第348話 文句のない団長リョウ
枯れ木の森。
トゲコッコーが盗賊団相手に無双していた。
「ああぁ!!」「うああ!!」
ブオンと愛槍ツキキツを振り回すと盗賊たちは血しぶきを上げながら絶命していく。
「痛ってーー」
腕を掠めたフリスビが言う。
「あのやろーー」
横腹を掠めたフセルが憎々しげに言う。
「くっ、バケモノが……」
マテヨが間合いを見計りながら言う。
「全然底が見えねーー」
オテダシも苦戦していた。
「リョウ前に出すぎるな!! もしものことを考えろ!!」
スワリオが忠告する。
「バカやろーー!! ここで考えることはこいつを倒すことだろーが!!」
剱山刀を構えてトゲコッコーの前に出るリョウ。
「バカな奴め!! トゲコッコー様が倒されるものか」
手のひらサイズの小さな魔物ベッカーが言う。
その時、ガッと地盤がひっくり返ってきてトゲコッコーたちを襲った。
「――――!!」
ドオン!! と音を響かせ、下に居たベッカーを潰す。トゲコッコーは何とかこの攻撃を避けた。
「ベッカー様が……」
トゲコッコーの愛槍ツキキツが喋る。
「来るのが速くないか?」
リョウが攻撃を放ったと思われる人物に言う。
「独り占めは良くないな~~、オレも乗っかってんだからな」
シャベル型の武器を肩に担ぐレトリバーとシャベルマス団の盗賊団員が応援に駆け付けた。
「来るぞ!!」
その時、トゲコッコーがリョウに向かって走る出す。
しかし、ビギッと足元が割れて、バゴゴゴゴゴと爆発し体勢を崩すトゲコッコー。
「爆開剣!!」
「意外だなぁーー!! もう逃げたかと思ったぜ!! ダイチ!!」
導火線のようにひびの入った地面に沿ったものは、埋め込まれたスコップのような剣だった。今の爆発はこの剣の効果である。
「邪魔なら帰ってもいいんだぜ!!」
ダイチがスコップ状の剣に足をかけて言う。
「構わねぇ!! 勝手にやれ!!」
リョウが走り出す。
「トゲコッコー様私を――!!」
ツキキツが言う。
「剱山刀!!」
リョウが剣を振り地面に突き刺すと、無数の斬撃が生まれトゲコッコーを襲う。
「申し訳ございません。トゲコッコー様」
トゲコッコーの右腕と共に霧散化するツキキツ。
「次はお前だ!!」
リョウが吠える。
しかし、爆発した地面から足を抜け出して態勢を整えたトゲコッコーはリョウに爪の一撃を食らわせた。
誰もが声を失った。そしてトゲコッコーはリョウを蹴り飛ばし、枯れ木を次々折って行き、吹っ飛ばす。
『『『団長――!!』』』
リョウは肉を削ぎ落され瀕死の重傷を負った。
宙で回る剱山刀、それをパシッと手にした者がいた。
「コケコケコ!!」
トゲコッコーがその者に気づく。その者は剱山刀を持って走り出した。
「何だアイツ!!」
レトリバーが言う。
「オイオイ、バカか!! 死にてーのか!!」
ダイチが言う。
「コケコッコー!!」
叫ぶトゲコッコーはさっきリョウに浴びせたように爪を振るうが、予想外の乱入者はこれを見切り回避する。
そして、トゲコッコーの肩に足をつけ跳び、
「取った」
襲撃者オハバリは言って、地面にズザザザザッとスライディングする。
「ココケ!!」
剱山刀をもろに食らったトゲコッコーはその場で立ち尽くしていた。
そして、襲撃者オハバリがスタスタとゆっくり歩いて、トゲコッコーを通り過ぎる。
そして通り過ぎていくとトゲコッコーは霧散化して消えていった。
オハバリはツルバシセン団団長の元へやって来る。
瀕死の重傷で今にも死にそうだった。
「仇は取った。ツルバシセン団の団長さん。この剣貰って行っていいか?」
オハバリが言う。
「オイ、ガキィ!!」
フセルが吠える。
「バカ野郎、やれるわけ――」
オテダシも抗議するが、
「ま……て……何……に……使……う」
息も絶え絶えのリョウが聞く。
「世直し……」
オハバリは覚悟のある表情で答えた。
「持って……け……剱山刀って……言う」
「剱山刀ね、ありがとう団長さん」
オハバリはくるりと踵を返し、去って行った。
「スワリオ……ツルバシセン団は……頼むぜ」
リョウは託した。
この時、
(見ろよオレ)
フセルは吠え、オテダシは歯を食いしばり、マテヨは髪に隠し、フリスビは伏せて、泣いていた。
(文句ねーだろ)
盗賊団結成時を思い出す。その思いと共にリョウは息を引き取った。
「リョウ……」
哀しみの余韻に浸ることなくスワリオが立ち上がる。
「立て!! ツルバシセン団!! 敵が来るぞ!!」
リョウのバンドを頭から外し、スワリオは自分の頭に巻き付ける。
「人間共!!」「よくもトゲコッコー様を!!」
魔物たちが押し寄せてこようとしていた。
「奴らからすべて奪え!!」
スワリオが指示を出すと立ち上がるツルバシセン団。
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』
そして再び戦いへと赴くのであった。
地盤をひっくり返すレトリバー。
地面を爆発させるダイチ。
魔物と盗賊の戦いはまだまだ続いていく。
◆ ◆ ◆ ◆
枯れ木の森・欲深き溝の近く。
ここではスワンがロードたちの帰りを待っていた。
「あんな所にも人がいた」「覚悟しろ人間!!」
空飛ぶ魔物たちに見つかるスワン。
「――――!! まずい見つかった」
立ち上がろうとするスワンだが、蓄積されたダメージのせいで、
「身体が――――」
上手く立てないでいた。その時、
「うああ」「なっ!!」
魔物たちは矢に襲われた。
「おーい無事か!!」「いたぞあのねーさんだ」「ねーさん来たぞ、助けがいるだろ」
スコップザラ団が戻って来た。
「どうして……」
「アンタがオレたちにしてくれたのと同じだ」「恩を返しに来たんだよ」「ねえさんみたいな人間は初めて見たぜ」「盗賊なんかよりよっぽどかっこいいよな」「いっそ盗賊やめてねえさんみたいになるか」
盗賊たちは好き勝手いい魔物たちを撃退していく。
「あ、ありがとう……」
スワンは小さな声で言った。
この時、
(ロード、ハズレ、こっちは大丈夫だから、無事に帰ってきてね)
スワンはそう願っていた。




