第330話 横から全てを掻っ攫うドリドリム団
トロイアの燃料供給が閉ざされて少し経った頃。
スワンがクウィップを倒す少し前。
枯れた森の地を普通のオオカミより、一回り大きいオオカミに乗って走る集団がいた。
それは盗賊ドリドリム団。
「魔王らしき影が朝、溝まで落ちていきやがって手ー出せなかったが丁度いい」
「あの木馬をぶんどって溝まで落ちる」
「いいかドリドリム団!! 魔物の野郎どもを一匹残らずぶち殺せ!!」
「魔王から全てを奪いつくせ!!」
ドリドリム団お頭、テンロウが声を張り上げて言う。
『『『おおおおおおおおおおおおお!!』』』
その盗賊団は合計約500名はいた。
ドリドリム団の集団は崖から飛び出して、アカが付けたトロイアの穴から内部へと侵入していく。
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トロイア内部へと乗り込んだドリドリム団は魔物の大群と接触する。
そこはトロイアの動力室、通路の下に液体を入れた大きな木の筒があった。直径50メートルはあり、それが数多く並んだいた。
「邪魔だーー!!」「どけーーーー!!」
オオカミに乗ったままのドリドリム団。全員が武器を構え襲い掛かってくる魔物たちを次々薙ぎ払い、液体の入った動力炉へと落ちていく。
『『『ああああああああああああああ!!』』』
動力炉に溶かされる魔物たちの断末魔が聞こえてくる。
「乗り込んできた!」「人間がぁ!」「お、落としてしまえ」「トロイアの燃料にしてしまうのだ!」
ドリドリム団が弓矢を引き、矢を放つ。
「わぁーーーー!!」「ああああああ!!」
ワーーーー、ギャアーーーーと魔物たちが次々と大きな木の筒に落ちて動力源になる。
その時、トロイアのエネルギーメーターが回復していった。
「トロイアの動力が回復した」「動き出すぞ」「燃料が戻った」「奴らは一体何なんだ!?」
魔物たちがざわめく中、ピピーーーーとエネルギー充電完了の音が響く。
◆ ◆ ◆ ◆
枯れ木の森。
今まで止まっていたトロイアが前片足を上げて動き出す。
そしてそのまま、バリスタに刺さったままの身体のまま前に進んで行く。
下にあった湖から離れていく。この時スワンとクウィップは湖の中で対峙していた。
そしてトロイアはそのまま進んで行くと、前方の欲深き溝を無視して進んで行く。
そして欲深き溝に片足を突っ込み、バランスを崩して落ちていくトロイア。
ひゅーーーーんと何千メートルもある溝の暗闇に落ちて見えなくなっていった。
嵐が通り過ぎたかのように静まり返る枯れ木の森。
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湖。
バシャッと顔を出すスワン。
「――――!! えっ? 木馬が消えた」
キョロキョロと辺りを見渡すスワンだった。
◆ ◆ ◆ ◆
枯れ木の森。
盗賊連合団と対峙していた魔物たちがざわめく。
「な、なんてことだ」「トロイアが落ちてしまった」「人間共の仕業かおのれ!」「もう戦いどころじゃない」
魔物たちが過ぎ去ったトロイアを見て固まっていた。
「オイ! 団長どーすんだ!」
オテダシが訊く。
「手を止めんな! 戦えオテダシ!」
剱山刀を振り魔物を撃退していくツルバシセン団団長リョウ。
「勝手に落ちやがって何考えてるんだ、こいつら」
フセルが鈍器を握る。
「いや、さっきのはドリドリム団の仕業だ!」
リョウが言う。
「――――はぁ!!」
「ちっ、マジで背中を刺された気分だ!」
オテダシは剣を振りながら叫ぶ。
「全部横から掻っ攫って行きやがって、これがテメーらのやり方か……クソオヤジ共」
リョウはそれでも戦い続けていた。
「ちっ、木馬がないんじゃもうここにいる意味はない、俺達は退くぞ」
成り上がりお盗賊団団長コマがそういうが、背後から鋭い爪が狙ていた。
ズガンと爪で刺し貫いたのはトゲコッコー。
「――――!!!?」
その一撃で盗賊コマは命を落とした。
「や、やろーうちの頭を!!」「コマさん!!」
一斉にコマの仇を取ろうとする盗賊団。しかしトゲコッコーは鋭い爪でズガガガガガッと向かってくる敵を切り裂き殺していく。
「「「あああああああああああああああ!!」」」
断末魔と共に団員たちが死んでいく。
「トゲコッコー様、お待たせしました」
そこに尖ったくちばしの細長い胴体をした、槍のような魔物が現れた。
「コッコッコ」
そのやって来た魔物の胴体をバシッと掴み取るトゲコッコー。それがこの眷属使魔の武器だった。
「「「おおーーーーーーーー」」」
辺りの魔物が士気を高める。
「ツキキツの槍」
キウイ型の小さな魔物がその魔物の名を語る。
「コケコケコーーーー」
「人間ども許さん皆殺しにしてやるとトゲコッコー様はおしゃっられている」
魔物たちと盗賊団の戦いはトロイアが消えても続く。




