第370話 スライム界の情報
コップに注がれた水を口にしてハズレは情報収集へと乗り出した。
「それで調査の件なんだけど……そっちの資料はないか? 読んでおきたい」
ハズレがドノミさんに言う。
「前に提出したはずですが……」
「生憎持っては来なくて、新人くんにもう一度、今回の調査の件について教えておきたい」
「分かりました」
ドノミさんが資料の山からあるノートを取り出す。
「こちらがその資料になります。一応ゼンワ語で書きました」
ドノミはハズレに資料を渡す。
「ゼンワ語かありがとう(ロード目を通すフリでもいいからしておいてくれ)」
「ああ」
(えっと365/124日午後1時37分、いつだ?)
ハズレは辺りを見渡したするとカレンダーに目が入り今日が365/154日とわかった。
(第3516界にて異常と思われる事態が起きましたので)
(今回提出させていただきました)
(見回り時にスライム同士のケンカを目撃)
(私の知る情報にはなく、記憶をしていましたが、奇妙なことに立て続けに数度同じような事態に遭遇)
(温厚な魔物という認識でしたので念の為、過去の生態調査の資料を調べたところ、そのような記録はありませんでした)
(さらに争いに使用された石や木の棒についても不審を持ちました)
(彼らは無害認定されている魔物でそれらを使用すると当然人間にも被害は及ぶことでしょう)
(それらを駆使して何かをするという記述はありませんでした)
(争いに関しては2、3分と短く……すぐに解決する程度のものでした)
(ただし突発的かつ……温厚なスライムが罵詈雑言を浴びせていたので十分異常と判断しました)
(地域によりますが同じ現象は各所で見られ、更にスライム以外の無害認定の魔物にも同種と争う場面を目撃しました)
(こちらに関しましては別途の資料を)
(10日間問題を現したスライム及び魔物を見て回り、異常は起きていませんが一度、調査部に今回の件を調べていただきたいと思います)
ハズレは今回調査員がどうして呼ばれたか知った。
この時、
(つまり温厚なスライムがケンカをしていたから、調べて欲しいか……)
(随分まじめな人だ)
ハズレはマニュアルを読むドノミさんを見た。
「質問があれば遠慮なく」
ハズレの視線に気づいたドノミさんが言う。
「あとはこの異世界の気候、環境、文化、変化の記録か……細かいなー村の一つ一つまで書いてある」
ハズレが資料を流し読みする。
「これはデフォルメスライムの生態系か……」
ロードが目についたページに食い付く。
「スワンの言う通り無害認定って書いてあるな」
「倒さなくてよかった」
そしてスライムの生態系をハズレは読んでいく。
「スライム科、デフォルメスライム種には様々な系統が存在する代表的なものに、シンプル、アニマル、フルーツ、フィッシュ、ホラー、ウィング、ネイチャーなどなど」
「基本的には玉遊びに使われる玉と同じ程度の大きさだが」
「それには留まらず、中には家よりも大きい個体もいる」
「確認されている記録によると最大10メートルのデフォルメスライムが存在している」
「性格は極めて温厚」
「他種生物及び魔物に危害を加えることは一切ない」
「その為、危害を加えなければ様々な種と共存できる」
「通常知られるリアルスライムとは全く違い」
「凶悪でないことやその愛くるしい見た目から一般層への人気がとても高い」
「デフォルメスライムの食事は人間と同じ雑食にさらに広範囲まで食べることが出来る」
「食したものに毒素が含まれてる場合はそれを独自の細胞が全て駆除する」
「生態に関して例としてシンプルスライムを上げる」
「その身体は透き通っていて、液体のようにも見える身体である」
「ある程度の打撃を受けても問題はないが強いと気絶に至る」
「身体の98%が水分で出来ており、ひんやりとした感触で身体は伸び縮みする」
「水分を控えたスライムはネバネバすることもあり何故そのような行動をとるのかは調査中である」
「人間と同じように呼吸によって生態を活動させる」
「吸い込んだ空気は体内に気泡となって確認できる」
「身体の液体質を正常に保っている」
「余分な汚れは気泡と共に身体の表面へ現れる」
「スライムの個性としておしゃれを嗜む」
「被り物を好んで頭部に被る」
「世代や性格によって被り物はバラバラ、流行もあるようである」
「村には彼らの家が確認され、家族を作り暮らしている」
「これは群れで一カ所に固まって互いに暮らしをサポートし合う為だろう」
そのページの記述はそこで終わり次のページには新たな情報が記載されていた。
「スライムのことはおおよそ理解した」
ハズレは次のページに手を掛ける。




