第314話 ハズレの推理
第一回盗賊連合集会が始まった。
「――とオレたちが持って来た情報はこれくらいだな」
ハズレが答えたのに対し、ロードもコクンと頷いて見せる。
「上等だ奴らの目的地が分かってりゃ追う必要はない! 待ち伏せでいける!」
リョウが拳を自分の手のひらにぶつける。
「しかしトオハなんて町聞いたことが無いぞ?」
首を傾げるのはリョウの隣に座っていたスワリオだった。
「どうせグラスの吐いたでたらめだ。聞くことはない」
レトリバーがチワの頭を撫でる。
「でもレトリバー希望のダンジョンには興味あるでしょ……」
「まぁなチワ」
「おいガキ共! 途中で別れたっつーオハバリってのは何だここに来んのか?」
ダイチが訊いてくる。
「いや、オハバリはまだ自分たちの街の問題を優先している。来たくても来られない」
ハズレが答えた。
「トオハって町はないのか?」
今度はロードが質問する。
「ないな。このフォックスグリードは広い新たにできてる村もあるらしいが、流石に千年も前からある町となると耳に入らないわけがないんだが……」
答えたのはリョウの座るソファーの後ろで立っていたマテヨだった。
「確かにな、やっぱ待ち伏せはムリか……」
リョウが力を抜く。
「グラスはやっぱり……」
スワンは疑う。
「オレは信じたい」
ロードはまだ信じていた。
「……………………」
ハズレは黙って机に広げられたフォックスグリードの地図を見る。字は読めなさそうだったがそれでも見ていた。
「おいさっさとしろよ」
成り上がりの盗賊団のボス、ヤーマが急かす。
「待ち伏せなのか、追って襲撃か……」
成り上がりの盗賊団のボス、コマが問う。
「そうだな……ねーもんはねーだったら――」
リョウが決断しようとしたその時だった。
「分かった」
地図を見ていたハズレが気が付いた。
「ハズレ?」
ロードがその名を呼ぶ。
「説明するよ来てくれ」
ハズレが盗賊団たちのいる机に向かう。ロードたちの机に広げてあったのと同じ地図があった。
「オイオイ!! こっちくんなよ!! 座ってろ!!」
ダイチが文句を言う。
「オイ、ダイチ」
リョウがうんざりするように言う。
「聞くだけ聞こう」
スワリオが言う。
「あー!! 話が進まねーだろ!!」
やはりダイチは文句を言う。
「何か気付いたのか坊主」
成り上がりの盗賊団のボス、チュウが訊いてくる。
「ああ、まずオレたちが魔王と接触した街ハラパ……そこでグラスは連れ去られた」
ハズレは鞘に収まった剣で地図上のハラパを差す。
「その際グラスは奴らの木馬なら一日以内で目的地の場所まで着くと言った。あの木馬のスピードで一日以内で着くとしたらこの範囲……」
地図の上に鞘で収まった剣で円を描くハズレ。
「それがわかったとて、その中にトオハはない……奴らの行き先はない」
シャベルマス団の一員ノラが言った。
「ノラの言う通りだ」
レトリバーも同意する。
「そうさ、無いんだこの中には……」
ハズレは意見を否定しなかった。
「バカにしてんのか!! クソガキ!!」
ダイチが吠える。
「ドン抑えてくれ、まだ話は終わってない」
ドロが言う。
「続けな坊主……」
チュウが促す。
「ロードやリョウさんたちは覚えてるだろ? アリバレーの石碑のこと……それであの石碑でしらべ隊の人が強欲王が世界の一部を持って異世界へ旅立った話も聞いただろう?」
「「――――!!」」
ロードとスワンが気付く。
「オイまさか……」
リョウが真剣な面持ちで言う。
「そのまさかさ」
ハズレは肯定した。
「トオハという町は強欲王によって奪われてこの世界からなくなったんだ」
ハズレは宣言した。
「?」
いまいち言っていることが分からないダイチ。
「だとすれば、大昔になくなって町の名を知らないのも無理はないか……」
スワリオが納得する。
「それらを踏まえてもう一度この地図を見てくれ、一カ所だけこの範囲に欲深き溝がある」
コンコンと剣先で欲深き溝と思われる黒塗りの地を差す。
「ここがトオハのあった場所だ」
ハズレはそう推理した。
「あった場所がなくなちゃったの?」
チワが訊く。
「何だ意味わかんねーぞ、結局町はないってことか?」
シャベルマス団の団員シバが訊く。
「街はなくなったがダンジョンは違う。奴ら魔王の狙いはダンジョンだ、町にダンジョンなんて建てないだろ? 簡単には見つからないダンジョンということなら、欲深き溝の遥かそこにある」
ハズレは言い切った。




