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第343話 グラスの生き方を信じるロード

 ロードとグラスは対面していた。


「救う!? このオレを!! 誰の為にもならねーオレをかぁ!!」


「そんなことはない、少なくともオレはお前に助けられた。人に金をせびられたとき、牢に閉じ込められた時、盗賊に囲まれたとき、魔王たちが町と人を襲っていたとき」


 グラスはロードに近づいてその胸ぐらを掴む。


「何を勘違いしやがってやがる!! そんなもんでオレがいい人間に見えたか!! テメーは知らねーんだよオレを!! どんな奴でどんな生き方をして来たか!! 盗み、殴り、騙し、壊し、見捨てて、奪う」


「それはこの世界では皆がしていることなんだろ、何人も見た」


「そうだぁ!! だがなぁお前のよく知る奴らはしょせん盗賊だ!! 一人でやってる俺とは違う!! オレはなぁーオレの為なら、アイツも見捨ててここまで来た」


「アイツ?」


「そうだぁ……オハバリを蹴り落として……オレはあそこから逃げて来たんだよ」


「――――!?」


「奴隷が逃げ出そうとするとどうなると思う……オレ一人を逃がしたアイツがどうなると思う!! オレは知ってんだ!! 何年も懲罰を受け、奴らの玩具にされんのを!! オレはアイツにそうするように仕向けた!! 正真正銘の悪人だぁ!!」


「悪人のお前が……どうしてそんなに涙を流してるんだ」


 ロードはグラスの表情を見ていた。その顔には涙が伝っていた。


「――――!!!?」


「後悔してるんじゃないか? 間違っていたと思って来たんじゃないか? 仲間を見捨てたこと、オハバリを裏切ったことを――――」


「っるせーーーー!! 正しい、あれで正しいんだよ!!」


 グラスがロードを突き倒し馬乗りになる。そして両拳で何度も何度もロードを殴る。


「ここはなーーそういうところだぁ!! オレがそうだった!! あの大人共はオレのものを奪った……たった一つの宝を奪った!! わかるか!! あの痛さが、奪われる痛さが!! あの星みてーにキレイだったオレのたった一つの宝がきたねぇ大人共に奪われる痛みがわかるかぁ!! だから力の限りぶっ倒してやった!! 死んだって構わねぇぐらいなぁーー!! 何年も罰は受けたが、オレは間違ってねーー奴らに言い続けてやった!! そうやってオレは知ったんだ!! ここは奪うか奪われるかってところだってなぁ!! だったらオレは奪う!! もう奪われねーー、オレから奪うヤツは痛む前に殺してやる!!」


「だがオハバリはお前の仲間……」


「知るかあ!! アイツを蹴り倒さなかったら、オレはまた捕まっていた!! そうしなきゃここでは生きていけねーー!! アイツにもそれを教えてやったんだ!! 誰も信用ならねーことをなぁ!!」


 グラスは言うが、ブワッと目から涙が溢れ出す。そして馬乗りの状態から立ち上がる。


「…………」


 ロードは起き上がる。


「くそ!! 何で出て来やがる!! クソがぁ!!」


 顔を隠し涙をぬぐうグラス。


「オレにはわかる。その涙、お前は優しいヤツだ。オハバリも救いたかったはずだ。あの日、あの街に行ったのはそういうことだろ?」


「救い!! 違う!! アレは勝負の為だ!!」


「オレと勝負をするためにお前はオレを信じた、自分を追いかけてくると、裏切らないと思って信じた」


 ロードは口元の血を手の甲で拭う。


「だから、勘違いすんじゃねーー、信じてねーー、救いにも行ってねーー!!」


 ザッザッとロードに近づくグラス。


「本当に違うのか? オハバリを救いたかったのも、オレを信じて待っていたのも違うのか!!」


「違う!!」


 グラスは殴る。それをロードは腕でガードする。


「そんな人間じゃねーーオレは!!」


 左手の拳を叩き込むが、ロードの右手にパシッと阻止される。


「違うんだよ!! お前とオレは違う!!」


 体力も限界なロードに対し、グラスは渾身の右ストレートを顔面に叩き込む。ロードは葉っぱの地面に倒れ込む。


「何でお前はそうなんだよ、そうなれんだよ……オレを信じて、オレを救って、オハバリみたいなこと言いやがって――オレはお前とは違うんだよ!! そんなふうにやれるわけねーだろ!! なれるわけがねぇんだよ!! なくしちまったよ!! そんなもん!! もう信じたくねーよ何も!! 自由に勝手にさせろよ!! そんな生き方出来るわけねーよ!!」


 宝石を磨き、仲間と笑い合い、星空を見上げていたことを思い出す。


「グラス、お前はオレを信じた……なら、次はオレが信じる」


 ロードは再び立ち上がる。


「この世界で生きる為だというのなら多少のことは仕方がないかもしれない。好き勝手に生きるといい。お前は優しいから人を決して殺さない。オレはそう信じるよ」


 ボロボロのロードが笑った。


「これがオレの答えだ……自由に道を進めグラス」


 ロードの答えを聞き俯くグラスは何かを考えていた。

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