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第359話 グラスの行く自由の道

 とある分かれ道。

 タチクサでエミさんたちと別れた後、ロードたちは分かれ道に辿り着いた。


「じゃあ、ここでお別れだスワリオさん」


 ロードが言う。


「ロードこれを……」


 スワリオが渡してきたのはエミさんから貰っていた盗賊団のバッチだった。


「ん? 盗賊団のバッチか……スワリオさん、オレは盗賊団には……」


「わかってる。そいつはリョウのだ」


 スワリオが言う。


「いいのか? リョウさんの形見なんだろ?」


 ロードが訊く。


「構わない、それよりお前たちに共に命を預け合った者同士受け取って欲しい、もしオレがリョウならそうする。お前たちはツルバシセン団の仲間だ。盗賊は関係ない。何か困ったことがあたら遠慮なく頼ってくれ」


「ありがとう、貰っておくよ」


 バッチを見つめるロードだった。


「スワリオさん、私……色々失礼なこと言ってごめん。リョウさんも思っているような人じゃなかった。もっと早く盗賊になんて偏見を捨てていれば仲良くやれたのにな」


 スワンが謝る。


「リョウはそんなこと気にしない。スワンが正直にぶつかっていたのなら仲良くやれていたさ」


 スワリオはそう考える。


「そっか……」


 スワンは笑顔だった。


「ではな、ロード、ハズレ、スワン、オレも新たなツルバシセン団を引っ張って行く」


 スワリオが馬にまたがる。


「また会うときはもう盗賊ではなくなっているかもな」


 そう言い残し、馬を走らせて、分かれ道の右へ去って行くスワリオであった。


「これで三人に戻ったな」


 ハズレが言う。


「これからどうする?」

 

 スワンが訊く。


「もうこの異世界はオレたちがいなくても大丈夫だ。広い場所に行こう扉の邪魔にならないような場所に……」


 ロードが宣言した。

 

 三人は分かれ道の左へ行く。荷船を牽いていくドルフィーナもついて来る。


 その時、一行を草むらから見張る集団がいた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 林・広々とした場所。

 ロードたち一行は林の中、人目に付かない場所に来ていた。


「ここでいいか……?」


 ロードが言う。


「問題ないだろうな」


 ハズレが口にする。


「――後ろ!!」


 その時スワンが叫んだ。


 ガサガサと茂みの中から現れる荒くれ者たち。


「へっ! 女だ、女がいるぞ」「いいもん着てるじゃねーか」「おっ! 武器も荷物も大量だぞ」「こりゃいい、動く宝箱だ!」


 ロードたちの前に現れたのは小さな盗賊団のようだった。


「おい、大人しくオレたちの言うことを聞くんだぞ!!」「まず全員武器と服を脱げ!!」


 盗賊たちは宝を前に調子に乗っていた。


「油断するとすぐこれだ」


 スワンが眉間にしわを寄せる。


「まぁ、当然こんなのはいるよな」


 ハズレが余裕の口調で言う。


「オレとしたことが全然気が付かなかった」


 ロードも盗賊たちの姿を見る。15人くらいはいるようだった。


「ちっ、めんどくせー女以外殺せ!」「さっさと言われた通りにすりぁいいのによう」


 盗賊団が武器を構える。その時――――


「おう!!」「ばぁはぁ!!」「あぐ!!」「なっぶ!!」


 ドガッバキッボコッと人を殴りつける鈍い音が盗賊団の後ろの方からした。


「なんだ?」「おい! どうした」


 盗賊たちが後ろを振り返ると仲間たちが気絶していた。


「ったく、そんな目立つ格好してるからオレみてーなのに寄ってたかられるんだよ。ちっとは学習したらどうなんだぁ? ここはそういうところだ」


 草むらからもう一人の影が出て来た。緑色のフード付きマントを羽織ったグラスだった。


「ガフ!!」


 グラスが盗賊の首を肘で打って気絶させる。


「おう!!」


 グラスが盗賊の顔面を殴って気絶させる。


「グラス」


 ロードは意外そうなものを見るかのように驚いた。


「おい、かかしテメーはオレが人を殺さねーとは言うが、オレはそんなこと思わねー自分なんてもんがどんな奴かも知らねーだがこれだけは事実だ。オレはテメーを殺せねー、お前はオレの衝動を見張るかかし役には丁度いい」


