第356話 戦いの後の宴
枯れ木の森。
辺りはすっかり夜の闇に染まっていた。
そんな中メラメラと揺らめく炎があった。
ロードはその光景を見ていた。目の前では何かが燃えていく。
「魔物と違って人間は弔うことが出来るからマシだな……尊厳を持って向こうに送り出せる」
ロードの側に現在はツルバシセン団を率いるスワリオ団長が話しかけてくる。
メラメラと燃えているものの正体は盗賊たちの死体だった。昼間の戦いで死んでいった者たちだ。
「ああ……」
ロードが同意する。
「魔王を倒してくれてありがとう、盗賊連合団全員に代わって礼を言う」
スワリオが握手の手を差し伸ばす。
「いや、もっと早く倒すことが出来れば、こんなに人は死ななかった」
ロードが悔やむ。
「いや、オレたちは遅かれ早かれ、全員こうなる今さら誰かのせいなんてことはない、オレたちの自由に生きる代償だ」
スワリオが何の後悔もなく言う。
「それはスワリオさんにとっての代償じゃないか? 盗賊としての生き方を自由だとは思わない。人の自由を奪ってまで、自由になることが耐えられない。だったら変えればいい……自由に命を使って代償を無くせばいい。スワリオさんはまだ生きてるんだ」
ロードが説く。
この時、
(………………確かにオレはもうツルバシセン団の団長だ)
(それでいいよな。リョウ)
揺らめく炎を見ながらスワリオは決意していた。
「戻るかロード」
「ああ、そうする」
二人は火葬される盗賊たちを背にある場所に向かう。
◆ ◆ ◆ ◆
枯れ木の森。湖のほとり。
ジョッキを持って乾杯する盗賊がいた。肉を食べて戦いの勝利を噛み締める者がいた。カードゲームをして退屈しのぎをする者がいた。
喧嘩大会が開かれて決勝戦を行っている者もいた。最終決戦はツルバシセン団のフセル対スコップザラ団のツッチーだった。
ドッ!! ドッ!! ドッ!! ドッ!! と殴り合う二人、顔は腫れていて、唇を切らしたのか血まで流れていた。
「こんなもんか……ツルバシセン団ってのは」
ボコボコのツッチーが挑発する。
「はっ!! スコップザラ団に本気になるわけねーだろ」
ボコボコのフセルが負けずといい返す。
「強がりやがって、とっくに星が回ってんじゃねーか?」
「まだまだ準備運動中だぜ」
ドッドッドッドッドッと殴り合っていく。
「やれやれーーーーフセルさん、そんなデカブツ敵じゃねーぜ!」
野次に混じってフリスビが言う。
「何だガキ!!」「ツッチーさんが何だって!!」
聞捨てならないことを聞いたスコップザラ団の面々がフリスビに食いかかる。
「いや、何でもないっス」
フリスビは引っ込んだ。
▼ ▼ ▼
タタタタッと木にぶら下がった的に、その中心に針を4本とも当てる者がいた。ツルバシセン団のマテヨだ。
「ふぅーーーーいいぞいいぞ」「うわーーーー全部真ん中じゃねーか」「へっ見たかオレたちのマテヨを」「マテヨちゃんオレたちと飲もうぜ」
「うるさいぞ、ちゃんをつけるな」
マテヨがギャラリーに文句を言う。
▼ ▼ ▼
「それでよ……バカデケ―奴の心臓をついたわけだ」
ジョッキを片手に酒を飲むオテダシが語る。
「ああ!! オレなんかオレなんか飛んでるやつに槍投げよ……見せてやりたかったぜ」
こちらはシャベルマス団のシバという男だった。
「そんな魔物オレの足元にも及ばん」
今度はシャベルマス団のノラが口を開く。
「ハァ? お前なんかしたのか?」
オテダシが訊く。
「どうせ馬鹿には見えない魔物を斬ったとかだろ」
シバが適当に言う。
「一人でベアラベ倒した」
ノラが自慢げに言うが――
「「ハイ、うそ」」
二人そろって否定する。
そしてくだらない話をしながら盗賊たちは飲み明かす。
▼ ▼ ▼
スコップザラ団のファイとゴーがキャンプファイアーを背に肉体美を見せながら踊る。周りでは筒をドンドコ叩いて音楽を鳴らす盗賊もいた。
「ロード!!」
ロードが呼び止められた。
ロードとスワリオが声のする方向を見るとスワンが手を上げていた。
「こっちこっち……」
スワンとハズレは座っていた。ロードの席もあったみたいで、そこに誘ってくる。
ペシペシとロードの席を叩いて誘うスワンだった。




