第353話 希望の宝ホープスター
世界樹の剣が地面に突き刺さり、フリフライが消え去ったあと、ミチルが力を使い果たしたせいか、ロードは下に落ちていく。
それを左手一本で受け止めたのはグラスだった。ロードの離した両手の剣も余裕で掴み取る。
「やっと……終わったな」
グラスが呟く。
「お前飛べたのか?」
「さっき奴の羽根をむしり取った。奴の手下共が使って飛んでいたもんと同じだ」
グラスが魔王フリフライの羽根を咥えていた。
「抜け目のないヤツだな」
「ここはそういうところだ」
葉が舞う中、ロードを担いだグラスが下りてくる。ロードも地に足をつけて、グラスに両方の剣を返してもらう。
「ロード……さすがだ」
ハズレが羽根帽子を取って現れた。
「ロードくん!! アマノが呼んでおるぞ!!」
ガシラ先生が言う。
三人はアマノのいる木の家へと向かう。
◆ ◆ ◆ ◆
木の家の前ではヂカラが宝箱を確認し、モトが今回の騒動の記録をしている。
◆ ◆ ◆ ◆
希望のダンジョン・最奥・木の家の中。
木の家の中には葉っぱがの山と椅子しか置かれていなかった。
「ホラ」
アマノがロードに手を出した。ロードはその手に握られたものを受け取る。
「これは豆?」
ロードは手のひらに置かれた星形の豆を見る。
「そいつが希望だ」
アマノが口にする。
「ふざけてんのか?」
グラスが壁にもたれて言う。
「宝の正体はてっきりあなたの使う秘宝玉の力と思ったんだが……」
ロードが思ったことを口にする。
「この力でゴスベージャスと戦ったのに、一体オレは何を盗んだって言うんだよ」
アマノが否定する。
「そうか」
「あの宝箱に入れるつもりだったんだがな」
アマノが言う。
「ん!! これはもしやホープスターか!!」
驚いたのはガシラ先生だった。
「何だそれは?」
「一口食べれば心と身体に元気が満ち溢れ、あらゆる欲を満たす豆だと言われている。人を幸せな気持ちにするらしい」
「たった一つなのか?」
ハズレが訊く。
「そうだ……それは奪い合いしかしないこの世界に必要なモノだ……何百、何千と、持ち帰って皆にそいつを食わせて世界を変えていこうと思った……けどたった一つだけ、何とか奪ってオレはここで死んだんだ」
アマノが答える。
「一つしかねーなら意味はねー、死ぬ前に自分で食えばいいだろ」
グラスが口を挟む。
「意味ならあるさ、そいつ一つでもあれば、どこかに植えることで何十、何百、何千にまで増やすことが出来る」
「本当か!?」
ロードが食い付く。
「本当だ。何のためにここまでのダンジョンを用意したと思ってるんだ? 今この瞬間も、そいつは食いもんだ。どこの誰とも知れね―奴に食われんのを何としても阻止するためだ……オレは無駄死にだけはしたくなかった。だから、お前らみたいなのが、いつかここまで来てくれると信じて死んだ。ゴスベージャスの呪いは誤算だったけどな。そいつはお前に任せるこの世界の狂ったルールを変えてくれ」
アマノは今もついた首輪のような呪印を触りながら言う。
「ああ」
ロードはホープスターを握りしめた。
「そうだ、お前にこれをやるよ」
アマノがある物をグラスに投げた。
「――――!!」
グラスはパシッと受け取った。
「葉々の秘宝玉だ」
「どういうつもりだ?」
グラスが訊く。
「褒美だよ……こいつらを連れてきてくれたのはお前だろ? クサナギのヤローの代わりに受け取ってくれ」
にっこりとほほ笑むアマノだった。
「………………」
グラスは秘宝玉を懐にしまった。
「ロード、アレ、大丈夫か?」
「心配いらないグラスはきっと正しく使ってくれる」
ロードがハズレに言う。
「フーーーー、これで思い残すことはなくなった。あとはオレが逝くだけだ……」
「「「――――!!」」」
その発言に一同は驚いた。




