第332話 目指すは希望のダンジョン
欲深き溝にミチルの飛ぶ力を使ってゆっくりと落ちていくロード。
そして彼にはかつて石碑を読み解いたしらべ隊がロードにしがみついていた。
「おーーーーキミはいつぞやの……また世話になるとは」
ロードにしがみつくガシラ先生。
「おおーーーーガシラ先生怖いですーーーー」
ガシラ先生にしがみつく助手のヂカラ。
「しらべたーーーーい」
ヂカラにしがみつく助手2号のモト。
「戻れ……ミチル」
ロードは精霊ミチルに命ずるが、ヒューーーーンと落ちていく。空を飛んで上がってはくれなかった。
(流石に4人は許容量を超えているのか)
ロードは困ったい顔をした。
「済まんがもうちょい早く降りられんのかね?」
ガシラ先生が訊いてくる。
「アンタたち何しに来た……下に何があるのかわかっているのか」
「無論でーーす、下にはあのアマノのダンジョンがありまーーす」
ヂカラが叫ぶ。
「しらべたーーーーい」
モトが欲望をさらけ出す。
「そうじゃなくて魔王がいるんだ! 分かっているのか!」
「魔王ってなんですか?」
「しらべたーい」
「何があろうとももはや後戻りは利かん、わしらは遺跡に導かれここまで来ただけだ。どう降りようと半日考えておったら、キミが飛び降りた。それでこの通りだ」
「くっ」
ロードが不本意な顔をする。
「ロードォ!! 今人が!!」
上からスワンの声が響いてくる。
「心配ない生きている!!」
「ほっ」
安心するスワンだった。
「しかたないアンタたち絶対手を離すな! 絶対だ!」
「うむ」「おお」「しらべたーい」
(帰るときは順番に一人づつ送る。問題はミチルに疲れがあるかどうかだ)
(いや、魔王を倒せるかどうかか)
(いや、必ず倒すんだ)
ひゅーーーーんと4人は落ちていく。
◆ ◆ ◆ ◆
真っ暗闇の中。
(何があった……)
フーーーー、フーーーー、呼吸を整えるハズレ。
(もの凄い振動が立て続けにあって……)
(めちゃくちゃな浮遊感で上も下もなくなった)
(いや、落ちたような感覚か)
(それで気づいたら、ここ、真っ暗だ)
(あの世ってやつか)
(まぁそんなわけないか)
大の字に倒れていたハズレは起き上がった。
目の前には天翔木馬トロイアが倒れていた。
そして下いっぱいには葉っぱが敷き詰められている地面だった。
(状況から察するにあの木馬が何らかの原因で欲深き溝に落ちた)
(その落ちた衝撃でオレはここまで吹っ飛ばされたわけだ)
(なぜ生きてる?)
(落ちたにしても地上が見えないほど深い)
(これで助かるわけがない)
ハズレは上を見上げていた。つづくのは真っ暗闇。
「人間共を追え!!」「トロイアをぶっ壊しやがって」「命を奪ってこの罪を償わせるのだ」「アレだあそこに入っていた」「追え! 魔王様に近づけさるな!」
ゾロゾロと木馬から出てくる魔物たちがある場所に向かって行く。
この時、
(魔物まで生きている)
(進んで片付けるには不可解が多すぎる)
ハズレはトロイアの残骸に隠れていた。
(けど、きっとスワンとロードは生きているだろう)
(なんでかなーーこの大量の葉っぱのおかげだったりするのか)
(この光源の役割も、葉っぱみたいだが、どうなってるんだ?)
ハズレが光る葉っぱを見る。
(だが、ここが欲深き溝なら魔王は当然ダンジョンに向かっている)
(ロードたちも必ずそこへ向かう)
(そっちへ向かった方が探しに行くよりも合流の効率がいい)
ハズレは物陰から走り出した。
(とにかく時間が惜しい、動く木馬に何かあったとか、生き残った理由は後回しでいい)
(ダンジョンだ)
(希望のダンジョン。グラスを助け、魔王をどうにかして倒す)
(溝に落とす手はもう使えないけど)
ハズレは剣の柄に手をそえる。
「ん!! アレは!?」「うおっ人間だ!! 奴らの仲間だ」
ハズレは鞘から剣を引き抜き魔物を斬り裂いていく。魔物は霧散化した。
(どこだ。ダンジョンここにあるはずだが……)
その時、魔物の集まる広場を見つけた。その広場は人の手で作られたのが一目瞭然だった。
(アレか)
魔物たちのたまり場にもなっている場所だったが、構わず突っ込むハズレ。
「人間!!」「アイツも殺せ!」
シュボっと剣が燃えて、振り抜くと炎が勢い良く魔物たちに向かう。そして火薬玉を飛ばして大爆発を起こした。
ザッザッと階段を駆け上がり、広場の中央にやって来る。
そこにはまたも底の見えない穴があった。
(深そうだな)
(頼むからここと同じように)
(生き残る前提の穴であってくれよ)
ハズレがそう思いながら、穴の中へと飛び込んだ。
そこは希望のダンジョンの入り口だった。




