第327話 スワンへのしつけ
トロイア内部。
ハズレは回廊を走っていた。
その奥には扉があった。
そしてその前には魔物の大群がいた。
「――――!!」
マッチ棒を取りだすハズレ。
「なんだ?」「アレは人間」「もうこんなところまで来たのか」「身の程知らずが、ここは魔王フリフライ様の玉座だぞ」「もういい、殺すぞ」
様々な姿の魑魅魍魎が言う。
「魔王の玉座か」
ハズレは前に爆薬丸を投げ飛ばした。
『『『うおおおおおおおおおおおお』』』
構える魔物たち、しかし、火のついたマッチ棒を投げ飛ばすハズレ。
そのマッチ棒は爆薬丸に触れた。瞬間――魔物の大群の中で大爆発を起こし、
『『『ぎゃあああアアアアアアアアア』』』
全ての魔物を一掃した。
そしてハズレは爆風にも耐え、黒く立ち込める煙の中を進み、魔王の間へと入って行った。
そこはトロイア機関の首筋の下あたりの胴体だった。
「玉座は頭部ではなかったのか……」
辺りを見渡すハズレ。前方には眺めのいい窓ガラスがある。そして金銀財宝の山。
この時、
(居ないのか魔王は、もうロードがやったのか?)
(何だ? この財宝の数は……随分集めたな)
(魔物でも惹かれるのか)
(……………………)
そこでハズレは自身の持つ秘宝玉を取り出した。
(まさか、奴らの狙いは、ダンジョンにあるのは秘宝玉か)
(もしここにもあるのなら魔王がいない今持ち出せる)
(万が一盗賊たちの手に渡ったらどんな争いになるか)
(それにもしオレに反応しえくれれば魔王を倒せるかも知れない)
(ロード少し待ってくれ)
ハズレは金銀財宝の山をかき分けて秘宝玉を探し始めた。
その時、ドゴゴゴーーーーンという音がした。
「――!! 何だ!! 木馬全体が揺れたぞ……動き出したのか? スワンは大丈夫なのか?」
◆ ◆ ◆ ◆
トロイア内部・動力室。
木のパイプにぶら下がるクウィップにも揺れは伝わっていた。
この時、
(何? このトロイアの衝撃……動き出した? いえ、燃料が漏れているのだからそれはない……異変なら誰かが対処するはず。それより私はこっちね)
恐怖の仮面からスワンを覗くクウィップ。
この時、
(もう飲める水はない……この船の水なんて怖くて飲めないし)
(もう外に出るか……もう皆逃げ切ったはず)
(ダメ、ロードたちが魔王と戦っている……その間に一人でも多く)
(特にこの眷属使魔は引き付けておかないとダメ)
水のボートに乗りながら、追ってくるムチを躱していく。
(このまま、少しずつ仕掛けて一気に倒す)
スワンにはある秘策があったようだった。
(それしかもう打つ手が……)
(アレ?)
(ムチが追ってこない……まさか私を見失ったなんてこと)
その時スワンは殺気を感じた。振り向くべきではないと思った。
何故なら、後方を向いている間、前方からクウィップが必殺の蹴りを放って来たからだ。
べゴンと人間が中を泳げるぐらいの木のパイプがへこみを入れた。
「気づいてしまったのね。いけない子」
スワンの上着がクウィップの足元にあった。
「ああん!!」
とっさに蹴りを回避したスワンは木のパイプの上に落ちた。
「うっ、まだ生きてる? 横腹掠ってる」
横腹から血が滲んでいた。
この時、
(危なかった……あのスピードで、あの蹴りを受けてたら死んでた)
(あの魔物、あらかじめ周囲の木のパイプに9本のムチを絡ませていたんだ)
(辺りにしかけて、わたしを囲むように……そして攻撃ルートに入ったら)
(即座にムチを縮めて先回りするように蹴りを放つ)
スワンはそう結論付けた。
(まずい、もう身体が……)
ガクッと膝を落とすスワン。
その時、同じ木のパイプにクウィップが降りてきた。
「――――――!?」
とっさに飛び降りようとしたが、スワンはクウィップのムチに捕まった。
「いあ!!」
両腕、両足に絡みつくムチ。
「ダメよ逃げちゃ、フフフ、腰も足もガクガクよ。もう疲れてしまったの? ここからはもっとハードなのに……」
手に持つ小さな鞭で遊ぶクウィップ。
「ふっ、うう!!」
スワンはクウィップに上下逆さに吊るされた。
「そんなに必死にならなくても……」
「殺しはしないから安心しなさい」
「ちょっと痛いのを我慢すればね」
「これからあなたはいけない子から、私の言うことをちゃんと守るいい子に変わるの」
「くっ……」
クウィップをにらみつけるスワン。
「怯えの目に染まり」
「涙で顔をずぶ濡れに……」
「口もみだらにゆがませて……」
「首輪をつけ」
「頭を地に着けて」
「魔王さまへの絶対の奴隷宣言をする」
シュルルルルルルルッと伸ばしていた尾羽のムチをある程度の長さに戻すクウィップ。
「さぁ始めましょう。九蛇苦のしつけ」
バシシシシシンと全身にムチの連撃を食らうスワン。
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
両手、両足が縛られて身動きが取れないスワン。
「あああああああああああああああああああ!!」
ただただ攻撃を無抵抗に受ける事しか出字なかった。
「フフフ。落ちなさい」
「あああああああああああああああ!!」
クウィップのしつけが続く。




