今度はウィング系が襲い掛かってくる
谷底。
ロードたち一行はホーン魔王国を目指して旅をしていた。
両サイドを崖で閉ざされた一本道を進んでいた。
「んーーーー」
タンタンッと移動するトンガリがうなりはじめた。
「どうかしたか? トンガリ?」
先頭で止まるトンガリに訊くロード。
「んーー何をしてレベルアップするか考えてる。何かない?」
トンガリが皆に訊く。
「どうだ皆」
ロードが促す。
「目隠ししながら歩くとか?」
ハズレが提案する。
「危ないだろ」
「息でも止めてろよ」
グラスが提案する。
「ダメだろ」
「私がフルーツ投げるからそれを宙で食べる」
スワンが提案する。
「高度すぎるだろ」
「あの~~じゃあ、そこにあるマット石に落ちず飛び移っていくのはどうでしょう」
ドノミさんが提案する。
「おお、やってみよう。よーしレベルアップするぞ!」
トンガリが丸い石の上に乗り、別の丸い石めがけてジャンプして飛び乗った。
ポンポンポンと石から石へ飛び移っていく。
「いい案をありがとうドノミさん」
ロードがお礼を言う。
「いえ、大したことではありません」
「オイ戻って来たぞ……」
先頭を行くはずのトンガリが石伝いに戻って来た。
「!」
「うわわわわわわわわわわわ!」
トンガリはロードの側の石に飛び移った。
「どうした?」
「なな、何か大勢こっちに来る! こわっ!」
「――――!!」
怯えるトンガリの見る方向に目をやるとバタバタと何やら大群で飛んできた。
「なんか、飛んで来るぞ」
グラスが言う。
「アレはウィング系、羽の生えたスライムです」
ドノミが解説する。
「こっちに来てるぞ。道を開けてやろう」
ロードが提案する。
「待って、ちょっと様子がおかしくない?」
スワンが目を凝らして見てみる。
『『『わーーーーーー!!』』』
ウィング系のスライム達が叫びながらこっちに向かってきていた。
「また狂暴になってる」
スワンが言う。
「ドノミさん! アレ止めてもいいか!?」
ロードが訊いてみる。
「はい! 叩いて気絶させてください! それでひとまず戻ります!」
ドノミが言う。
ロードは早速走り出し、空飛ぶスライムの群れに飛び込んで両手を使ってはたいていく。
グラスはその辺に落ちてた小さな石の集まりを掴み取って投げる。ウィング系はわーーわーー落ちていく。
ハズレは鞘から剣を引き抜いて、剣ではなく鞘の方を使ってポポポンとウィング系を薙ぎ払う。
スワンはすぐさま空気中の水分を集めて弾丸を作り、ウィング系たちに乱射していく。
ドノミは持っていた鉄棒を構え、連続の突きを放ち、ドドドドドドドッとスライム達を落としていく。
ウィング系のスライムは100匹近かったが、何とか全部気絶させることが出来た。
「おお~~~~」
トンガリがその凄さを目の当たりにした。
「終わったが、こいつら大丈夫かな……?」
ロードが訊く。
「これまでの経験から放っておいても大丈夫だと思います」
ドノミが答える。
「――――!? スワン?」
その時ロードがその名を呼んだ。
「えっ、何?」
当の本人は何故話しかけられたか分からなかった。
「いや、なんか……なんでもない。オレの勘違いみたいだ」
ロードは何かを感じ取ったのだろう。しかし追及はしなかった。
「そう…………さぁ、先へ行こう」
スワンが笑顔で言う。
「ああ」
再びトンガリが石に飛び移る試練をこなしながら、ゆっくり進んで行くロードたち。
そして谷底を抜ける。
「やった……ゴールだぁーー! レベル28にアッーープ!!」
ポフポフとホルンの角笛を吹きながら喜ぶトンガリ。
「やったなトンガリ」
ロードが拍手する。
「凄い集中だ。一度も落ちなかったな」
ハズレも褒める。
ドノミがパチパチと拍手を送る。
「やぁやぁ、ありがとうありがとう……楽勝だったぜ」
トンガリが誇らしげに言う。
その時、ドサッと人の倒れる音がロードたちの背後からした。ロードでもハズレでもグラスでもドノミでもない。
倒れたのはスワンだった。
「――――!? スワン!?」
「皆……ごめん……病気に……なった」
ハァハァと息を切らしながら話すスワン。
「病気って大丈夫か!?」
ハズレが駆け寄る。
「ちょっと無理かも……」
倒れたスワンが言う。
「どこか休めそうなところを探さないと……!」
ロードが言う。
「あの森にしましょう。日陰で私が症状を見てみます」
ドノミが森の方を指し示し言う。
「何だ……風邪か? 情けねーー」
グラスは何も心配してなかった。
「荷船の上に乗れスワン」
ロードはスワンを抱えて荷船の上に降ろす。
「うう…………」
ついでに毛布を掛けられるスワン。
その辛い症状は段々と悪化していくのだった。




