第345話 宝の番人アマノ
タタタッと緑の襲撃者が両手の葉っぱ状の剣を構えて走ってくる。
ガキン!! ロードは腰に提げた双剣を鞘に納めたまま、攻撃を防いだ。
「待て、話を――!!」
緑色の襲撃者がその場で回転し、ロードの剣を葉っぱの剣で払った。
(何だ……こいつは……生命力を感じない)
ガキキキキキキンと尋常ならざる動きで攻撃してくる緑の襲撃者、ロードが下がりながら葉っぱの剣の攻撃をいなしていく。しかし――
「――――!!」
ガキンと赤い剣の方を手放してしまう。当然だ、もうロードの身体は生命力を分け与えすぎて限界に近かった。
ロードは一本の剣で、振り下ろされる二つの葉っぱの剣をギリギリいなしていた。
(人間じゃないのか?)
ガキン!! 葉っぱの剣と赤い剣の鞘がぶつかる。
(こいつ強い)
いつの間にか緑色の襲撃者のフードが外れ素顔を露わにしていた。黄緑色の長髪をたなびかせていた。
「一体何なんだ……彼は……」
ガシラ先生が二人の戦闘を見る。
「どうしてロードくんに襲い掛かっているんでしょう」
ヂカラが訊いてくる。
「しらべたい」
そわそわするモト。
「――――――!?」
宙に跳んだ二人だったが、ロードは横腹を蹴られた。そして葉っぱの地面に落とされる。何とか体勢を立て直し着地する。そこを葉っぱの剣で突き刺して来る襲撃者。ガッと剣が刺さってロードは縦に後転して着地し、ガッと剣が突き刺さってロードは縦に後転する。要するにバク転の連続で葉っぱの剣による猛攻を避けているのだ。
(くそっ、ばてて来た)
ぐらりとするロード。
着地した襲撃者は右手の葉っぱの剣にロードに突き付ける。そして地面の葉っぱがゾゾゾゾゾゾゾッと襲撃していく。ロードは横に転がって全ての葉っぱを回避した。葉っぱは矢のように後ろの壁に突き刺さっていく。
(葉っぱ?)
ロードは足元に気づいた。わずかなザッという音がしたことで知る。足元の葉がロードに襲い掛かる。
「――――!!」
ゾアーーーーッと葉っぱが下から上へ噴射する。
「ミチル!!」
青い剣の飛ぶ力でロードは下から来る攻撃を全て飛んで避けて行く。ゾアーーーー、ゾアーーーーと葉っぱが次々、噴射されていくがロードの移動速度には追い付かなかった。
「は、葉っぱが――」
ヂカラが驚く。
「もしやあやつは――」
ガシラが襲撃者の正体を勘繰る。
ギョロリと襲撃者の目がしらべ隊に向けられる。そして走ってくる。
「うわぁーー!!」
「来たぁ!!」
余所を向いた襲撃者はロードの蹴りによって吹っ飛ばされた。ドオン!! と壁まで激突していった。
「おお、ロードくん助かった」
「まだいたのか!? 早くここから離れてくれ! あの人間かも魔物かもよく分からない奴は何とか食い止める」
「じつは、あれの正体は人だが、アマノだ」
ガシラ先生が衝撃の事実を告白する。
「――!! アマノ? このダンジョンを作った人か! どういうことだその人は千年以上も前に亡くなったんだろ!」
アマノは壁に激突し、その下の緑の茂みに倒れていた。
「おそらくアレは生者ではない。あのカメレオンのような目、強欲王ゴスベージャスの力によって動いておる。その証拠にアレの言動はゴスベージャスの宝に近づいた我々を敵視していた」
ガシラ先生が説明する。
「強欲王ゴスベージャスの力……?」
ロードはアマノの方を見る。
「私たちはいくつもの遺跡をしらべ、強欲王の力についても調査していました。その強大な力であらゆる物を自分の道具にしてしまうのです」
モトが説明する。
「あのアマノという人はかつてゴスベージャスと戦い深手を負ってたぶんその時にああなるように強欲王が施したのでしょう。死者を自分の道具として奪われた宝を守る番人としている力」
ヂカラが説明する。
「「「カメレオンの呪印」」」
しらべ隊が呪いの正体を言う。
起き上がったアマノが周囲の葉っぱを上空に集める。そして無数の矢のようにロードたちに向けて放つ。
「その呪いを解く方法は!!」
言いながらミチルの力で斬撃を飛ばし、矢にょうな葉っぱと相殺させる。
「呪いの証たる印を身体から切り離すことだ!!」
ガシラ先生が言う。
「それか役目の動機、宝が破壊されてしまうとか!!」
ヂカラが言う。
「宝はないんですけど」
モトが言う。
ロードとアマノの剣が交差する。その時ロードはアマノの首元を見た。
(印はアレだ、だがこれほどの奴を相手にそんな余裕は……)
キンと鞘に収まった剣と葉っぱの剣の持ち主が距離を取る。
(もう、そんな体力もない……)
(そもそも死者とはいえ人の首を切るなんてしたくない)
キキキキンとまた剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。
「先生、何か方法は……」
「う~~~~む」
「せめて、あの死者の身体がどうなってるのか調べられれば」
「それだモト!!」
「えっ、しらべる?」
「ロードくん彼は死者だ!! だが死者だとしても何千年も前の肉体がそのまま残っているのは不自然だ!! おそらくそれも呪いの種なのだ!! 死者の身体を腐敗させず、維持し続けている!! ならば、その呪いが発動したのは、アマノが死んだその瞬間……生と死の間、臨死状態だ!! 今もその状態を維持し続けているはずだ!!」
「………………」
ロードはアマノと戦いながら、しらべ隊の話を耳にする。
「死者でなければゴスベージャスの物ではない、その呪いは発動しないのだぁ!!」
キィン!! と剣と剣が接触する。
「――――!!」
ロードはアマノあら距離を取り、
(そうか……オレの生命力をアマノに与えれば呪いは発動しないということか)
(だったら……生命力を左拳で叩き込む)
その時、ガクンとロードは膝から崩れ落ちた。
(――――――!?)
(身体が動かない)
ぐらりと揺れるロード。誰がどう見ても隙だらけだった。
そこにアマノが両手の葉っぱの剣を振り下ろして来る。その時だった。
バッとやって来た者がいた。
「オラアァ!!!!」
ダン!! と鞘に収まった赤い剣を振るう緑色の髪を乱雑に切り取ったものが乱入し、アマノを地べたに押し付けた。
「グラス……」
泣き止んだグラスがロードの身を助けた。




