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第322話 目覚める魔王フリフライの最強眷属使魔

 トロイアの首筋内部。

 ズババババと肉を切り裂く音が聞こえてきた。

 一人の男が単身魔物の軍団に切り込んだいたのだ。

 それはロード。スワンとハズレを動きやすくするため敵の注意を引いていた。

 もちろんそれだけではない。

 打倒魔王に燃えていた。

 そしてついに、魔王がいるであろう頭部の大きな扉の前に来た。


「頼む、ミチル!!」


 精霊ミチルの力を使い、飛ぶ斬撃を生み出す。横に一薙ぎ、それだけで扉が裂けてしまった。


「や、野郎!!」「トロイアの頭に」「くそっ」「絶対「絶対に殺さないと」


 後ろの魔物を無視して、頭部の部屋に入り込む。


「――――!!」「な、何だ!! 扉が」


 扉を通ったロードはザンと着地した。


「人間!! ここまで来たか!!」「シレイ船長いかがいたします」


 ロードの登場によりざわめく魔物たち。


「無論命を奪え」


 シレイ船長と呼ばれたその魔物は、頭にバンドをし、右目に眼帯をしたフクロウの顔に、一本足の杖を突いた魔物だった。その後ろにはトロイアを動かすための舵があった。


 魔物たちがロードを囲む。そして中心へと流れ込むように一気に襲い掛かる。


「ミチル!!」


 ロードは剣を手に一回転し飛ぶ斬撃を作り出す。すると襲い掛かってきた魔物たちが斬られていった。


「ここに……いると思ったんだが……居ないのか? 教えてもらおう。魔王フリフライはどこだ」


 覇気のあるロードを前にあわわと恐れをなした魔物たち。


「やむおえんか……トロイアを起こせ!!」


「はっ!! しかしシレイ船長それは……」


「構わん責任は取るやれ!!」


「はっ!!」


 地位の低そうな魔物が鐘のある方へと向かい、金槌で何度もたたく。


 ゴゴゴンっと重低音のある音を鳴らしていた。ゴゴゴゴン。


「何をしている?」


 フクロウの魔物に訊いてみる。


「生憎、人間共にこのトロイアを好き勝手にされるのは魔王様に申し訳がない」


「魔王は、ヤツはどこだ!?」


 タッと飛び出すロード。


「何も渡さん。トロイアも、情報も、ただ奪うのみ、それがフリフライの配下たる。我々だ」


 シレイ船長という魔物もタッと飛び出した。


 空中で杖と剣がガキンとぶつかる甲高い音が鳴り響く。


 ロードは左手で二本目の剣をシレイ船長に突き刺そうとした。だが――――


「クルゥッパァ!!」


 その特異な鳴き声は衝撃波でロードの身体を吹っ飛ばした。


「衝撃波!?」


 ロードが態勢を立て直し着地する。


 シレイ船長も着地する。


 その時ズズンとういう音がして、ロードは浮遊感を覚えた。l


「なっ!! 木馬が落ちてく!?」


「違うな人間」「馬鹿めこのトロイアが落ちるものか」「降りようとしてんだよ」


 ズズズズンと音がする中、魔物たちが言う。


「人間共めお前たちはしょせんこのトロイアをただ空飛ぶ船との認識だろう。あの程度の仕掛けで止められるなどと、勘違いもいいところだ。身をもって知れ、お前たちが誰を相手にしているか……トロイアこそフリフライ様の最強眷属使魔なのだ」


 シレイ船長は意味深に告げる。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 天翔木馬トロイアはバリスタによって動きを封じられていたが、そのまま鐘の音を鳴らして、滞空状態から地上に降りてきたのだった。


「な、なんだ!! なんだ!?」


 洞窟に隠れていたスコップザラ団のドロが訊く。


「くっそ! 暴れ馬かよ!」


 団員が言う。



 ▼ ▼ ▼



「めちゃくちゃだ、あんなのバリスタが……」


 ダイチが愕然とする。


「くっそ―聞いてねーぞ……ただの船じゃねーのか」


 団員が言う。



 ▼ ▼ ▼



 森の中。


「生き物なのか?」


 リョウは木馬が降りてくるさまを見て言う。


「団長!! ああ!!」


「――――!!」


 団員が断末魔を上げ経った今絶命したと知った。


「コケコケコ……」


「お前たちは終わりだと眷属使魔たるトゲコッコーさまがおっしゃっている」


 謎の小さなキウイ型の魔物がトゲコッコーの通訳をする。


「くっそ!! あのバカでケー木馬をどうにかしねーと潰されるだけだ」


 リョウが焦る。



 ▼ ▼ ▼



「下がれ、下がれ!!」「木馬から離れろ」


 木馬の足が逃げていく盗賊たちに向かって、トロイアに意思で足踏みされる。


 ズズンとトロイアの足によって、たくさんの盗賊たちがつぶれた。



 ▼ ▼ ▼



 山の高見。


「まずいな、アレは」


 前線から離れトロイアを見ていたレトリバーが呟く。


「たくさん死にそう」


 チワが言う。


「アイツら大丈夫か」


 トロイアが足踏みを続けて前方へと進んでいた。


 盗賊団の断末魔がここまで聞こえてきた。

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