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第355話 もう落とすなよ

 枯れ木の森・欲深き溝近く。

 スワンが欲深き溝から風と木の葉が舞って来るのを見ていた。


「風! 何でこんなに葉っぱが……」


 スワンが風の勢いに手で顔を覆う。数億枚の葉っぱが降りしきる。


 その時、タタンと風から外れて地に降りる人影があった。


 ロード、ハズレ、ガシラ先生、ヂカラ、モト、グラスである。


「――――!!」


 スワンが気付く。


「スワン、今戻った……」


 ロードが言う。


「魔王は倒した」


 ハズレが言う。


 この時、

(万事解決か……)

 そしてグラスの姿を確認するスワンは口角を吊り上げる。


『『『おおおおおおおおおおおおおおお!!』』』


 一同の耳に男たちの雄叫びが聞こえて来た。


「この叫びは……!?」


 ロードが驚く。


「盗賊たちの勝利の雄叫びかな……」


 笑顔のスワンが言う。


「終わったか」


 ロードが一息つく。


「ああ、オレたちの勝ちだ」


 ハズレが笑う。


「むっ! 誰か来るぞ!」


 ガシラ先生が警戒する。


「盗賊の人かな」


 ヂカラが言う。


「もう、ここに用はないですし、離れましょう」


 モトが言う。


 ザッザッと何者かが足音をたてて近づいてくる。


「来たのか、よくここがわかったな……」


 ハズレが賞賛する。


「グラス……」


 ロードがグラスの方を見ると彼は驚いていた。


「……………………」


 グラスは唖然とその者を見ていた。その者は背中に剱山刀を携えたオハバリだった。


「アマノか!!」


 瓜二つの姿を目にしたガシラ先生が驚く。


「ひえ、生き返った」


 ヂカラが驚く。


「ちょっと違うと思う。調べるまでもなく」


 モトが珍しく冷静に言う。


 グラスとオハバリ、何年かの再開の時が来た。


 オハバリは走り出す。グラスの元へ走り出す。


 この時グラスは

(何でここへ来たって、お前を置いて外に出られるわけがないだろ)

(言ったじゃねーか、オレはお前を裏切らない絶対にだ)

(オレたちは二人でここから出る。そして自由を取りに行くんだ)

 いつか言われたオハバリの言葉を思い出していた。一番星を見たまま言った言葉だ。


 走ってきたオハバリがグラスに跳び蹴りを放った。


 ズザーーーーと滑るオハバリ、飛び蹴りを食らったグラスは後ろに吹っ飛んでいく。


 ロードたちは唖然と見ていた。


 グラスは欲深き溝の大穴寸前のところで止まった。そしてオハバリはグラスに馬乗りになる。そして告げる。


「オレは落とさない。絶対に仲間は落とさない」


 グラスに詰め寄るオハバリ。


「…………すまねぇ」


 一言しか出なかったグラス。


 オハバリは立ち上がる。その際ある物をグラスの胸の上に置いた。


 グラスはそれを見て目を見開いた。


「取り戻したぞ」


 オハバリが口にする。それはかつてグラスが宝物にしていた、汚い大人たちに奪われた、キラキラ光る宝石の秘宝玉だった。


「大事な物だろ……もう、落とすなよ」


 オハバリはグラスを背にしてそこから立ち去ろうとする。


「ああ……」


 小さな声で言い、グラスも起き上がる。


「オハバリ!!」


 その名を呼んでグラスはある物を投げる。それはアマノから受け取った葉々の秘宝玉だった。


 パシッと受け取るオハバリ。


「オレは自由を取った!! 次はお前が取れ!!」


 グラスが叫ぶ。そして――――


「取るさグラス」


 振り返って笑顔を見せるオハバリ。グラスも秘宝玉を手にしたまま口角を吊り上げて微笑んだ。


 ザッザッと歩き出し、背後に向かって手を振るオハバリだった。その姿をグラスは目に焼き付けた。


 そしてオハバリが過ぎ去ったあと、グラスもどこともなく過ぎ去って行く。


「ロード!! グラスが!!」


 スワンがグラスが去る姿を見て言う。


「もう自由だからな」


 ハズレが言う。


「いいの?」


 スワンが訊く。


「ああ、アイツを信じる……そう決めた」


 ロードはグラスの後姿を見送った。


「ではな、諸君、我々も行くとする」


 ガシラ先生が別れの言葉を言う。


「早速アマノのことを書き記しに帰ります」


 ヂカラが言う。


「もちろんあなた達のこともしっかりと……」


 モトが言う。


「色々助かった、ありがとう」


 ロードが礼を言う。


「こちらこそだロードくん。キミの伝説は私たちがしっかりと伝えよう」


「我々しらべ隊」


「ロードさんに感謝です」


「まぁ、あまり無茶なことはしないでくれよ」


 ロードが別れ際にそういう。しらべ隊はその場から去って行った。


「危ない盗賊に出くわさないといいけど……」


 スワンが心配する。


「ロード、オハバリが持っていた剣を見たか?」


 ハズレが訊いてきた。


「ああ、リョウさんの持ち物だ」


「団長さんもしかしたら……」


「まだ間に合うかもしれない、魔王を倒したことを教えに行こう」


 タタタッと三人はその場から駆け足で盗賊たちの戦場へと向かうのだった。

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