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第344話 ロードとグラスの決着

 ダッとロードに向かって走り出すグラス。


「――――!?」


 驚くロードは何かをされたわけではないが、グラスはその腰に提がっていた剣を引き抜いていく。


 両手に剣を持って下がっていくグラス。赤い剣と青い剣を奪ったグラス。


「ミチル!!」


 精霊であるミチルの宿った剣に呼びかけると、スルッと青い剣がロードの元へ飛んで行き鞘の中へ納まった。


「自由か……だったらこうするのも自由だ」


 赤い剣をヒュンヒュンと振りまわし肩慣らしするグラス。


「テメーは言ったな、自分だけを殺せと!! 信じてんだろ!! オレが人を殺さねーーって!! だったらそこから一歩も動くな!! 目も反らすな!! 試してやるよ!! お前が本気でそう思っているか今ここで!! できるかどうか!!」


 グラスが赤い剣の切っ先をロードに向ける。


「そういうバカみたいな死に方がお似合いだ!! かかしやろーー!!」


 グラスが腰を落とし剣を構える。


「オレは人を殺せねーー臆病者でも、腰抜けでもねーー殺せる!! お前を殺せるぞぉ!! これは脅しじゃねーーその戻った剣でオレを殺した方がいいなあ!!」


 ビリビリとした空気が場を支配する。


「お前を殺す!! 本気の殺気だあーー!! テメーならわかるだろ!!」


 殺気を放つグラスがロードに向かってダッと走り出す。


「死ねーーーーかかし!! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 殺す!! 殺す!!」


 ロードとグラスは目があったまま二人の距離はだんだん縮まり、そして――


「おおおおおおおおおおおおおお!! 殺おす!!」


 ロードは目を逸らさず剣の軌道を見ず、グラスの目だけを見ていた。


 グラスの振った剣がロードを完全に捉えていた。殺すために、殺すために、上から下へ振り下ろされる。


 木の葉が舞い上がった。そして――


 グラスの持った剣がロードの額を直前に止まっていた。


 ギチギチと剣を握るグラス。しかし殺すという一線は超えなかった。


「これが本当のお前だよ。その強い優しさが今、殺すという言葉からオレを救ったんだ」


 グラスは剣を落とす。そしてガクンと膝から崩れ落ちる。顔には涙が伝っていた。


 スッと落ちていた赤い剣を拾い、鞘にチャキンと剣を納めるロード。


 ポタポタポタと葉っぱの地面に涙を落とすグラス。オハバリのことを思い出していた。そして下唇を嚙み、ガザッと前のめりに倒れるグラス。涙声をぐっとこらえているようだった。


 ロードとグラスの戦いは決着がついた。殺せなかったのではなく、救ったのだった。


 その時――


「おお、ロードくん無事だったか!!」


 しらべ隊の一団が入り口から入って来ていた。


「――――!? しらべ隊の人!? 何で待っていなかった!」


「あまりにも遅かったのでな、、、にしても酷い怪我だ」


 ガシラ先生が言う。


 タタタタタッと走っていたしらべ隊が切り株の上にあった宝箱を見つける。


「おお、先生、宝箱です!!」


 ヂカラが興奮する。


「もう!! しらべる!!」


 我慢の利かないモト。


「コラァ!! 私を差し置いて調べるとは何事か!!」


 ガシラが言うが、


「あの先生……」


「しらべられない」


 しゃがみ込んで宝箱の中身を見る二人が言う。


「中には何もありません」


「むっ、ということは、既にロードくんが……?」


「オレは知らない」


「ではなぜ」


「おい、そんなことしてる場合じゃない! 今外では魔王があばれているすぐに戻ってくれ」


 ロードは気づかなかった。


「魔王? こんなに静かなのにですか?」


 ヂカラが訊く。


「外には何も起きてませんが……」


 モトが口にする。


「何だって!?」


 ロードが驚いたとき、サァーーーーっと木の葉が舞った。


 はるか上空で魔王と戦っていたはずの緑色の襲撃者が舞い降りて来た。


「――――!?」


 ロードはその得体のしれない力を感じた。


「何だ?」


 ガシラ先生が訊く。


「人が落ちて来た」


 ヂカラが大発見する。


 ザッザッとフードを被った緑色の襲撃者が歩み寄ってくる。


「待て!! 魔王はどうなった?」


 ロードが話しかけてみた。しかし答えは――


「ゴスベージャス大王の宝に近づく者……排除する」


 顔に不気味な紋様の浮かぶ緑色の襲撃者が、ロードたちに向けて放った言葉だった。

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