 グラスが言う。


「――――!?」


 ロードはどういうことか気づく。


「つまり、どういうことハズレ」


 スワンが訊いてくる。


「ついて来るって言いたいんじゃないか?」


 ハズレが答えを言う。


「えっ!! ついて来る!? 待って、その前に一つ確認させて、あなたは改心した!?」


「さぁな」


「!!!? は、初めて話が出来た」


 スワンが喜んだ。


「……………………(以前とは違うみたいだ。これもロードがグラスを信じた結果か……)」


 ハズレは思う。


「どうするロード……オレたちは苦しむ人々を救うために最魔の元凶を目指して旅をしているが、グラスが同行してどうなるか……」


「グラスはオレにしか用はない。その言葉を信じる、二人にも他の人にも危害は加えないさ」


 その時ロードは鍵を回して異世界の扉を開く。


「――――!!」


 グラスは突然出て来た扉に驚いた。


「グラス、言っておくぞ。オレたちはお前の言うここの世界の人間じゃない。そしてもっと多くの世界を渡り歩くつもりだ。そこには全く違うルールや敵、危険、困難が待っているはずだ。もう二度と故郷へも帰れないかもしれない。友人にも会えないかもしれない。それでも来るか?」


 ロードは試す。


「分かり切った答えだ。どこへ行こうがオレの自由だ!」


 グラスは扉の中へと入って行った。


 そしてハズレもスワンも荷船を牽くドルフィーナも入って行く。


 木の葉が舞う。


 ロードはこの時、思い出した。希望のダンジョンで言の葉につむいだ言葉を、


『真実を答えろ、ここに何を求めて来た?』


「グラスの自由だ」


 ロードは扉の中へと入って行き、バタンと扉を閉める。


 木の葉が落ちる。


 この異世界から去って行ったのだった。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 フォックスグリード・ハラパの街。


 スタスタスタと廊下を歩くオハバリがいた。その背中には剱山刀を背負っている。


 この時、

(グラスが昔の様に戻ってくれてよかった)

(ロードたちには感謝しかない、グラスをよろしくな)

(オレはもうアイツとはつるめない)

(アイツは優しいから、オレがこれからすることには向いてないし、させたくもない)

(グラス、そいつらと行け! そして二度と落とすな大事な物を)

(お前は悪くないぜグラス)

(悪いのはお前をあんな風に、あんなことをさせたこの世界だ)

(お前だけじゃない、もっと多くの人間がお前よりも酷いことをしているはずだ)

(だからオレは世界を取る)

 オハバリはこう思っていた。


「それがオレの自由だ」


 オハバリは自分に喝を入れた。


 タッと廊下を出ると高台に立つ。そこから見えるのは何万人もの奴隷たち。


 いかつい顔をした男たちがそれらを前に並んでいた。そしてオハバリはその中央へ行く。


 タッと奴隷たちの見える場所から、スーーーーと息を吸い込み宣言する。


「オレはオハバリ!! 独裁者ゲロベルデに裁きを下しお前たちを自由にした者だ!! だが独裁者共はまだ残っている!! ここに集まった勇気ある協力者たち、共に世界を独裁者共から奪い取り、俺たちのような奴隷を自由にするぞ!! 今からオレたちは革命ハモン団だぁ!!」


 木の葉舞う中オハバリは堂々と宣言した。


『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』


 奴隷たちが雄叫びを上げる。


 のちにこのハモン団とオハバリは、グラスから受け取った葉々の秘宝玉を使い宣言通り独裁者たちから奪い取り、全ての奴隷を解放し自由を与えたのだった。

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