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第35話 悪しき竜から生き延びるための行動

『グオアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 ここから100メートルほど先に竜がいる。

 悍ましい咆哮を放つ真っ黒い巨体の竜。

 レオリカン王国を陥落させ住み着いた噂の悪しき竜。

 長い尾が森の木々をへし折り、手足で地盤をひっくり返している。

 滅茶苦茶に暴れながらも悪しき竜はこちらへ着々と近づいてくる。

 

(……竜)

 

〔ドスン! ダスン! ドスン! ダスン!〕

 

 凍り付いていた時が動き出す。

 

「――み、皆逃げろ!」

 

 ただちに荷車を押すのをやめて、全力で走って竜から逃げる。

 

「ブクマ荷物は捨てろ!」

 

「ええ、でも~~」

 

「のろま! 命を捨てる気か! いくブン!」

 

 

『ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 

 ズガン! ズオン! ズガン! ズオン!

 

 その顔で木々を薙ぎ払い、段差の壁もお構いなしに突き破っていた。

 捨てられた荷車にある蜜アメとハチミツの原料の山にも目もくれず一直線で追いかけてくる。

 

「あ、あいつ! せっかく全部の蜜をくれてやったのに!」「僕らはおいしくないくま~~」

 

「や! やばいチュウ!」「追いつかれるチー!」「もうすぐそこチャア!」

 

 頭や肩に乗っているネズミたちが後方を見て言っていた。

 

「――皆! オレが合図したら左に曲がれ!」

 

「はいブン!」「くま!」「よし!」

 

 碌な説明は出来なかったが、皆は指示を聞いてくれた。

 

「ロード!」「無理チー!」「どうするチャア!」

 

 その凄い慌てようはすぐ後ろに竜がいることを教えていた。

 

「もう少し待て!」

 

 竜が至近に迫るのを見て、

 

「――今だ左にっ!」

 

 走っている全員が一斉に進んでいた方角から逸れる。

 

 ズドドドドドッドッ! ドドドン! ドドッ! ドン!

 

 逸れたことで何とか竜を避ける。

 一方、そのまま前に進んでいた竜は森の木々に自ら突っ込んで行った。

 

「や、やった離れたチュウ!」「流石ロードチー」「ま、また来るチャア!」

 

 木々から抜け出して、また追いかけて来た。

 

「次の合図で右だ!」

 

 『ゴアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

 また竜が至近にまで迫るのを見て、

 

「――右にっ!」

 

 皆にタイミングを指示して、前に走る状況から一斉に右に逸れる。

 すると竜はこちらの動きに対応できず、そのまま前に進んで行く。

 竜の進むその先には深い崖があった。

 

『オオオオオオォォォォォォ…………!!』

 

 竜が崖から落ちた。

 

「おお~~」「落ちたチー」「ラッキーチャア!」

 

「この先に避難所の別の入り口がある! そこまで走れ!」

 

「のろま! 頑張れ!」「く、くま~~~~!」

 

 

『グオオオオオオオオオオ!!』

 

 

『『『!?』』』


 一同は驚いた。

 

 竜は翼を広げて飛んでいた、そうして崖の底から戻ってきた。

 

「と、飛んだチュウ!」「上に上にチー!」「何かヤバそうチャア!」

 

 竜が森の上を飛んでしまっているせいで、木に遮られて姿が確認出来なくなった。

 

「入り口はまだか!」

 

「あれだ! あの穴だ!」

 

 ルロウが叫び、よく見えないが急ぐ。

 

「「「ほ、ほのおチュー!!」」」

 

「――避けろ!!」

 

 前を向いて走ってるのでネズミたちがどうつもりで言ったのかはわからなかったが、竜に関わることに違いないので皆に指示する。

 だが、その恐ろしいさを直ぐに知ることになる。

 

 シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 滝のような流れをした炎が森に降りかかる。

 

「――悪い! 3匹とも!」

 

「「「チュー!?」」」

 

 とっさに頭や肩に乗るネズミたちを走るルロウ背中に乗るように放る。

 

(くっ!)

 

 そうしたのは炎が前に振ってきて足を止められたから。

 さらに目の前を竜の炎が流れていく。

 燃え盛る炎が僕と走って逃げる皆との間に火の川を作り、進む道を阻んだ。

 何とかして道を探すが、見つからない。

 微かに炎の向こうで、ロードを呼ぶ声がする。

 炎に遮られて見えないが、皆は無事のようだ。

 心配されるのは当然かもしれない。

 けど返事は返せない。

 

 ズダン!!

 

 背後に竜が降り立ったから。

 戦慄するほどの圧迫感を背中に受ける。

 


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