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第326話 九蛇苦の攻撃

 スワンとクウィップの戦いはクウィップが押していた。


 水のボートに乗るスワンは上へと上昇する。


 それに合わせてクウィップも上へ行くために、木のパイプにムチを縛り付けて上がっていく。


「三つ又の槍!!」


 ズオッと3つに分かれた水の槍が伸びる。しかし――


 クウィップはムチで縛った木のパイプを強引に引き寄せて盾にすると水の槍を防いだ。


「くっ、利かないか」


 スワンは水の槍が防がれたことに悔しそうにしてたが、それどころではない。


 クウィップはグイっと盾にしていた木のパイプを引っ張っていた。それは木のパイプを壊す為であり、スワンの上にあるパイプを崩すために引っ張っていた。


 ガコン!! ゴゴン!! とスワンの上のパイプが壊れて落ちてくる。


「――――!?」


 スワンが上に気づいたときにはもう遅かった。


「うああ!!」


 スワンの背中に壊れた木のパイプがぶつかってバランスを崩し、水のボートも掻き消えてしまった。


 ビビビッと悪魔的なムチが伸びる。


「――――!!」


 ビシシシッと両腕、腹部にムチが絡みつく。そして迫ってくるクウィップ。


「水霊の鱗!!」


 スルンと絡まったムチから魚が逃げ出すように抜け出した。


「やぁーー!!」


 スワンは迫るクウィップにカウンターの水の槍を出現させる。しかし、優雅にかわされてしまう。これはムチを別のパイプに絡ませて、そちらのムチを縮ませたせいである。


 この時、

(まぐれで抜け出している訳ではないようね)

(あの滑り抜ける感覚、あれも精霊の術かしら)

 クウィップはスワンの技を分析した。


 クウィップの下に通り過ぎたスワンは、もう1段階下にあった水の手に足をつけた。


「ん……」


 水の瓶を即座に用意してふたを開け飲み干していくスワン。飲まなければバカデカテ戦の時の様に脱水症状になる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 スワンが上を見ると迫りくるクウィップが見えた。


「水霊の祝杯!!」


 水の手が水の弾丸に変わり、クウィップを襲う。クウィップはムチで水の弾丸をはじきまくっていた。


 そこから3本のムチが伸び、宙にあったスワンの両腕を捕えた。そしてスルンとムチから抜け出した。


 しかし、抜け出したはいいが、さらに追撃があった。今度は4本のムチが迫る。そして右足、左太もも、腹部に巻き付かれた。しかしまだ水霊の鱗の効果がまだ続いていたのか、スルンと抜け出すことが出来た。


 空中で宙がえりをしたスワンで、キッと敵の姿を見た。そしてスワンの狙いが発動する。


 ブシャーー、ブシャーーっと木のパイプから水が噴き出した。


 この時、

(パイプの中に水を通していたのね)

 クウィップは気が付かなかったと驚きの顔をした。


「水霊の抱擁!!」


 クウィップは水の檻に閉じ込められた。そして木のパイプの上に着地するスワン。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 息を切らしながら水の入った瓶を取り出す。


 この時、

(あと一本しかない)

 ゴクゴクと水を飲みながら考えるスワン。


 水の檻に閉じ込められたクウィップはムチを外側へ伸ばし、木のパイプに絡みつけた。そしてムチの長さを縮ませて水の檻から脱出した。


「私を苦しませて目覚めさせようとするなんていけない子」


 木のパイプにぶら下がるクウィップ。ゾアッとムチをスワンに向かわせる。


 この時、

(もう、あの尻尾から逃げても同じことの繰り返し、それなら)

 スワンが動き出す。水のボートを作り出し、それに乗って突撃して行った。伸びてくる数本のムチが襲ってくる。


「――――!!」


 そして、接近して来たスワンに驚くクウィップ。水の剣を構えて、


 この時、

(むしろ近づいて攻撃を当てやすくする)

 スワンは考えたのだが、誤算があった。


「がはっ!!」


 スワンが口から息を吐きだした。それは蹴りだった。クウィップから放たれた強烈な蹴りだった。


「うっ!!」


 意識を失いそうになったが、がむしゃらに水の剣を振るったが、クウィップにはサッと避けられ当たらなかった。


「九蛇苦のストッキング」


 その蹴りはスワンの横腹へクリンヒットした。


「おぐ!!」


 蹴りによって吹き飛ばされたスワンは、木のパイプにべドッと鈍い音がして激突した。


「いけない子……ムチしか使わない私を見て、間合いを詰めれば接近戦で何とかなると思ったのかしら。私はむしろ格闘がメイン。あの男たち全員をこの美脚で下してきたの。フリフライ様の眷属使魔、トロイア燃料監督長クウィップ……覚えておきなさい」


 木のパイプの上から美脚を見せつけるクウィップ。その手には鞭も持っていた。


 この時、

(な、なに、あの、蹴り……もう、受けられない……それにだんだん体力もなくなって……)

 何かを吐き出しそうになる口を押さえて、スワンは自らのピンチを悟った。


「ほらほら、私はスパルタよ。起きなさい」


 クウィップはヒュンと風を切り、スワン目がけて必殺の蹴りを放って来る。


 気づいたスワンは前に飛び出し、飛び蹴りをま逃れた。


「この――――」


 スワンは体勢を立て直し、水の剣でクウィップを切り裂こうとした。


 しかし、ベシッとビンタされ倒れてしまう。スワンの足にムチが絡みつこうとする。


「――――!!」


 それをスワンは倒れた状態で横回転し木のパイプの下に落ちて行った。


 この時、

(うっ、どうすれば……)

 スワンはビンタで腫れた頬、蹴りを食らったわき腹を抑え、強敵クウィップを倒せないかどうか考えていた。


 残りの水の入った瓶も一本しかない。

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