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第357話 三人は歓迎される

 スワンとハズレは絨毯の敷かれた木の椅子の上に座っていた。目の前には木のテーブルがあり、空の皿も置いてあって、キャンプファイアーの方を見ているようだった。


「随分と好待遇だな」


 ロードが口にする。


「何か助けた盗賊の人たちに感謝されちゃって……」


 スワンが照れながら言う。


「盗賊のお姫様になったんだよな」


 ハズレが茶化す。


「スワンのねぇさん追加です」「いい肉、いい野菜、選んだんで……」


 盗賊たちが食事を持って来る。


「どうも、有り難く食べさせていただきます」


 盗賊たちが空になった皿を下げ、新たな料理を木のテーブルに置いていく。


「さぁ、ロード食べよう……あっ団長さんもどうぞ」


「ああ、邪魔しようか」


 スワリオが絨毯の上に腰を下ろす。


「肉か有り難いな」


 ロードが食べながら言う。


「流石に健康第一さんも今日は疲れた?」


 葉っぱで仰ぎながらスワンが訊く。


「オレも怪我の回復の為にたくさん食べないとな」


 ハズレが肉を頬張る。


「――!! 怪我か、見せてみろ、オレが」


「いや、自力で治す……あまり頼ると自己回復が弱くなるなんてこともありそうだし」


 ハズレがロードの申し出を断る。


「私は治りました」


 腕輪をつけるスワンは腕にあったはずのムチの痕がきれいさっぱり消えていたところを見せた。


「楽しそうなとこ邪魔して悪いがいいか?」


 突然、スコップザラ団の顎の曲がった男、ドロが会話に入って来た。


「アンタ、スコップザラ団の……」


「ドロだ」


「あの意地悪なボスの所の?」


 スワンが言う。


「実はその意地悪なドンのところの奴らが、今のアンタを接待してるんだが……」


「えっ!?」


「悪いねえさん」「ドンの無礼は俺達が……」


「だ、大丈夫、もう気にしてないから……」


「ドロ、こいつらに何か用なのか?」


 スワリオが訊いた。


「ああ、ドンの言いつけでな。オイ」


「へい」


 ドロが呼ぶと後ろの盗賊が木のテーブルの上にコップを置いて行く。


「うちで色々試して作ったブドウ水だ」


 ドロが説明する。


「ダイチがこいつらに自分の物を分けるのを許したのか?」


 スワリオが驚く。


「当たり前だ。勝手に持ってきたら殺されるだろ……ちなみにお前の分はないぞ。ドンからアンタら三人にだ」


 盗賊がブドウ水を注いでいく。


「お嬢さんにうちのもんが世話になったからな……スコップザラ団最大級の礼だ、前の失礼もここで詫びよう」


「……………………」


 スワンが口を開いたまま注がれるブドウ水を見ていく。


「乾杯するか……」


 ハズレが言う。


「うん」


 スワンが同意する。


「なぁ、ダイチってあの人だったか?」


 ロードが喋りかける。


「「――!!」」


 ダイチは一人酒を飲みながら、こちらの様子を伺っていた。そして三人と目が合った。


 三人はコップを向ける。


「ったく、ガキだなーー、今日だけは騒いでも許してやる」


 離れたところからコップを差し出すダイチ、4人は乾杯した。


「じゃあ、後は楽しくやりな、行くぞお前ら」


 ドロが盗賊たちを引き連れて下がる。


「ああ、いけね……お嬢さん、ドンからの伝言だ。『あと5年女を磨け』」


 そう言ってドロたちは去って行った。


「どういう意味だ?」


 ロードが訊く。


「スワンが5年たったらいい女になってそうだ」


 場酔いしたハズレが言う。


「ああ、確かに」


 ロードが同意する。


「そういう話は私のいない所で……」


 照れるスワン。


「おい、そろそろダイチのブドウ水飲んでやれ」


 スワリオが言う。


「誰一人欠けなくてよかった」


 ロードが口にする。


「グラスを救い、魔王を救う、私たちはやり遂げた」


 スワンも口にする。


「それじゃあオレたちの今日の働きに――」


 ハズレがコップを前に出す。


「「「かんぱい」」」


 三人のコップがココンとぶつかった。


 ゴクゴクと飲み干していく。


「――!! こいつ濃厚でうまい」


 ハズレが賞賛する。


「こんなところでこんなものを飲めるとは思わなかった」


 ロードが静かにもう一口飲む。


「ホントにおいしい」


 スワンンが言う。


「こんなにおいしい物が作れるのに、この世界だと盗賊になるしか生きていけないか……」


 ハズレが言う。


「勿体ないな」


 ロードも言う。


 キャンプファイアーの前でシャベルマス団の団長レトリバーとチワが踊っていた。


「そのうち……気づくんじゃない、奪い合っても……いい方向には行かないって、だからこのブドウ水の様にいい方向に自分たちで作る。盗賊のやり方に疑問を持っている人たちもいるみたいだし……優しくされたら優しくしてくれる人もいるし、皆まだ気が付いてないだけだと思う。今はまだそのいい方向へ行く途中なんだ。盗賊なんて馬鹿な生き方ってそのうち気付く」


「流石盗賊の姫、いいこと言う」


「素晴らしい、感動したぞスワン」


 ハズレとロードは賞賛の拍手を送る。


「や、やめて……」


 顔を真っ赤にするスワンだった。


 この時、

(バカな生き方か……そうかもな)

 スワリオが心の中で吐露する。


「なんだ……スワン、盗賊になる話か? うちに来るか?」


 突然スワンの肩に手を置いて勧誘する影。


「マテヨさん」


「おー入れ入れお前らなら歓迎だ」


 酒を持ったオテダシが言う。


「そんな話はしてないが……」


 ロードがツッコむ。


「悪いけど、オレたちに盗賊のような生き方は出来ないさ」


 ハズレが言う。


「うん、絶対できない」


 スワンも言う。


「まぁ、そうだろうな……うちにはうるさいのしかいないから入って欲しいところだが……」


 マテヨが残念がる。


「あんだよ、別に悪いことしろとは言ってねーぞ、やるのはオレたちだ」


「バカ、同じことだオテダシ」


「それでお前たちはこれからどうするんだ」


 スワリオが三人に訊く。


「実はまだやらなくていけないことがある」


 ハズレが言う。


「ん? 何かあった?」


 スワンが質問する。


「ああ、託されたものをどうするか……」


 ロードは懐に入れておいた星形の豆を出す。


 希望のダンジョンの宝、ホープスターこれをどうするか考えは決まっていた。


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