第328話 絆結びの腕輪に誓った諦めないという道
「ああああぅあああぅぁあああぁぅ!!」
バシシシシシシシシシシン!! とスワンの全身がクウィップにムチ打たれる。
「ふぅん」
つまらなさそうなクウィップ。
「ああぁあうううあああうう!!」
逆さまに四肢をつられたスワンが鳴く。
「あまりいい声では鳴いてくれないのね」
クウィップはそこで手法を変えることにした。
「悲痛の響きと苦痛の叫びは違うのよ」
「うっ!! がぁ!!」
手を使ってバシンバシンと往復ビンタするクウィップ。
そしてムチ打ちを再開する。今度は一本一本の攻撃をより強力にして、
バシン!! 腹部を重点的に狙う。
「あう!!」
バシン!! 全身どこでもいいから狙う。
「くぅ!!」
バシン!! 足のみを狙う。
「いう!!」
バシン!! 背中を狙う。
「あはっ!!」
バシン!! 握りしめていた拳を狙う。
身体中にムチの後を作ったスワン、次第に身体がビクビクと痙攣し始めた。
この時、
(痛い!! 痛い!! 痛い!!)
(熱い!! 熱い!! 熱い!!)
(足が、腕が、ちぎれそう!!)
(全身の皮膚がはがれそう)
(無理!! 無理!! 無理!!)
(勝てなかった。倒せなかった。出来なかった)
(もう逃げたって――)
スワンが諦めかけたその時――
カランと木のパイプの上に何かが落ちる音がした。
「―――――!?」
スワンの目の前のに落ちた物それは絆結びの腕輪。
「んふ……」
スワンの唾液を垂らす口の口角が吊り上がった。
「痛っ!!」
痛がったのはスワンではなくクウィップだった。
それはスワンがムチの一本を噛み締めていたからだ。
「っっ!! まだそんな目を……」
クウィップが睨む。
そしてスワンは思いっきり首を振ってムチを、ブチッと千切った。
「うあああぁうう!!」
今度はクウィップが叫んだ。
「ああああああああああ!!」
とちぎれたムチを引き下げる。
「水霊の鱗」
静かに宣告する。
四肢がスルンと縛られていたムチから抜け出して、片手を木のパイプに着け、そのまま後転する。その際、絆結びの腕をを拾い上げた。
ぷっと千切ったムチを口から吐き出すスワン。そのムチは霧散化して消えていった。
「こ、この――――!!」
クウィップが怒る。
この時、
(そうだ、これに誓ったんだ……最後まで諦めない道を)
絆結びの腕輪を持つスワンの瞳に凛々しさが宿った。
「九蛇苦のストッキング!!」
クウィップが強烈な蹴りを横なぎに放つが、サッと上にジャンプして躱すスワン。
キッと目を睨みつかせ、ぐらりとする身体を根性で支える。これは脱水症状の現われだ。
「うううぅ!!」
クウィップの首が、ぐじっとスワンによって鷲掴みにされた。
スワンはダッと地を蹴って、そのままクウィップごと木のパイプから落ちる。
「――――!!」
「今度はわたしが捕まえる!!」
下に落とそうとしたスワン。しかしクウィップは2本のムチを使って、びん!! びん!! と宙にとどまった。
「――――!!」
スワンは落下が止まったことに驚いて一人落ちそうになった。
「捕まっているんはあなたでしょう!!」
ギンと睨むクウィップ。
「私の水はまだ生きている!!」
スワンが宣言する。
「水よ。聖なる力を持って魔の物にその清らかさを知らしめよ」
スワンが詠唱すると木のパイプに水浸しになったカ所に亀裂が入り、ガガガガガガガと次々と切断されていく。
「――――!?」
驚愕するクウィップ。
この時、
(わたしはただ逃げていたわけじゃない)
(辺りに水を散らばせて切断するタイミングを待っていた)
(つまりここ!! もうどのパイプに捕まっても落ちるだけ)
スワンの作戦が成功した。
二人は下まで落ちていく。




