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第312話 最後の勝負

「オレが魔王に殺されればオレの勝ちだ」


 とグラスは最後の勝負を提案する。


「なぜそんな勝負を……?」


 ロードは驚きの勝負に意図がつかめないでいた。


「決まってんだろ!! オレの正しさを証明するためだ!!」

「オレは証明してやる!! オレの正しさをお前に勝って!!」

「お前に教えてやる!! この世界は取るか取られるかの奪い合いだってな!!」

「信じなきゃいけねーのは自分だけ……」

「隣の奴を蹴り倒してでも、生き残り、他人に殺される前に殺す!!」

「でなきゃここでは命も自由もねーんだよ!!」

「だが、テメーらみてーな奴らに飼われる奴隷でいるぐらいならオレは……」

「こんな命を捨ててやる!! おのれの意思で終わらせてやる!!」

「そしてテメーらに教えてやるんだ!! オレの全てを決めんのは、このオレだってな!!」


 叫び散らすのをやめるグラス。


「そういう勝負はしない。今すぐ鍵を外す力づくで……」


 一歩ロードが歩み寄ろうとした時――


「いいぜ、オレはそれでも、鍵を外した瞬間、オレはお前を殺すために全力を出す」

「その時魔王が何人の人間を燃料に持って行ってもオレは知らねー関係ねー」

「お前がそれでいいなら外しな」


「……………………」


 そこでロードは街並みを見る。今もワーーーーワーーーー叫び声が聞こえるハラパの街。


「勝負するしかねーぞ!! この街の全員を3日間は確実に助けたかったらなぁ!!」

「今度はテメーがオレに付き合ってもらうぜ!!」


 グラスが宣言する。


「…………わかった」


 ロードは真剣な面持ちでグラスの言葉を受け止めた。


「それでいい……この3日間、オレが殺されるか、テメーが鍵を外せるかの勝負だ」

「どっちが本当に正しいか、生き方を決める勝負だ」


 グラスはそう言った。


「違う」


 ロードは否定した。


「オレが3日でお前を救えるか、救えないかの勝負だ」



 ◆ ◆ ◆ ◆



 空飛ぶ魔物たちが天翔木馬トロイアという空飛ぶ馬型の船に続々と乗り込んで行く。


 そしてロードもニワトリ人間のような魔物を見失い、グラスの姿も視界から消えた。


(……………………)


 じっと建物の屋上から木馬を見ているロード。すると――


「ロード!!」


 下からハズレの声がした。


「グラスは!?」


 下からスワンが訊いてきた。


「奴らに連れて行かれた」


 ロードはタンと足で地を蹴って、屋上から飛び降りて来る。


「「「――――!!」」」


 オハバリを含めた3人が驚く。


「グラスのおかげで奴らはこの街に手を出すことを辞めた。少なくとも3日は安全らしい」


 ロードは簡潔に状況を伝える。


「グラスのおかげでこの街が?」


 スワンが不思議そうな顔をする。


「あそこにグラスが……」


 オハバリは空飛ぶ木馬を見る。


「追わないのか!?」


 ハズレが進言する。


「いや、グラスとの待ち合わせ場所を目指す」


 ロードが答える。


「どういうことだ!!」


「アイツはそこへ来る……………………」


 移動を始める天翔木馬トロイアを見ながらロードは答える。



 ▽ ▽ ▽



「トオハ、そこが希望のダンジョンのある場所だ、そこへ来い」


 グラスが言う。


「トオハか……わかった」


「簡単に見つけられると思うなよ。何故なら…………」


 一呼吸置くグラス。


「いや、これ以上のヒントは必要ねー」

「どのみち来ても魔王に勝てやしねー、あの壁を突破することは出来ねー」

「むしろ来るべきじゃねーぜ、テメーも死ぬ」


 グラスはもう勝負に勝った気でいるように酔っていた。


「脅かしても無駄だ、オレは行く」

「信じて待っていろグラス、オレはお前を救い出す」


 ロードが鍵を懐にしまい込む。


「ちっ、いいなリミットはオレが奴らの用済みになるまでの3日間だ」

「この間できるかぎり時間を稼いでお前にチャンスをやる。好きに使え」

「外せるもんなら外してみろ」

「もしそれが出来なら、お前がオレを自由にしたことも忘れるな」

「オレとお前、最後の勝負開始だ」



 ◆ ◆ ◆ ◆



「魔物が居なくなったぞ」「ゲロベルデさまを探さなくては……」


 役人たちが集まってくる。


「不味い役人に見つかる。スワンが……」


 ハズレが焦る。


「えっ何?」


 スワンがなにかあるのかと勘ぐる。


「一度、アンダートピアに戻ろうぜ!!」


 オハバリの提案に一同は乗ることにした。


「ロード今は行こう、話はあとでゆっくり聞かせてくれ!」


 ハズレがオハバリについて行く。


「わかった」


「皆行くぞ」


 オハバリが走って行く。


 ロードはもう一度天翔木馬トロイアを眺める。


 ハラパの街から出て行こうとしていた。


(グラス、お前が何を考えているのか分かって来たぞ)

(お前がどれほどの思いでこの勝負に賭けているのかも……)

(待っていろグラス、必ずお前を救い出し、本当の自由の身にしてやる)


 ロードは心の中で固く誓い、その場を後にするのだった。

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